kento
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高橋くんが急いで階段を駆け上っていくのが見えて 、追いかけてきたのが間違いだった 。
謙 「 … 。」
半開きになった屋上の扉 。そこから漏れる話し声は 、どちらも知っている声で 。正直足がすくんでしまった 。
怖いもの見たさでこっそり覗いた扉の先には 、並んで柵にもたれかかるあなたと高橋くん 。何だかここは酸素が薄い 。
「 恭平くんのこと 、好きやった 。」
確かに聞き取れたその言葉に自然と足が後ろに下がって 、吐いた息が大袈裟に音を立てた 。
謙 「 … っ 。」
気付いた時には 、俺は息を切らして階段を下っていた 。
… よかったなぁあなた。やっとちゃんと伝えられたんやな 。これで幸せやな 、辛い顔せんと笑ってられるな 。
心からそう思っているはずなのに 、苦しくてたまらなかった 。
駿 「 おい長尾 ! 」
大きな声で名前を呼ばれて 、周りのガヤガヤした声がスイッチを入れたかのように突然聞こえ出した 。気づかないうちに 、卒業式終わりの生徒たちが集まって混雑している校庭にいたらしい 。
駿 「 どうしたん 、恭平待たへんの ? この後3人で飯行くって話して 、」
謙 「 ごめん 。ちょっと今日無理かも 。」
駿 「 … 。」
心配そうに眉を下げるみっちーがついに口を噤む 。きっと俺が何を見たのか 、察したからだと思う 。
謙 「 高橋くんに卒業おめでとうって言っといて 。」
うまく笑えただろうか 。ただでさえ作り笑いは得意じゃない 。
謙 「 … じゃあ 、行くわ 。」
駿 「 、長尾 … 。」
何か言おうとしたみっちーを待つことなく 、俺は歩き出した 。涙を流す生徒たち 、思い出を語り合う生徒たちを避けて校門の外へ 。
春休みが終われば 、俺たちは最高学年になる 。きっと今まで通りの1年だ 。
『 きみ長尾謙杜やろ ! 私長尾くんのせいで追いかけ回されてたんですけど ! 』
ロッカーに押し込まれることも 、
『 好き 、本気で 。』
告白の練習とか言って跨られることも 、
『 … 謙杜 ? 』
花火を見る君があまりに綺麗で 、好きでどうしようもない気持ちになってしまうことも 。無いんだろう 。
「 謙杜 ! 」
無いと分かっているのに 、どうして俺は立ち止まってしまうのか 。
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編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!