第107話

流れ弾
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2024/05/27 12:00 更新
ユウヒ「あなた!どーやって帰るの?車?」


エミリ「車まで荷物持つよ!」












放課後、部活前の2人が駆け寄ってきてくれた。






今日1日、松葉杖の私をずっと気遣ってくれて、本当に頭が上がらない。










あなた「あ、ううん!えっとね、実は……。」












首を横に振り、チラりと後ろの席を向く。






彼はこちらに気が付くと頷いて席を立ち、私のカバンを持ち上げた。































直井「てことで、暫く練習見学することになってるから。知っててくれ。」


あなた「お、お邪魔します……。」


「「「お願いしゃす!!」」」

















GW振りの、男子バレー部。







車で来ている学兄に送り迎えをしてもらっているんだけど、流石に部活に遅れさせてしまうのは申し訳ないので終わるまで待つことに。






図書室か教室で勉強していると言ったけど、この間正式にマネージャーにならないかと打診されたこともあり、その期間だけでも見学していけと強く押された。






正直、今男子バレー部の見学をするのは精神的にしんどい部分もあるんだけど……。











パイプ椅子に腰掛け、チラりと視線をそちらに向ける。
















黒尾「________、」
















目が合って、思わず逸らしてしまった。














体育祭の日。











黒尾先輩への気持ちを自覚し、同時に失恋をした、あの日から。











話すことも、会う機会もないままだったから、変に緊張してしまう。








今日1度、西園寺先輩を見かけた。









沢山の人に囲まれていて、笑顔で、いつも通り。











きっと、上手く気持ちを伝え合って別れないことになったんだろう。






自分で背中を押しておきながら、その事実を苦しいと感じてしまう。














受け入れないといけない。










前に進まないと。












黒尾先輩を見ないように、視線に気を付けながら練習を見学した。








前に見た時と思ったけど、本当にレシーブのレベルが高いことは素人の私にも分かる。










腕が折れそうなくらいな音がするのに、綺麗にボールは上がっていて。









「ナイスレシーブ!!」















夜久先輩、リベロ……守備専門だっけ。






これだけ全体のレシーブのレベルが高いチームの中で、レシーブ専門のポジションに付いてるって相当すごい気がする。








確か、烏野では西谷がリベロだった気がする。









猫又監督も褒めてた。













リエーフ「うぁッ、クソ!!」


夜久「リエーフ!ちゃんとボール見ろ馬鹿!」















 
周囲のレベルが高いから余計、"そうじゃない人"が際立つ。





あの人、体育祭の借り物競走で目立ってた人だ。














「もう1本!!」と大きな声で催促し、学兄の放ったボールに構える。















あなた「!」


リエーフ「!危なッ……!!」

















ボールはその長い腕を弾き、回転を纏ってこちらに飛んできた。





私の座っているすぐ横の壁に跳ね返り、ボールは向こうの方へと転がっていく。














夜久「馬鹿野郎リエーフ!!よりにもよって花野井さんの方飛ばしやがって!」


山本「おみ足にでも当たったらどーすんだこんにゃろ!」


リエーフ「うわああすみません!!花野井先輩ッ!」














おみ足……。




全然当たってないし、防げないボールじゃない。











頭を下げて手を横に振り、大丈夫だと伝えた。
















夜久「ほんと大丈夫か?ごめんな、」


あなた「いえ……!全然、」


リエーフ「すんません……気を付けるッス!」















デカい。







駆け寄ってきてくれた夜久先輩に引っ付いて、灰羽くんが頭を下げた。










長い手足に、銀色の髪と、エメラルドグリーンの瞳。











なんか……モデルさんみたいな人だな。













本当に大丈夫ですと首を振り、練習に戻るよう言った。





転がっていったボールを取りに行こうと視線を動かした灰羽くんは、そちらの方向に誰かを見つけたらしく足を止める。















黒尾「ったく……次吹っ飛ばしたら居残りレシーブ練な。」


リエーフ「ええぇ!そんなぁ!俺スパイク練習したいです!!ね!研磨さん!」 


孤爪「無理、帰る。」















ボールを拾い上げた黒尾先輩がそのままこちらに足を進めるので、思わず視線を落とした。








話しかけられる……気がする。












黒尾「ごめんな、間に合わなかったわ。」


夜久「いや、黒尾の位置からボール防ぐのは無理だろ。」


黒尾「いやいや、例えどこにいようとマネージャーを守ってあげるのが主将の努めじゃない?」


リエーフ「え!!花野井先輩マネージャーなるんですか!?」


あなた「っえ、」


黒尾「なんねぇの?」


あなた「……………無理、です。」


黒尾「え、「無理」。」


孤爪「……。」













目を合わせないまま、なんとか絞り出した言葉は拒絶の2文字。






私の言葉に表情を凍り付かせた黒尾先輩は、夜久先輩に笑われながら次のレシーブ練習の列に並んだ。















マネージャー……。







私が男子バレー部のマネージャーなんかしたら、また西園寺先輩に嫌な思いをさせてしまうかもしれない。







それに、何より。









黒尾先輩への気持ちがある以上、私の入部がどこか、下心の込み入ったものになってしまうのではないか、と。






そう思うと、「なります」なんて言えない。
























夜久𝓈𝒾𝒹𝑒.°











黒尾「俺、嫌われてんのかね。」


夜久「は?誰に。」


黒尾「花野井さん。ようやく普通に話せるようになってきたって思ったんだけど。」














そういや、コイツと花野井さん結局どうなったんだ?




体育祭の日、怪我した花野井さんを運んだのは黒尾だろ。







俺や研磨の知らないところで2人は思っている以上に親しくなって、関係が進んでいってるんだと思っていた。












夜久「なんなのお前ら、意味分かんね。」


黒尾「なんでちょっと嬉しそうなのやっくん。人の不幸は蜜の味かい?」


夜久「お前みたいなクズと一緒にすんな。そんなだから振られるんだろ。」


黒尾「振られてねぇっての。」







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