「ねぇ〜、広告見当たらないよ〜?本当にここら辺なの?」
「ん〜、、、地図だとそうっぽいんだけど…」
溶けるほど暑い中、今日は、友達の付き添いで渋谷に来ている。推しの誕生日広告が出てるとかなんかだ。外だから余計暑い。
「てか、、、さっきからうるっっさいんだけど…なにあれ、、」
友達が指をさした方向には、人だかりができていて、なにやら歌を歌っていた。何かのイベントだろうか
確かにちょい音量デカめだけど。
近くにイベントの名前が書いてあったので調べてみると、どうやら音楽イベントらしい。いろんな人が参加して歌う的な。
今は外国の人がよくわかんない洋楽なのか、オリジナル曲なのかを歌っていた。失礼だけど、結構うるさい。
うーん、、、と友達が悩んでいる中、私はそのうるさい曲を聴きながら広告の期間やら、場所やらを再確認していた。
すると、さっきのバンドが終わり、新しいバンドが出て来た。少し気になり、目線をステージに移すと、派手髪の男の人が、ギターを持って現れた。
ギターをジャーン!と鳴らすと、口を開いた。
「こんにちはーー!!不破湊でーす!!!今日は、楽しんでってなー!」
また始まったよ…全く…
友達はうんざりしているようだったが、私は、少しだけ興味があったので、そのまま目線を外すことなくその不破湊とか言う男の方を見ていた。
曲が始まり、歌い始める。その瞬間空気が変わったような気がした。
私はいつの間にかスマホを取り出し、動画を撮っていた。
汗も滴る良い男、って感じでキラキラ光っていた。
透き通るようで、でも力強い声で歌っている彼に思わず見入ってしまった。
いつの間にか最後の曲になってしまった。
「これが今日のラスト曲でーーす!みんなまた会おうなー!待ってんでー!」
最後の曲を歌い始め、少し残念な気持ちと、友達の付き添いで少し良いものを見せてもらったと言う嬉しさもあった。
「あ!あなた!ごめん!もうちょい先だったわ!あそこのビル!」
先ほどまで彼の歌を聴いていて、意識がそこにしか行っていなかったのでいきなり耳に入って来た友達の声にびっくりしてしまった。
正直最後の曲をしっかりと聴いておきたいところだが、返答するしかない。
「うぇっ!?あ、そうなんだ。行こっか」
「まじごめーん、、!!後でなんか奢る!」
「いいよそんなの」
笑いながらそう答えた。彼の方をもう一度見ると、まだ曲は終わっていないようで歌い続けていた。
「あ、ねえ」
「んー?どしたー?」
「ちょっとだけ、聴いてて良い?あの人の」
「はぁ?あなた好きなのー?」
「いや、なんか、まあ。ちょっといいなって」
「まあいいけど」
まだスマホの録画は止まっていないので、もう一度彼の方にスマホを向ける。
少しズームする。よく見ると整った顔してんなぁ、、なんて思いながら見ていた。
「みんな今日はまーじでありがと!!!めっちゃ楽しかった!聴いてくれたみんなありがとーなー!!それじゃ!」
最後の曲が終わり、黄色い声援と拍手が送られていた。
友達に終わったことを伝え、広告のある場所まで移動した。
もう会えないんだろうなー、なんて思いながら歩いていた。
なんとか広告を見つけ写真を撮り、そのあとはカフェで少し休んでから別れた。
家に帰り、不破湊 バンド と検索してみるが引っかからない。
名前だけでもダメだった。ツブッターとかやってないのかな…まじでもう一生会えないじゃん…
心のどこかでまた会えるかな、なんて思っていたが無理そうだ。
少し憂鬱な気持ちのまま次の日を迎え、大学に向かう。
「あ、あなたおはー。あれ、なんか御機嫌斜め?」
大学に入ってから仲良くなった男友達が話しかけて来た。よく飲みに行く。
「おはー、いやぁちょっとね。大したことじゃないんだけど」
「そかー、まあよくわかんないけど、、、あ!そうだ、今度の土曜さ、知り合いが入ってるバンドがライブハウスでなんかやるらしいから一緒に行かん?気分転換にさ!」
「えー、まあ行ってみようかな」
「よしきたぁ!じゃあまた時間とか連絡するわ!」
「はーい」
彼のことがなんだか忘れられなくって、バンドと言われてあの日のことを思い出してしまった。
そのバンドに彼が入ってたらとかまたバカな考えをしながら、土曜日を迎えた。
待ち合わせの場所に向かい、日傘をさしながら友達のことを待った。今日もまた一段と暑い。
「ごめーん、暑い中待たせちゃって。行こっか。ライブハウス冷房めっちゃ効いてるらしい!」
