第3話

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2019/09/26 14:26
なあなあ、今日なんの日か知ってる?
またか、と思いつつ、回答を待っている遊のために一応考えてみる。

この前が初会話記念日だったから、一年前の今日はまだそんなに進展してないはずだよね。
あなた

初・席隣記念日?

あー違う!それは来月の17日!
あなた

そ、そっか

まじで全部憶えてるんだな。そこまで憶えてられるって普通にすごい。

もう少し考えてみようとしたが、遊が痺れを切らす方が早かった。
正解は、初・あなたに消しゴム拾ってもらった記念日でしたー!!
元気いっぱいに発表した遊。

そして、その出来事を憶えていない私。
いやーあなたのあれは本当忘れられない!
俺が消しカスを机から払い落とす時にうっかり消しゴムにも当たって、消しゴム小さかったからかめちゃくちゃ変に転がってって。あなたの足元で止まって、気付いたあなたがそれを拾ったけど誰のか分からなくてキョロキョロしてて、俺だよってめっちゃアピールしたのに全然目え合わなかったからわざとかと思った!
その後ようやくこっち見て、あって思った瞬間お前がまじで可愛い笑顔になって、俺の消しゴム持ったまま両手で丸作ったんだよ!!
可愛すぎてびっくりしたわ!!
あなた

そうなんだねー

お前のことなのに反応うっすいなあ
少しどきりとするが、憶えていないのだからしょうがない。

ただの相槌だけになったのは、思ったより遊の記憶が詳細でびっくりしたのもある。

ふと、遊が何かに気付いたように視線を落とした。
お、あれ?これあなたの?
しゃがんで再び立った後に持っていたのは私が使っているのと同じ種類の消しゴムだった。

机の隅に置いている筆箱の中を一度確認する。
あなた

うん、私の。ありがと

受け取りながら言うと、遊が嬉しそうに笑った。
あなた

どうしたの?

ふふんっ、たった今、俺が初めてお前の消しゴム拾った記念日にもなったなって!
あなた

……おお。本当だ

な!しかも今の俺たちカレカノだし、ますます記念すべき日になった
すこぶる上機嫌な遊に、私はよかったね、とだけ言う。

呆れて頬を緩めながら。

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