夏祭り
帰り道
早見と玉木は寮までの道を歩いていた。
…。
今日、
楽しかった。
うん、俺も。
ありがとう、誘ってくれて。
いやほんと、誘って良かった。
玉木は眠そうなしゃべり方をしている。
眠い?
あ、いやそんなに。
眠そうに見えた?
うん。
そっかそっか。
玉木は少し笑った。
男子寮の裏に着いた。
じゃあ、今日はありがとう。
うん、こちらこそ。
…。
じゃあ…、
ちょっと待って。
…うん。
さっき俺嘘ついた。
え?
嘘?
うん、岩田の考えてること、
あんまり、分かんないってこと。
あぁ、岩田君のこと…。
実はなんでも分かってる。
…そうなの。
うん。
岩田が、早見さんにしたかったこととか全部。
…。
聞きたい?
具体的なこととか。
…。
早見は心臓の音が速くなった。
岩田のことに関してでなく、玉木についてだ。
(岩田君のことを聞きたいんじゃなくて、)
玉木君について知りたいかな…。
…。
玉木は固まっていた。
…。
(あ、言っちゃった…。)
(やばい。)
早見は時間差で体が熱くなっていった。
はぁーっ。
玉木は急に、ため息をついてしゃがみこんだ。
!
ど、どうしたの?
玉木は顔を両手で覆っていて、表情が分からない。
…。
玉木君?
早見もしゃがんだ。
大丈夫…?
すると玉木は、ぽつりぽつりと話し始めた。
…大丈夫。
体調悪いとかじゃなくて、
その、
嬉しくてさ。
玉木は顔を覆っていたが、声色からは嬉しさを隠せていないようだった。
あ、えと…。
(知りたいってそんなに嬉しいんだ…。)
しばらくすると、玉木は顔から手を下ろした。
…。
(あ、顔…、嬉しそう。)
俺のこと知りたいならさ、
…うん。
部屋で話そ。
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編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。