「どこ情報よ」
斜め上の発言に少し笑ってしまった。
ライブハウスまではそんなに遠くなかったので、すぐについた。
言っていた通り確かに冷房が効いていた。めっちゃ。
こじんまりとしたライブハウスだが、中に入るとまあまあ広い。
ライブが始まるのは19時から。今は18時40分。あと少しだ。
その間、スマホをいじったり、売店で買ってドリンクを飲んだりした。
だんだんと人が多くなって来たので、一番前のステージがよく見えるところに移動した。
「お!もうすぐ始まるっぽい!友達からラインきた!」
「お〜!まじか楽しみだなぁ〜」
「本当に思ってんのか〜ちょいちょい〜、まあ、聴いたらわかる!!すごいから!」
「わかったわかった」
さっきまでざわざわしていたのになんだか急に静かになった気がする。
ステージの横にある控え室かなんかの扉が開き、メンバーが入ってきた。
するといきなり周りの盛り上がり、熱気で暑くなった
ボーカルの人がギターを持って最後に登場した。
一瞬見間違いかとも思った。疲れてるのかなとも思った。
でも、今見てるのは現実で、目の前に立っている人も本物だ。
不破湊だった。
「こんばんはーー!!みんな今日は来てくれてありがとうなー!楽しんでって!それじゃ最初はこの曲で!」
一気に心臓が早くなって、テンションが上がった。これがどう言う感情なのかよくわからなかったが、最高に楽しかった。
また、会えた。
楽しい時間ほど早く終わってしまう感じがする。
いつの間にか気がつくと最後の曲になっていた。あぁもう終わりか。
最後の曲を聴きながらそう思った。
「今日はありがとーーー!めっちゃ楽しかったわー!ほな!」
ライブが終わった後も私の心臓は早かった。体も熱かった。
「あなたー」
「はいー」
友達に声をかけられ現実に戻る
「この後飲み会あるらしんだけど行く?」
「は?」
「あ、ごめんそういうとこ苦手?」
「あ、いやいや!ごめん全然大丈夫!!!」
「まじかwwならよかったじゃあ連絡しとくねー」
まさか彼もいるんじゃないか…と内心期待していた。
今日のライブはこれで終了だったので、ぞろぞろと人が外へ出て行く。
私と友達は、ライブハウスの中で待つことになったらしい。
ずっと緊張している。どうしよう。
ガチャっと、また控え室のドアが開いた。
あ、やばい。
「まさーごめん、遅れた〜」
「んーん全然大丈夫」
友達の名前を呼びながらこちらに向かってくるのは、不破湊だった
心臓ドキドキで死にそう
「あーれ、えっとそちらの方は…?あ!待ってや、今日一番前おったやろ」
「え、あえ!見えてましたか…あ、えっと白波あなたです…」
「あなたちゃんね〜よろしくなぁ〜」
「あ、あの…!この前の渋谷の音楽イベント出てましたよね…!」
「え!見ててくれたん!うれし〜そやでー」
「めちゃくちゃよかったです…!また聴きたいな〜って思ってて…今日また会えて感激です…」
「にゃははーまじかよかった」
「え、ちょっとあなた〜それなら早く言ってよ〜」
「だ、だって今日のバンドだと思ってなかったし…!!!」
「次からはじゃんじゃん誘うから!あ、てか、湊他のメンバーは?」
「あー、なんかみんな予定あるらしい」
「まじかよめずらし。ま、そろそろ飲み屋向かいますか〜」
正直死にそうだが、なんとか目的の飲み屋まで向かった。
中に入るとまあまあ混んでいたが、ちょうど奥の方の席が空いていたのでそこに座ることにした。
まさか、私の隣が彼になるとは思っておらず、今すぐにでも帰りたいと思った。
「と、とりあえず注文…しましょうか…」
「あなたちゃんなんか緊張してへんか〜?」
「え、あ、そ、そうですか!?」
「あなた湊隣にいて緊張してるんでしょ〜」
「えー、そうなん??」
ニマっと緩んだ笑顔でこちらを見る彼と目が合ってしまい、思わず背ける。
絶対いま顔赤くなった。絶対そうだ。あーー
「そ、そんなことないです…」
「にゃはーかわええ〜」
「や、やめてください。。!!」
「あなたが照れてるとことか初めて見たわ〜めずらしっ」
「まさとまで。。。!!!」
「ごめんごめんww」
「とりあえず、お酒とか頼もかー」
すいませーんと近くにいた店員を呼び止め、注文をする友達。
からかわれるし、体は熱いし、距離は近いし、もうなんなんだ
ビールが届くまで他愛もない話をしていたが、ほとんど頭に入ってこなかった
