家の物置から、すっかりしまい込んでいたスーツケースを引き出した。
……明日から、期望症予防の隔離施設【A.N.S.W.E.R.】に入所するためだ。どうやら自分の他にも十数人が来るらしい。一人じゃないだけ安心だ。
……そんな事を考えながら、スーツケースの埃を払ってジッパーを開く。使うのは大体1ヶ月ぶりくらいだ。
肝心の何かの名前が出てこない。
自分にとって命と同じくらい大切だった、というのは分かっているのに。
少し頭にモヤッとした気持ちを残しながらも、とりあえず荷物を詰め込んだ。
……この時、自分は知らなかった。期望症からは逃げられない事を。
スーツケースのジッパーを閉め、身なりを整える。
忘れ物はないだろうか。
……そう意気込んだのも束の間、
急に足元がすくわれるような酷い目眩を食らった。
こんな事、今̴ま̴で̴無̴か̵っ̵た̸の̵に҉。̶
__次に目を覚ますと、
着の身着のまま何処かの地下室で寝かされていた。
才能を忘れた世界で生きる君たちは何を問う?
【𝗤 𝗗𝗮𝗻𝗴𝗮𝗻𝗿𝗼𝗻𝗽𝗮】 Start
__私は彷徨っていた。
どこか分からない道を。
霧がかかったように、周囲の風景は何も見えない。
これは夢?
__夢じゃない?
じゃあ、今は寝ているの?起きているの?
本当に私は歩いているの?
私の才能は何だっけ?
名前は?
⇛Chapter.0|Q.あなたの存在意義は?















編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!