第52話

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2026/07/07 21:21 更新





ライくんの明るい声と、コーヒーの香りが漂う穏やかな時間が流れていた。こうして他愛のない話をしていると、心がふっと軽くなるのを感じる。











あなた
あれ…?









その時、バッグの中でスマホが鋭い音を立てて震えた。
表示されたのは、おばあちゃんが入所している施設からの通知。私は少し不思議に思いながらも、通話ボタンを押した。





あなた
はい、もしもし?





あなた
……えっ?










電話口から聞こえてきたのは、施設職員の声だった。










おばあちゃんが、急変して緊急搬送された――。










状況を把握するより先に、背筋が凍りつくような感覚が全身を駆け巡る。スマホを握る指先がガタガタと震え、視界がぐらりと歪む。


その場に力なく座り込んだ私を見て、ライくんがすぐに異変を察して隣へ駆け寄ってきた。







inm
あなた? どうした、何があったの?



あなた
…おばあちゃんが、救急搬送って……。なんで? この前会った時は、あんなに元気そうにしてたのに……









混乱と恐怖で涙が溢れ出し、呼吸が浅くなる。

そんな私を、ライくんは力強く抱き寄せた。










inm
大丈夫、落ち着いて。俺がついてるから。……今すぐ病院に行こう








ライくんの声は、驚くほど冷静だった。
パニックで視野が狭まっていた私の心が、彼の腕の中で少しずつ息を吹き返す。







彼は離れて暮らす親戚。

理屈ではそう分かっているのに、彼の温もりに触れると、幼い頃からずっと欲しかった、言いようのない安心感に包まれる。



彼はいつだって、突然現れては、真っ直ぐに手を差し伸べて私の心を救ってくれるのだ。

















病院への道中も、到着してからの張り詰めた空気の中でも、ライくんは常に私の隣で、震える手を握っていてくれた。













付き添ってくれた施設の職員から、事の顛末を聞く。


昼食の準備のために部屋へ入ると、おばあちゃんは顔の半分が歪み、呂律も回っていなかったという。









医師
……脳梗塞です














医師からの淡々とした告白。

しばらくは入院が必要だという宣告は、あまりにも唐突で、残酷だった。






ICUの前に立ち、ガラス越しに管に繋がれたおばあちゃんの姿を見た瞬間、私はその場にへたり込んだ。






どうしていいか分からない。学校のこと、佐伯くんのこと……そんなものは全て、この絶望感の前では砂のように消えてしまった。












inm
あなた、深呼吸して








気がつくと、ライくんが私の背中をゆっくりとさすり、震える体を優しく抱きしめてくれていた。
この人がいてくれなかったら、私は今頃どうなっていただろう。









inm
きっと大丈夫だよ。信じて待っていようね











彼の穏やかな声が、荒れ狂う私の心にそっと染み込んでいく。




私は、この大きな不安を一人で抱える勇気なんてなかった。だからこそ、今こうして目の前で温かい体温を伝えてくれるライくんが、今の私にとって唯一の、そして絶対的な心の拠り所になっていた。



















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