第6話

6.初めての世界。
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2024/01/22 14:21
~らんside~


いるま
じゃ、俺に捕まっていろよ!らん!
らん
はいっ…!
そう言った瞬間、俺は姫抱きにされた。

…は!?姫抱き!!?
おんぶとおかされるのかと思っていたため、思考が追いつかない。

しかもその数秒後、俺は窓から飛び出していた。

……そんな野性的な方法で城から出るん!?


そうあたふたしている間に、怪盗はひょいひょいと城の複雑な建物を潜り抜けていく。
かなり危ないことをやっているはずなのに、辛そうな感じは一切ない。
むしろ、安心感まで感じるほどだ。

チラリと後ろに目をやると、他の怪盗の人たちもついてきているようだった。

らん
あ……

パーティー会場が目に見えた。
お父様も、姫様もみんな、楽しげな表情で踊ったり、話しているように見える。

俺が、主役のパーティーのはずなのに。

…やっぱりいない方がいいんだな、と改めて感じられた。

いるま
…?何かあったか?
らん
…なんでもないです。

心配そうに聞いてくる怪盗。

今考えてみれば、俺は心配されたことがなかった気がする。
…こんな厳しいルールをやらせるのだから、心配なんてするわけないけど。

どんだけ風邪をひいても、説教されても、泣いていても。

国の者も、執事も、お父様も心配してくることはなかった。


なんなら怪我をした際は、殺すのではないかと思うレベルの説教をされた。

…そんなにも俺の容姿にこだわるなら、殺してくれればよかったのに。


そう俺がうじうじと考えていたことは、次の瞬間全部吹っ飛んだ。


いるま
お、城から出たぞ。らん。
らん

そう言われ、パッと前に広がる景色を見る。

らん
うわぁっ…!
明かりがチラチラと輝いている街。
所々で咲いている色鮮やかな植物たち。
無限に広がっている、引き込まれるほどの星の空。

感動した。

この世には、こんなにも美しい世界があったのか、と。

幼いころは昼に外に出ていたため、夜景は生まれて初めて見るものであった。

らん
綺麗……
いるま
だよな。…喜んでもらえて、よかった。
らん
いえ…

そうボーっとしていると、また姫抱きにされ、移動した。

連れてこられたのは…ヘリコプター?
当たり前のように乗せられ、気付いたころにはもう浮上していた。


らん
……え。
すち
あ、おつかれ~結構すぐ出られてよかったね!
らん
ど、どこに行くんですか…!?
すち
ん?ああ、こんにちは!俺の名前はすちだよ~
みこと
これからアジトに戻るんやで!あと俺はみことや!
らん
アジト…なるほど……

そういえば俺、攫われたんだった。
夜景に見惚れて忘れかけていた…

緑髪の人はすちさん、黄色髪の人はみことさん。

おっとりしていて優しそうだ。
…怪盗だけど。

なつ
ちゃっかり姫抱きしやがってよ~!まぁそりゃこいついるまの嫁…
いるま
やめろ!!///
こさめ
あれ~?照れてんでしゅか~?…あ、こさめの名前はこさめね!
なつ
あ、名前か。俺はなつ。よろ~
いるま
…俺はいるま。よろしくな。
らん
はい…あ、俺はらんって言います…
なつ
知ってる。そりゃ毎日いるまが話してたー…
いるま
な つ ?
なつ
ごめんごめんwww
らん
…???
赤髪の人がなつさん、水色髪の人がこさめさん、そして、俺をずっと抱きかかえていた紫髪の人がいるまさんか。

…嫁とかはよくわからないけど!


三人がずっとガヤガヤと話しているのを見ながら、俺は夜景を眺めた。

そうしているうちに、段々と眠気がやってくる。


脳内に、俺のことを冷たく見下ろす王国の人たちが映る。



らん
…さよなら。(ボソッ)

そう呟いた瞬間、俺の意識は離れていった。





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