ついでに頼んだ枝豆をちまちま食べながら、私は友達と彼が楽しそうに話している姿を見つめていた。
これくらいでいいのだ。これくらいの距離感が。蚊帳の外で。
「そういや、あなたちゃんって、今何歳なん?」
「湊なんかナンパしてるみたいじゃんww」
「あ、ごめんごめんw普通に疑問で聞いただけやから安心して」
「今23です…!」
「まじで!あ、じゃあ俺と同じや〜タメ〜」
「え、そうなんですか!偶然ですね!」
「ほらほら〜同い年なんやしタメでいこや〜まさとはタメなのに俺には敬語とかなんかいややー」
「じゃ、じゃあよろしく…」
「ん!」
夢のような時間もそろそろお開きとなり、泥酔して潰れかけているまさと、お酒に強いのかそれともほとんど飲んでないからなのか、最初と同じような彼。
どうしよう。
「まさ〜起きてや〜そろそろ帰るよー」
「ん”ん〜。。。。」
「ダメだねこれ…不破さ、湊くんちょっとまさとの介護頼んでもいい…?私タクシー呼ぶからそれまで…」
「全然大丈夫よ〜ありがとうな〜」
携帯を取り出し、タクシーを呼び、なんとかまさとをタクシーに乗せることができた。このまま帰れるか心配だが。
ばいばーいと手を振り、タクシーが遠のいて行く。
二人っきりになってしまった。
「まさとちゃんと帰れるかな笑」
「どうやろな〜笑」
「あなたちゃんこの後は?電車?」
「うん〜」
「あ、じゃあ途中まで送ってくよ」
いきなりの発言に驚く。なんだ?今日は命日か?ほぼ推しとなった彼に途中まで一緒に帰れると?
硬直してしまう。
動け。とりあえず。
「え、あ、い、いいよ!!流石に申し訳ないし…それに湊くん今日ライブだったし疲れてるでしょ?早めに帰った方が…」
「こんな時間帯に女の子一人帰らせるわけにはいけないやろ〜それに君ちゃんかわええからな〜」
「そ、そうやってすぐかわいいって言うのやめて…勘違いしちゃう人いるよ〜…?」
「だって、本当のことやん〜」
天然なのか、女の子慣れしてるのか、なんなのかわからないが、かわいいと言われると本当にそういう気があるんじゃないかって期待してしまう。
彼の押しに負け、駅まで送ってもらうことになった。
時間も時間なので、人通りも少なく静かだ。
私と彼の歩く足音だけが聞こえた。
「そういや、俺あなたちゃんと連絡先交換してへんやん〜交換せん?」
「え、いいの!全然交換する〜」
向こうから交換しようなんて言ってくれるなんて嬉しいななんて思いながら、スマホを取り出した。
QRコードを表示させ、彼の方に向ける。
一歩こちらに近寄った彼。距離が一気に近くなる。今の今までなんとか大丈夫だった心臓が早くなった。
交換が完了し、不破湊という名前が表示される。
「ありがと〜」
「いいえ〜」
「なんかあなたちゃん顔赤い?」
「え!そうかな〜、、?お酒飲んだからじゃないかな?」
「あー、お酒か」
騙したのは申し訳ないが、これに関してはバレたらやばい。
なんとか駅までつき、改札で別れる。
彼の家は歩いて着く距離らしい。
「それじゃ。送ってくれてありがとう!気をつけてね」
「ん〜、あなたちゃんもな〜」
彼と別れ電車に乗り、家に帰った。
メイク落としたり、風呂入ったり、一通り済ませ、ベットにダイブする。
彼と交換した連絡先を見つめる。
不破湊……かっこよかったなぁ…
何考えてるんだ。やめろやめろ。。。
そんなことを考えてたら、ピコンと通知がなった。
見ると、彼からだった。飛び起きて、メッセージを見ると、
【今日はありがと〜!ライブまた来てな〜】
たった一行そう書かれていたが、それだけでもなんだか嬉しかった。
すぐに返信をし、その日は寝た。
それからまた何度か友達に誘われたり、あるいは彼から誘われたりしてライブにたくさん行った。
どんどん沼に入っていく。
なんだか沼ってはいけないような人間のような気もするが、もう遅い。
「あ、あなたちゃん〜」
「湊くん!今日もよかったよ〜新曲とかも!」
「まじで〜それは感謝っすねぇ〜、あ、この後時間あったらでいいんやけど、一緒に帰らん?言うて駅までやけど笑」
「え、い、いいけど…!」
「ならよかった〜、じゃあそこらへんで待っとってな」
「はーい」
いつもは、飲み行ったりするのに今日は一緒に帰ろうといういつもと違った誘いだった。
ちょっと嬉しかったりもした。ちょっとね。
スマホを見ながら、彼が来るのを待っていたら、ふと目の前に人の気配を感じ、フッと前を見ると、男の人が立っていた。二人組のようだ。
