~NOside~
中世のある時代。
毎日どこか寂し気な空気が漂う一国では、一人の王子がいた。
陶器のように白い肌。
ガラス玉のように輝く瞳。
透き通った唇。
誰もが羨む容姿を持つ彼は、それはそれは大切に育てられた。
王様と女王様、城の者たち…王子見た者は彼をこう比喩した。
“生きた宝石”、と。
それでは、そんな王子は一体どのような生活をしているのだろうか。
裕福で、何一つ不自由のない生活だろうか。
否…むしろ真逆であった。
厳しいルールに縛られる彼の生活を、少し覗いてみよう。
~らんside~
…チリンチリン。
鈴の音が聞こえ、俺はゆっくりと目を覚ました。
今日も始まってしまったのか、と心の中で少しため息をついた。
城の外では、俺は大層愛されているのだという噂を聞くと、全くもってそのようなことはない。
むしろ、最悪だ。
こんな、ルールばかりに囚われる生活は。
ベッドから降りずに執事の働きを眺める。
…ルールその一。
起きても、ベッドから自由に動いてはならない。
俺がどこかで怪我をすることを防ぐため、らしい。
ちなみに当たり前だが、行動する際は執事がどこでもついてくる。
…正直鬱陶しい。
そう口にした瞬間、執事から冷たい視線が突き刺さる。
仕方なく、コクリと頷くことにした。
…ルールその二。
声を必要以上出してはならない。
俺の美しい声がつくられる喉を配慮するため…らしい。
しかし完璧に声を出さずにいると、逆に喉に負担がかかる。
そのため、完璧にウイルスが除去された、…らしい防音室では自由に声を出してよい。
…といっても、一日一時間もないのだが。
着替えをしている間に、執事が食事を持ってくる。
…質素な野菜スープだけ。
ルールその三。口にしていいのはスープや野菜など、柔らかく健康的なものだけ。
理由は太らせないため。
太りやすい菓子やパンはもってのほか、肉や魚なども厳しく制限されている。
それだけだと死んでしまいそうに見えるが、一応スープにタンパク質など栄養が入っている…らしい。正直俺は全く知らない。
全くお腹を満たさないスープを綺麗に飲み切り、執事に髪などを整えてもらい、部屋を出ようとする…と、案の定執事に呼び戻された。
突き刺すような視線。
本当にこいつは俺の従者なのだろうか。
もうこいつの言いなりにしかなっていないんだけど、俺。
…といっても声に出せないので、いつものメモ帳にサラサラと文字を書く。
…ルールその四。
城の外には出ない。
城の外の外道共に誘拐などをされないため、らしい。
このせいで、俺は外に出たことがない世間知らずだ。
…王子なのに国の様子を知っていなくても良いのだろうか。
今さらなので、特に言うつもりもないけど。
プラスで言うとこのルールで俺はほとんど運動したことがない。
子どものころ少し遊んだ程度だ。
そのせいで俺は立派な病弱人。
少しでも急ぎ足になると息切れになるし、寒さですぐに風邪をひく。
…ぜんっぜん守れてないじゃん。むしろ毎年脆くなってるんだけど、俺。
幼いのころは…まだルールが緩かった。
そのおかげで、俺は少し城の外に遊びに行くこともあった。
…親友も、外の世界にいた。
俺の唯一の友達…親友は、城の外を世間知らずの俺にたくさん教えてくれた。
時間を忘れて遊び、話し、笑顔溢れる時を過ごした。
今思えば、その頃が一番幸せな時間だったのかもしれない。
しかし、俺はそれで親友に会うために失態を犯してしまった。
ルールが緩いというだけで、外に行ってよい時間などは決められていたのだ。
…けど、俺は友達のためにルールを破ってしまったのだ。
それが、今のこの厳しいルールになってしまった理由なのかもしれないけど。
そのせいで、俺は本格的に城に閉じ込められてしまった。
…今でも、覚えてる。
俺が外に出れる、最後の日を。
俺は親友にもう会えないと思い、ずっと泣いていた。
親友はずっと心配していて、それでもずっと笑顔でいた。
本気だった。
ルールを破ったことを知ったお父様が、あまりにも怖くて。
…本気で殺されるんだと、思い込んでいた。
嘘偽りのない真っすぐな笑顔で、親友は言った。
だから、と明るい声で続けて言葉を紡ぐ親友。
にぱっ!と眩しい笑顔で言いきる親友がかっこよすぎて。
ああ、なら大丈夫だなって、不思議と心が晴れて行った。
…あの日からもう十年。
名前も顔も、もう忘れてしまったけど、この思い出だけは、鮮明に覚えている。
恋愛感情を持っていたわけではきっとないが、それでも俺は忘れることができなかった。
さっき言ったルールの他にも、まだまだたくさん縛りはある。
…それでも、彼の言葉を思い出す度に、俺はまだ縛りに耐えることができた。
…きついことは変わらないがな!!
新作作りました。
(最近出したばかりなのに…)
上手く続かなかったらすいません。
初ファンタジーです。
設定にこだわりすぎて2000文字を余裕で超えてしまいました…
意味わからん!って部分あったらすいません。
というか怪盗パロなのに怪盗要素一切出してないのもすいません。
次回からその要素は出していく(つもり)です!
では、また次の物語で!