むかしむかし、冬のさなかのことでした。

雪がヒラヒラと天からふっていて、1人の女王様が、黒檀の枠のはまった窓のところにすわって縫い物をしていました。

女王様は、ぬいものをしながら、雪を眺めていましたが、指をチクリと針で刺してしまいました。

雪のつもった中に、ポタポタポタと3滴の血が落ちました。

白い雪の中で、赤い血の色がたいそう綺麗に見えたので、女王様はこんなことを考えました。

雪のように白い肌で、血のように赤いほっぺたをもち、この黒檀の枠のように黒い髪をした子がほしいわ。

それから少したって王様はお姫様をうみました。

そのお姫様は、望んだとおりの美しさで、白雪姫と名づけられました。

けれども、女王様は、それからまもなく死んでしまったのです。

やがて、王さまは次のお妃さまをむかえました。

そのお妃さまは美しかったのですが、たいへんうぬぼれが強く、わがままで、自分よりもほかの人が少しでも美しいと、じっとはしていられないのでした。

このお妃さまは、ふしぎな鏡を持っていました。

話しかけると、答える鏡です。

鏡や鏡、この国でいちばん美しいのはだれ？

鏡はいつもこう答えていました。

お妃さま、あなたがいちばん美しい

それを聞いて、お妃さまはいつも安心します。

というのも、この鏡が嘘を言わないということをよく知っていたからです。

白雪姫は、大きくなるにつれて、だんだん美しくなっていきました。

鏡や鏡、この国でいちばん美しいのはだれ？

ある日、鏡はこう答えたのです。

お妃さま、ここでは、あなたがいちばん美しい。けれども、自雪姫は、千倍も美しい

お妃さまはおどろき、ねたましくなって、顔色を黄色くしたり、青くしたりすると、狩人をよんで、こういいつけました。

あの子を森の中に連れていって、殺しておいで。その証拠に、あの子の血をハンカチにつけてきなさい

狩人は、白雪姫を森の中へ連れていき、何も知らない白雪姫の胸を刀でつきさそうとしました。すると、姫はこう言いました。

狩人さん、わたしを助けてください。そのかわっりわたしは森の奥に入っていって、けっして城には帰らないから。

狩人は姫が可哀想になりました。

早くにげなさい。かわいそうな姫さま。

ちょうどそのとき、イノシシがとびだしてきたので、狩人はそれを殺して、その血をハンカチにつけて、証拠としてお妃さまのところに持っていきました。お妃さまは、白雪姫は死んだものと思い、すっかり安心しました。

さて、白雪姫は森の中でひとりぼっちになりました。夕方になるころ、森の奥に小さな家を見つけて、つかれを休めようと中にはいりました。その家の中にあるものは、小さなものが多かったのですが、なんともいいようがないくらいりっぱで、清らかでした。部屋のまん中には、白い布きれをかけたテーブルがあり、その上には、お皿とさじとナイフとフォーク。小さなコップもおいてあります。大きさは7つの小さなものと1つ普通の大きさのものがありました。壁ぎわには、七つの小さなベッドと、1つ、普通の大きさのベッドが、きちんと並んでいて、雪のように白いシーツがしいてありました。白雪姫は、一つ一つのお皿から、少しずつ、野菜とスープとパンを食べ、一つーつのコップから、一滴ずつぶとう酒を飲みました。食事がすむと、とてもつかれていた白雪姫は、1つの普通の大きさのベッドの上で眠ってしまいました。

日がくれて、この小さな家にくらす七人の小人と1人の少女が帰ってきました。小人たちは、毎日、山の中に入って、金や銀のまじった石をさがしてよりわけたり、ほり出したりするのが、仕事です。少女はいつも木の実などの食べ物を集めるのが仕事です。家に帰るなりそうそう、第1の小人が言いました。

だれか、わしの椅子に腰掛けたものがいるぞ。

2人目の小人が言いました。

わしのお皿のものを食べたものがいるぞ。

3人目の小人が言いました。

わしのパンをちぎったものがいるぞ。

4人目の小人が言いました。

わしの野菜を食べたものがいるぞ。

5人目の小人が言いました。

わしのスープを飲んだものがいるぞ。

6人目の小人が言いました。

わしのフォークとナイフとスプーンを使ったものがいるぞ。

7人目の小人が言いました。

わしのコップで飲んだものがいるぞ。

小人達が話していると、少女が自分のベッドを見て白雪姫が寝ているのを見つけました。少女が小さな声でみんなを呼ぶとみんなびっくりしてランプを持ってきて白雪姫を照らしました。

それから小人たちは、白雪姫を起こさずにそのままそっと眠らしておきました。

白雪姫は、小人の家においてもらえることになりました。小人たちが山に入って仕事をしていて、虹狐月が木の実を取りに行っている間、自雪姫はたった一人で留守をしなければなりません。親切な小人たちは、こんなことをいいました。

