~らんside~
そう言った瞬間、俺は姫抱きにされた。
…は!?姫抱き!!?
おんぶとおかされるのかと思っていたため、思考が追いつかない。
しかもその数秒後、俺は窓から飛び出していた。
……そんな野性的な方法で城から出るん!?
そうあたふたしている間に、怪盗はひょいひょいと城の複雑な建物を潜り抜けていく。
かなり危ないことをやっているはずなのに、辛そうな感じは一切ない。
むしろ、安心感まで感じるほどだ。
チラリと後ろに目をやると、他の怪盗の人たちもついてきているようだった。
パーティー会場が目に見えた。
お父様も、姫様もみんな、楽しげな表情で踊ったり、話しているように見える。
俺が、主役のパーティーのはずなのに。
…やっぱりいない方がいいんだな、と改めて感じられた。
心配そうに聞いてくる怪盗。
今考えてみれば、俺は心配されたことがなかった気がする。
…こんな厳しいルールをやらせるのだから、心配なんてするわけないけど。
どんだけ風邪をひいても、説教されても、泣いていても。
国の者も、執事も、お父様も心配してくることはなかった。
なんなら怪我をした際は、殺すのではないかと思うレベルの説教をされた。
…そんなにも俺の容姿にこだわるなら、殺してくれればよかったのに。
そう俺がうじうじと考えていたことは、次の瞬間全部吹っ飛んだ。
そう言われ、パッと前に広がる景色を見る。
明かりがチラチラと輝いている街。
所々で咲いている色鮮やかな植物たち。
無限に広がっている、引き込まれるほどの星の空。
感動した。
この世には、こんなにも美しい世界があったのか、と。
幼いころは昼に外に出ていたため、夜景は生まれて初めて見るものであった。
そうボーっとしていると、また姫抱きにされ、移動した。
連れてこられたのは…ヘリコプター?
当たり前のように乗せられ、気付いたころにはもう浮上していた。
そういえば俺、攫われたんだった。
夜景に見惚れて忘れかけていた…
緑髪の人はすちさん、黄色髪の人はみことさん。
おっとりしていて優しそうだ。
…怪盗だけど。
赤髪の人がなつさん、水色髪の人がこさめさん、そして、俺をずっと抱きかかえていた紫髪の人がいるまさんか。
…嫁とかはよくわからないけど!
三人がずっとガヤガヤと話しているのを見ながら、俺は夜景を眺めた。
そうしているうちに、段々と眠気がやってくる。
脳内に、俺のことを冷たく見下ろす王国の人たちが映る。
そう呟いた瞬間、俺の意識は離れていった。
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