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t「」 u『』
コンコン、 と 静かな夜に扉を叩く音が鳴り響く。
『…』
何も言わずに僕はその扉を開ける。 本来なら誰か確認するべきだろう。
だがそんなことしなくても、今目の前に居る人物が誰なのか僕には分かってしまうのだ。
『…どしたん』
扉を開け、目の前の人物に声をかける。
数秒黙ったままで不思議に思っていると、彼が口を開いた。
「…怪我は」
怪我。 嗚呼、 これのことか。 こいつには言うなって口止めしたんに…
「なんですぐ言わんかってん俺に」
『スマン、心配かけたくなくて…』
ふい、と視線を彼から逸らす。
彼には、言うべきではないと思っていた。
「…無理せんといて、怪我なんてせんといて、」
『ッ…』
彼が1歩近づく。 僕をそのまま力強く抱き締め離さないように。
「俺には、お前だけなんや、居なくなって欲しくない」
…ほら、こうなるから知られたくなかってん、怪我のこと。
『…居なくならんよ、僕はずっととんちの傍におる』
「約束やからな、居なくなったら許さん、死んでも許さん」
そんな事を言いながら僕の頬を撫でる。彼の顔を見ると少し苦しそうな顔。 そんな顔せんといてや、
『…僕ら、付き合ってへんのにな、』
なんて、言葉が落ちる。 そう、 付き合ってないんだ僕らは。 なのにこんな、 互いがいないとダメで、 生きれなくて、依存してしまっている。
「知っとる、 でも、 俺は、」
『ダメ』
何かを言いかける彼の言葉を制止する。
「ッ…なんで、」
君が付き合いたいって、思ってくれてるんは知っとる。 でもな、 ダメなんや
『…ごめんな、』
「…、」
黙ったと思えば 先程より強く抱きしめられる。
感情が伝わる。 僕は彼を見つめたまま
『…近い』
「今更やろ、」
君の顔が近い。 何回も、見慣れた距離だ。
ちぅ、 と そのまま僕らの唇が重なる。
最初は軽く触れるだけ。確かめるように。
離れたと思うと、また触れる。
今度は、逃がさないように、貪るように、でも優しく唇に噛み付いてくる。
『っ…ん、ぅ…、』
少し息苦しくなる。 それに気付いたのか
「…やめる?」
と、 口から離れる。 つー、と 銀色の糸が僕らを繋ぐ。
『…やめへん』
やめるわけない。 彼の服を きゅ、と掴む。
「知ってる」
何度も触れる。 優しく、 安心させるように。
頬、額、 色々な所に口付けを落とされる。
そして最後にもう一度唇を重ねる。
「…俺だけ、見とって」
そう言うと、僕を抱きしめ 胸に顔をうずめる。
『束縛?』
付き合ってへんのに。 なんて 彼の頭を撫でながら思う。
…縛ってるんは僕の方や。 君は、僕に縛られてる。
逃げ道なんて、ないんや。












編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。