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第1話

1.囚われの日々。
1,522
2024/01/18 14:09
~NOside~


中世のある時代。

毎日どこか寂し気な空気が漂う一国では、一人の王子がいた。


陶器のように白い肌。

ガラス玉のように輝く瞳。

透き通った唇。



誰もが羨む容姿を持つ彼は、それはそれは大切に育てられた。



王様と女王様、城の者たち…王子見た者は彼をこう比喩した。




“生きた宝石”、と。



それでは、そんな王子は一体どのような生活をしているのだろうか。


裕福で、何一つ不自由のない生活だろうか。



否…むしろ真逆であった。



厳しいルールに縛られる彼の生活を、少し覗いてみよう。






~らんside~



…チリンチリン。


鈴の音が聞こえ、俺はゆっくりと目を覚ました。


執事
お目覚めですか。おはようございます。らん様。
らん
……

今日も始まってしまったのか、と心の中で少しため息をついた。

城の外では、俺は大層愛されているのだという噂を聞くと、全くもってそのようなことはない。

むしろ、最悪だ。
こんな、ルールばかりに囚われる生活は。


ベッドから降りずに執事の働きを眺める。

…ルールその一。
起きても、ベッドから自由に動いてはならない。

俺がどこかで怪我をすることを防ぐため、らしい。
ちなみに当たり前だが、行動する際は執事がどこでもついてくる。
…正直鬱陶しい。

執事
お着換えでございます。お食事は後ほどお持ちいたします。
らん
…ありがとう。

そう口にした瞬間、執事から冷たい視線が突き刺さる。
執事
らん様。口を開くなとあれほど言いましたのに、忘れたのですか。
らん
……

仕方なく、コクリと頷くことにした。

…ルールその二。
声を必要以上出してはならない。
俺の美しい声がつくられる喉を配慮するため…らしい。

しかし完璧に声を出さずにいると、逆に喉に負担がかかる。
そのため、完璧にウイルスが除去された、…らしい防音室では自由に声を出してよい。
…といっても、一日一時間もないのだが。

着替えをしている間に、執事が食事を持ってくる。

執事
朝食でございます。

…質素な野菜スープだけ。

ルールその三。口にしていいのはスープや野菜など、柔らかく健康的なものだけ。
理由は太らせないため。
太りやすい菓子やパンはもってのほか、肉や魚なども厳しく制限されている。

それだけだと死んでしまいそうに見えるが、一応スープにタンパク質など栄養が入っている…らしい。正直俺は全く知らない。


全くお腹を満たさないスープを綺麗に飲み切り、執事に髪などを整えてもらい、部屋を出ようとする…と、案の定執事に呼び戻された。

執事
どこへ行くのですか。
執事
まさか城の外、とは言いませんよね?

突き刺すような視線。


本当にこいつは俺の従者なのだろうか。
もうこいつの言いなりにしかなっていないんだけど、俺。

…といっても声に出せないので、いつものメモ帳にサラサラと文字を書く。

らん
『お父様と誕生パーティーについての話し合いをするだけです。』
執事
…そうですか。では、部屋までご一緒させていただきます。

…ルールその四。
城の外には出ない。
城の外の外道共に誘拐などをされないため、らしい。

このせいで、俺は外に出たことがない世間知らずだ。

…王子なのに国の様子を知っていなくても良いのだろうか。

今さらなので、特に言うつもりもないけど。


プラスで言うとこのルールで俺はほとんど運動したことがない。
子どものころ少し遊んだ程度だ。

そのせいで俺は立派な病弱人。
少しでも急ぎ足になると息切れになるし、寒さですぐに風邪をひく。

…ぜんっぜん守れてないじゃん。むしろ毎年脆くなってるんだけど、俺。


幼いのころは…まだルールが緩かった。
そのおかげで、俺は少し城の外に遊びに行くこともあった。

…親友も、外の世界にいた。

俺の唯一の友達…親友は、城の外を世間知らずの俺にたくさん教えてくれた。

時間を忘れて遊び、話し、笑顔溢れる時を過ごした。


今思えば、その頃が一番幸せな時間だったのかもしれない。

しかし、俺はそれで親友に会うために失態を犯してしまった。
ルールが緩いというだけで、外に行ってよい時間などは決められていたのだ。
…けど、俺は友達のためにルールを破ってしまったのだ。

それが、今のこの厳しいルールになってしまった理由なのかもしれないけど。


そのせいで、俺は本格的に城に閉じ込められてしまった。


…今でも、覚えてる。

俺が外に出れる、最後の日を。


らん(子供)
…う、うぅ……ごめん、ごめんねぇ…!(グズッズビッ…)

俺は親友にもう会えないと思い、ずっと泣いていた。

親友はずっと心配していて、それでもずっと笑顔でいた。

親友
なーにいってるんだよ、らん!またあえばいいじゃんか!
らん(子供)
でも、もうおしろのそとにでちゃ、だめだって、いわれた…
親友
えー!なんでちゃんとまもろうとしてんだよ!!
らん(子供)
…やぶったら、おこられるもん。
らん(子供)
またやぶったら、ころされちゃうかもしれない…!!

本気だった。

ルールを破ったことを知ったお父様が、あまりにも怖くて。
…本気で殺されるんだと、思い込んでいた。

親友
…そっかぁ…ころされちゃうのは、いやだなぁ~
らん(子供)
う、うぅ…こわい、こわいよ…!(グズッズビッ!)
親友
んー…よしっ!わかった!!
らん(子供)
?どーしたの…?
親友
おれがいつからんを、たすけにいく!

嘘偽りのない真っすぐな笑顔で、親友は言った。

らん(子供)
たすけにいくって…?
親友
しろからだしてやるってことだよ!
らん(子供)
……ほんと?
親友
ああ!いまはむりだけど…いつか、ぜーったいに!たすけにいくから!!

だから、と明るい声で続けて言葉を紡ぐ親友。

親友
らんは、あんしんしてまってろよな!!

にぱっ!と眩しい笑顔で言いきる親友がかっこよすぎて。

ああ、なら大丈夫だなって、不思議と心が晴れて行った。


…あの日からもう十年。

名前も顔も、もう忘れてしまったけど、この思い出だけは、鮮明に覚えている。

恋愛感情を持っていたわけではきっとないが、それでも俺は忘れることができなかった。


さっき言ったルールの他にも、まだまだたくさん縛りはある。


…それでも、彼の言葉を思い出す度に、俺はまだ縛りに耐えることができた。


執事
…らん様、気味の悪い笑みはおやめください。
らん
……

…きついことは変わらないがな!!









新作作りました。
(最近出したばかりなのに…)

上手く続かなかったらすいません。
初ファンタジーです。

設定にこだわりすぎて2000文字を余裕で超えてしまいました…

意味わからん!って部分あったらすいません。
というか怪盗パロなのに怪盗要素一切出してないのもすいません。

次回からその要素は出していく(つもり)です!


では、また次の物語で!

プリ小説オーディオドラマ