あなたside
私の名前はあなた。
高校3年生。
昨日の夜、私は事故で両親をなくした。
絶望だった
学校ではいじめに遭い、それでも両親が居たから頑張れた。
今の私には
もう何も無い。
パパ、ママ…
産まれ育った故郷。みんなみんな
バイバイ。さようなら。
私は慣れない街を歩いていた。
そこでまさかの大雨。
傘ないのに…
まだ17歳の私には
色々なものが重なりすぎて
たくさんの十字架を背負うには重すぎた。
何もかも逃げ出したくて
飛び出た先は東京
勿論、あてもない。
さすが東京。さすがスクランブル交差点
田舎育ちの私からして
すごい人の数で、初めて見る人混みだった。
土砂降りの雨の中スクランブル交差点を急いで渡る
コケた。
ほんとについてない。
街行く人達は
誰も手を差し伸べてくれなくて
人の冷たさをより感じた。
ゆっくり起き上がり
溢れ出す涙を雨で流した。
でもダメ。止まらない。
ドンッ!
"こっち来て"と
慣れたように人をかき分け
私の手を引くキラキラした人
なんて真っ直ぐな目で見られると
余計に泣ける。
言われるがまま、私はその人に手を引かれてった
東京にも優しい人いるんだなぁ。
ていうか、優しすぎるけど。この人。
なんてムキになるとこが
子供なんだよってね。
何も無い私が子どもだからって
ひとりなのがいけないの?
何この人。
でも行くあてもないし
悪い人では…なさそう…?だし
これが私のたくさんの初めてを知る
貴方との出会いだった。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!