「あ、ごめんなさい邪魔でしたか…!」
「いやいや、全然。てか、めっちゃかわいいね。あ、ごめんねなんかいきなり。」
「え、あ、ありがとうございます…」
これが噂のナンパというやつか。とか思いながら、いやでも本当に褒めてるだけなら申し訳ないとか思いながら、会話を始めた。
「それで、その…なにかご用ですか?」
「あー、もしよかったらなんだけど、この後飲み行かない?俺ら奢るし。」
「あ、いや。。ごめんなさいこの後予定あって…」
「えー、いいじゃん。ちょっとだけ!!お願い!」
そう言っていきなり私の手を掴む男。いきなりで少し怖かった。
この後は。。。。彼と帰る約束をしている。絶対に飲みになんか行かない!!!!そう心に誓ったあなたであった。
「い、いや…!人と待ち合わせしてるんで…ここで…」
「じゃあじゃあその人も一緒に!」
「ごめんねぇ〜この子俺のなんで。」
いきなり後ろから重みを感じた。
彼だった。不破湊だった。
彼の細長くて白い腕が、私を包んでいた。
心臓が早くなる、冷房が効いているはずなのに、体が熱い。
「なんだ、彼氏持ちかよ〜それならそうと早く言えよ〜」
「ご、ごめんなさい…」
「じゃ、俺らは二人で飲み行きまーす」
意外と明るい人たちなのかも、と思った瞬間去り際に舌打ちが聞こえて一気にそんな感情はなくなった。
「あ、みなと、くん…」
「あー、ごめん笑いきなり」
「全然大丈夫!むしろ助かったよ笑」
「ならよかったわ。行こか」
「うん」
蒸し暑い外にでて、並んで歩く。
少しの間会話もなく、少し気まずかった。
先に口を開いたのは彼だった。
「あなたちゃん、ちょっと寄りたいところあるんやけど、良い?」
「いいよ〜」
彼についていくと、近くの公園に着いた。
公園に何か用でもあるのだろうか?
「公園?なんかあるの?」
「ここなら人いないし君ちゃんと喋れると思って。」
またこの人間は…そういうこと言わないでよ…
近くのベンチに腰をかけ、途中で買った水を飲んだ。
ちょっと小さめのベンチだったので距離が近かった。
「改めてさっきはありがとうございました。。。。。」
「いやいや!全然大丈夫やでw」
「人生初ナンパだったわ」
「絶対嘘や。」
「本当。」
「嘘。」
「本当だって!www」
「まじで〜?」
「お姉さんかわいいっすねぇ〜。ちょ、俺好きになっちゃいそう」
「湊くんまで〜」
なんとか平常心を保っているが、いくら冗談とはいえ、彼から言われると気が気じゃない。
「本気って言ったら、どうする?」
「え…」
「マジで好きって言ったら、」
「え、あ…」
「あなたちゃん」
「…はい。」
「俺あなたちゃんのこと好きや。ライブ来てくれたり、一緒に飲んだりして、楽しい話ししたりして、もっとそれ以上の関係になりたいって思った。」
「俺と、付き合ってくれませんか」
これは現実か?私は長い長い夢を見てるんじゃないか?と思って、ほっぺたをつねる。
「何してんの笑」
「こ、これが夢なのか現実なのかわかんなくなっちゃった笑」
いきなり彼が距離を詰め、キスをして、手を優しく握って来た。
へ、、、
「今のキスも、この体温も、心臓の音とかも、全部現実やで。夢じゃない。それでその、返事は…?」
「こんな私で良いなら…よろしくお願いします…」
「よっしゃっっっっよしゃっっ、、、、、!!!まじで!!ええの!!」
「ここで一曲歌おかな…」
「やめてやめてwwまじだよ。てか逆にこっちのセリフだよ」
「俺は、あなたちゃんが良いんだって。」
「それは嬉しいです。」
「あ、いま照れたやろ。」
「あーーーうるさい!!」
「かわいい。」
「やめろ!!!」
「にゃはは〜」
相変わらずニマっと緩んだ笑い方をする彼を見ながら、私も笑った。
暑いけど、手を繋いで駅まで行った。
思いっきり手を振る彼に少し笑ってしまいながら、私も手を振り返した。
今のこの暑さが、気温なのか、それとも他のものなのかはわからなかった。
いかがだったでしょうか?
お久しぶりです。
実は今回の話、0.01%本物です。(すいません最初の音楽イベントのとこだけです)
不破湊がホストじゃない世界線のお話でした。
最近は学校に好きな先生ができて毎日行くのが楽しいです。












編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!