おまえさんの継母のお妃さまには用心なさいよ。おまえさんが生きてここにいることを、すぐ知るにちがいない。だから、だれも、この家の中に入れてはいけないよ。

そのころ、お妃さまは、狩人が白雪姫を殺したと信じ、安心しきっていました。

鏡や鏡、この国でいちばん美しいのはだれ？

千愛ちゃん！

ちょっと男子、静かにしろ！

ん゛っ、ん…

すると、鏡が言いました。

お妃さま、ここでは、あなたがいちぱん美しい。けれども、いくつも山を越えた、七人の小人の家にいる白雪姫は、まだ千倍も美しい。

お妃さまはあまりの腹だちに、からだじゅうをブルブルとふるわして、くやしがりました。

白雪姫のやつ、たとえ、わたしの命がなくなっても、わたしのこの手で殺してやる！殺したくないけど…

それからすぐ、お妃さまはひみつの部屋にこもって、毒をぬったリンゴをつくりました。リンゴができあがると、お妃さまは、農家のおかみさんのふりをして、七つの山を越えで。音会の先人の家へ行きましくと、白雪姫が窓から顔を出していました。

リンゴをおひとつ、いかがかね

小人たちがいけないというので、だれも中に入れるわけにはいきません。

おいしくできたリンゴの味見だよ

わたしは人からものをもらってはいけないの

白雪姫はそう言って断りました。

ははあ、お前さんさては毒でもはいってると思いなさるんだね。このとおり、二つきって半分はわたしが食べましょう。よくうれた赤いほうを、ほらおまえさんが食べなさい。

リンゴはうまくつくられていたので赤いほうだけに、毒が入っていたのです。

そんなに言うんなら一口だけ。

リンゴにかじりついた白雪姫はバッタリとたおれ、そのまま息がたえてしまいました。そのようすをお妃様は恐ろしい目つきでながめ、うれしそうにさけびました。

肌が雪のように白く、ほおが血のように赤く、髪も黒檀のように黒いせ…じゃなくて白雪姫。おまえも、こんどこそおしまいだよ！この国のいちばんはいこんどこそ、このわたしだよ！

せなァ”ァ”ァ”ァ”ァ”

ゆうか、静かに！

お妃さまは城に帰ると、すぐに鏡のところにかけつけて、たずねました。

鏡や鏡。この国でいちばんのは美しいだれ？

すると、とうとう鏡が答えました。

お妃さま、この国でいちばんあなたが美しい。

これで、お妃さまのねたみ深い心も、やっとしずめることができました。

夕方になり、小人たちが家に帰ってきましたが、さあたいへん。白雪姫が地面にたおれているではありませんか。かわいがってきた白雪姫は、もうすっかり冷たくなっているのでした。
小人たちは三日三晩泣きくらしました。
それから白雪姫を土にうめようと思いましたが、白雪姫はまだ生きてきたときそのままで、顔色も赤く、かわいらしく、きれいです。

あの真っ黒い土の中に、姫をうめることなんかできないよ

そこでガラスのひつぎをつくり、その中に白雪姫のからだをねかせました。
金の文字で「白雪姫」と名前を書き、王さまのお姫さまであるということも書きそえました。

それからみんなで、ひつぎを山の上に運び上げ、いつも七人のうちの一人がそばにいて、番をすることにしたのです。すると、フクロウやカラスやハトたちや、たくさんの森のけものたちがやってきて、白雪姫のことを泣き悲しむのでした。

ひつぎの中の白雪姫は、長い時間がたっても、その美しさは少しも変わらず、まるでねむっているようにしか見えませんでした。

ある日のこと、となりの国の王子が、森にまよいこみました。
王子は山の上で、ガラスのひつぎに目をとめ、われをわすれて見とれてしまいました。

このひつぎを、わたしにゆずってもらえないだろうか。そのかわりわたしは、なんでも、おまえたちのほしいと思うものをあげよう

キャー!!!
優くーん！！！！

キャー!!!優くーん!!!

友果！

行けー!!!優ー!!!

うるせぇ

け、けれども小人たちは首を横にふりました。

世界じゅうのお金と宝を、ぜんぶいただいても、こればかりはさしあげられません。

しかしわたしは、もうこの姫なしでは生きてはいられない。わたしの生きているあいだは、白雪姫をうやまい、きっとそまつにはしないと約束するから、お願いだ

やさしい小人たちは、王子の心もちに打たれ、そのひつぎをさしあげることにしました。

王子は家来たちに命じて、ひつぎを肩にかついで運ばせました。ところが、まもなく、家来の一人が、一本の木につまずきました。

ひつぎがゆれたひょうしに、白雪姫がかみ切った毒リンゴの一切れが、のどからとびだしました。すると白雪姫は目をパッチリと見ひらいて、おきあがりました。

あらまあ、わたしは、どこにいるんでしょう

それを聞いた王子の喜びは、たとえようもありませんでした。

どこですって？ここですよ。わたしのそばにいるんですよ。これからも、ずっと

キャー!!!

優ー!!!

優くーん！！！

外野五月蝿

こうして千愛は…じゃなくて、白雪姫は、優と…じゃなくて、となりの国の王子と結婚して、ずっと仲よく幸せにくらしました！！！

あのねたみ深いお妃さまはどうしたかって？

となりの国の新しいお妃になった白雪姫がいちばん美しい

と鏡がいったとき、きっと大さわぎをしたことだけは、まちがいないでしょうね。

皆さん、ありがとうございました！

それではさ…

え？

千愛…怪我はないか？

う、うん…大丈夫。

ｷｬ──────ｧ

ｷｬ──────ｧ

！

！

お姉ちゃん…？それは、どういうことかしら…

え…？