第4話

4.まさかの対面。
1,422
2024/01/19 21:00
~らんside~

いるま
俺たちに、攫われてくれない?


……は?


らん
……っ!

まずい、理解不能なことの連続で声が出そうになる。

下唇を噛んで話すことを我慢する俺を見て、怪盗は少し不満そうな顔をした。

いるま
……厳しいルールってのは知ってたけど…こんなだとわな。(ボソッ)
らん
…?

何か言ってたような気がしたが、今は無視しよう。

…どういうことだ?狙いは、ティアラではないのか?
ティアラの他にもペンダントやイヤリングなど、金になる宝石は他にも大量になる。


それなのに、金になるはずのない俺を攫う?


頭が「?」だらけで、どうにかなりそうだ。



いるま
はぁ…まぁ「はいわかりました」って言ってくれるはずがないよな。

…覚えてないみたいだし、と彼は続ける。

どういうことだ?


とにかく、俺の身が危ない。
さっきは金にもならない…とは言ったが、俺の唯一の良点はこの容姿。
攫われたらオークションで売られてしまう…ということさえもありえる。

はやく、ここから逃げなくては…!

そう考え、ドアへ向かおうとした瞬間、また人影が瞳に映った。

なつ
おーっと、そうはさせねぇぜ?宝石さん♪
すち
…ごめんね。逃げられたら困るんだ。
ニヤニヤとした笑みを浮かべ、ドアで立つ赤い瞳の人。
いつのまにか部屋に入ってきたのか…それとももっと前に既にいたのか。
服装が紫の人と似ている…ということはこの人も怪盗。


…まずい、出口をふさがれた。
そうなれば、執事を呼び出すベルをー…!

そう思いつき、すぐにベルへと振り向くが、もう遅かった。

みこと
うわぁ!やっぱ王子様の部屋って豪華なんやなぁ…!
こさめ
でも残念。執事さんは呼ばせないよ~♪
らん
……っ!

ベルの付近には、また別の水色の瞳をした人が立っていた。
身長は俺と同じ…いや、俺より小さいくらいか。
にこにことしながら俺の部屋を見渡している。

…だんだんと焦ってきた。
だって、ドアには赤い人、窓には紫の人、ベルには水色の人がすでに立っている。

運動神経皆無な俺に、一瞬で移動できる素早い彼らを突破することは難しいであろう。


手汗が滲んでくる。
もう余裕は少なくなっていて、俺の瞳はもう右往左往しているであろう。
どうにか震えを悟られないようにするだけでもう精一杯だ。


そんな俺の様子に気付いたのか、いつの間にか部屋に入っていた紫の人が、少し気遣わしげに聞いてきた。

いるま
別に俺らはお前を虐めたり売ったり…怖いことはするつもりは一切ねぇよ。
いるま
それに、お前にも好都合だと思ったんだけど。
らん
……は、?…っ!
思わず声を出してしまい、慌てて口を抑えようとした。。

しかし、俺が口を塞ぐ前に腕を掴まれる。

いるま
声を出せよ。いや、悲鳴あげられたら困るんだけど。
らん
……
いるま
…どうせ声を出すな~、とか城から出るな~とか言われてるんだろ?
らん
!?なんでそれを…!
いるま
お、やっと喋った♪
らん
……

ハメられた。

しかし、城の者以外はこのルールを知らないはずなのだが…
怪盗だから調べているのか?
他人にとってはどうでもいいことだとは思うのだが。


…苦しいだろ、と苦しげな声で言う彼。

いるま
俺らについてくれば、城から出れるぞ。
いるま
それに、好きなだけ食えるし、街にも行ける。
らん
……!

そんなことが叶うのか、と思わず顔をあげた。

…彼の言うことは、要約すると……

らん
…自由にしてくれる、ということですか。
いるま
ああ。好きなように生かしてやる。…俺らと一緒にな。

即答で、俺の叶わないと諦めていた答えを当然のように言う彼。

その真っすぐな言葉に、俺の心は揺らいでしまった。

らん
…ついて、いきます。
いるま
…!そうか、後悔したって知らねぇぞ?
らん
俺が、自分で決めたことです。

それに、ここで一生閉じこもるより、ここで挑戦して躓いたほうが俺は後悔なんてしない。

そんな、絶対的な自信が俺にはあった。


すると、彼は俺よりも嬉しそうな、優しい顔で笑った。
…不覚にもドキリとしたのは、無視することにしよう。

いるま
では…俺らに攫われてしまいましょうか。…らん。
らん
…はい、!



そうして、俺は彼に支えられながら、初めて窓の外へと飛び出した。






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