第38話

夜は短し
96
2022/05/17 09:45
夏祭り    

帰り道














早見と玉木は寮までの道を歩いていた。







早見恭子
…。
早見恭子
今日、
早見恭子
楽しかった。
玉木想汰
玉木想汰
うん、俺も。
早見恭子
ありがとう、誘ってくれて。
玉木想汰
玉木想汰
いやほんと、誘って良かった。


玉木は眠そうなしゃべり方をしている。







早見恭子
眠い?
玉木想汰
玉木想汰
あ、いやそんなに。
玉木想汰
玉木想汰
眠そうに見えた?
早見恭子
うん。
玉木想汰
玉木想汰
そっかそっか。
玉木は少し笑った。




男子寮の裏に着いた。






早見恭子
じゃあ、今日はありがとう。
玉木想汰
玉木想汰
うん、こちらこそ。
玉木想汰
玉木想汰
…。
早見恭子
じゃあ…、
玉木想汰
玉木想汰
ちょっと待って。
早見恭子
…うん。
玉木想汰
玉木想汰
さっき俺嘘ついた。
早見恭子
え?
早見恭子
嘘?
玉木想汰
玉木想汰
うん、岩田の考えてること、
玉木想汰
玉木想汰
あんまり、分かんないってこと。
早見恭子
あぁ、岩田君のこと…。
玉木想汰
玉木想汰
実はなんでも分かってる。
早見恭子
…そうなの。
玉木想汰
玉木想汰
うん。
玉木想汰
玉木想汰
岩田が、早見さんにしたかったこととか全部。
早見恭子
…。
玉木想汰
玉木想汰
聞きたい?
玉木想汰
玉木想汰
具体的なこととか。
早見恭子
…。

早見は心臓の音が速くなった。





岩田のことに関してでなく、玉木についてだ。




早見恭子
(岩田君のことを聞きたいんじゃなくて、)
早見恭子
玉木君について知りたいかな…。
玉木想汰
玉木想汰
…。
玉木は固まっていた。
早見恭子
…。
早見恭子
(あ、言っちゃった…。)
早見恭子
(やばい。)



早見は時間差で体が熱くなっていった。
玉木想汰
玉木想汰
はぁーっ。










玉木は急に、ため息をついてしゃがみこんだ。
早見恭子
早見恭子
ど、どうしたの?



玉木は顔を両手で覆っていて、表情が分からない。



玉木想汰
玉木想汰
…。
早見恭子
玉木君?




早見もしゃがんだ。





早見恭子
大丈夫…?





すると玉木は、ぽつりぽつりと話し始めた。
玉木想汰
玉木想汰
…大丈夫。
玉木想汰
玉木想汰
体調悪いとかじゃなくて、
玉木想汰
玉木想汰
その、
玉木想汰
玉木想汰
嬉しくてさ。


玉木は顔を覆っていたが、声色からは嬉しさを隠せていないようだった。





早見恭子
あ、えと…。
早見恭子
(知りたいってそんなに嬉しいんだ…。)




しばらくすると、玉木は顔から手を下ろした。




玉木想汰
玉木想汰
…。
早見恭子
(あ、顔…、嬉しそう。)
玉木想汰
玉木想汰
俺のこと知りたいならさ、
早見恭子
…うん。
玉木想汰
玉木想汰
部屋で話そ。

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