第6話

  5 ⌇ episode
88
2026/03/01 10:00 更新



   会場のざわめきは 、
   完全には戻らなかった 。


   取り押さえられた男はすでに連れ出され 、
   音楽は再開されたけれど 、さっきまでの
   華やかさはどこかぎこちない 。


   私はまだ少し震えていた 。

   彼が隣に立ってくれているだけで 、
   かろうじて息が整う 。


 @ ××× .
 あなたの下の名前( カタカナ推奨 ) 



   父の声 。


   振り向くと 、
   さっきよりもずっと冷静な顔をしていた 。

   怒りではない 。計算している顔 。


 @ ××× .
 部屋へ戻れと言ったはずだ 

あなた
 … はい 



   けれど 、足が動かない 。


   彼が一歩前に出る 。

   さっきの “ 守る ” 動きとは違う 。
   今度は 、対等に向き合う立ち方 。


 スチ ・ ヴェリス
 彼女は動揺しています 。 
 少し落ち着いてから お連れします 



   丁寧な言葉遣い 。
   でも引かない

   父の目が細くなる 。


 @ ××× .
 ヴェリス家が 我が家の内側に 
 踏み込むつもりか



   空気がまた冷える 。

   私は思わず彼の袖を掴んだ 。


   ちらりと私を見て 、
   ほんの少しだけ微笑む 。

   ──── 大丈夫 、と言うみたいに 。


 スチ ・ ヴェリス
 踏み込むつもりはありません 



   落ち着いた声 。


 スチ ・ ヴェリス
 ですが今夜の件 、
 狙いは貴方でしょう 



   一瞬 、父の瞳が鋭く光った 。


 @ ××× .
 … 何が言いたい 

 スチ ・ ヴェリス
 内部情報が漏れている 
 可能性があります



   ざわり 、と背筋が冷える 。


   父は数秒黙り込む 。

   周囲の客たちは距離を取り 、
   誰も近づかない 。


 @ ××× .
 証拠は 

 スチ ・ ヴェリス
 ありません 。ですが ──── 



   スチの視線が 、
   先程 暗殺者がいた方向へ向く 。


 スチ ・ ヴェリス
 彼の動きは素人ではない 。 
 単独犯とも思えない



   低い 、静かな分析 。


   さっきまで優しい王子様だったのに 、
   今は完全に “ 裏の世界の後継者 ” 。


   その横顔に 、また胸がどきりとする 。

   父はしばらくスチを見つめ 言った 。


 @ ××× .
 … 随分と観察しているな 

 スチ ・ ヴェリス
 守るべきものが 、 
 目の前にありましたから 



   その一言で 、空気が止まる 。

   守るべきもの 。

   それって ────

   頬が熱くなる 。


   父の視線が 、ゆっくり私に移る 。
   そして 、また彼へ 。


 @ ××× .
 娘を利用したら容赦はせん 

 スチ ・ ヴェリス
 利用はしません 



   即答 。迷いがない 。


 スチ ・ ヴェリス
 彼女は 巻き込まれる側ではない 



   強い声ではないのに 、重みがある 。

   父は長く息を吐いた 。


 @ ××× .
 … 今回の件は 裏で探る 。 
 ヴェリス家も動け



   それは 、事実上の協力請 。

   完全な和解ではない 。

   でも敵対でもない 。


 スチ ・ ヴェリス
 承知しました 



   スチはわずかに頭を下げる 。

   大人同士のやりとり 。


   私はただ 、
   その間に立っているだけなのに ────


   なぜか 、置いていかれた気がしなかった 。

   父は最後に私を見る 。


 @ ××× .
 部屋に戻れ 。護衛をつける 



   今度は逆らわなかった 。

   歩き出そうとしたとき 、
   スチの指先がそっと私の手に触れる 。

   一瞬だけ 。


 スチ ・ ヴェリス
 怖がらなくていい 

 スチ ・ ヴェリス
 今度は 安全なところで踊ろう 



   胸が 、きゅっとなる 。


   騒動のあとだというのに 、
   その言葉はまるで約束みたいで 。

   私は小さくうなずいた 。


   振り返ると 、
   彼はもう “ 後継者の顔 ” に戻っていた 。

   部下らしき人物と低く何かを話している 。

 
   優しい王子様と 、冷静な裏の顔 。
   その両方を知ってしまった 。


   今夜の舞踏会は 、ただの出会いじゃない 。

   家同士の関係も 、裏で動く何かも 、
   きっとこれから絡み合っていく 。


   でも 。

   胸の奥で 、確かなものがひとつある 。


   ──── 私は 、あの人を信じたい 。






プリ小説オーディオドラマ