第91話

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2026/03/02 22:35 更新







 でも。 


 殺す気には、なれない。 





 オレは、呼吸をずらす。 


 わざと隙を見せる。 





 誘う。 





 ダイアが踏み込む、その刹那。 





 アンテナを打ち込む。 


 命中。 





 一瞬だけ、動きが止まる。 





 完全支配は無理だ。 


 強い。 





 でも、揺らぎは生まれる。 





 その隙を逃さない。 


 蹴りを叩き込む。 





 壁に叩きつけられる音。 


 舞い上がる砂。 





 夜が、また静かになる。 





 ダイアが、膝をつく。 


 血が、ひとしずく、闇に落ちる。 





 オレは、ゆっくり近づく。 





 携帯を構えれば、終わる。 


 終わらせられる。 





 ダイアが、顔を上げる。 





 恐怖はない。 


 ただ、揺れない忠誠。 








ダイア.
 貴方は、蜘蛛よりあなたを優先する 







 静かな声。 


 息は荒いのに、芯はぶれない。 









ダイア.
 私は、団長のために動く 







 知ってる。 


 ずっと知ってた。 









シャルナーク.
 うん 







 オレは、小さく笑う。 









シャルナーク.
 だから、厄介なんだよ 







 ダイアは、続ける。 









ダイア.
 そんなことをしたところで 
ダイア.
 貴方が選ばれることは、絶対にない 







 まっすぐ。 









ダイア.
 団長が揺れるのは、あの子だけです 







 残酷なくらい。 









ダイア.
 またあなたの心を動かせるのも 
ダイア.
 団長だけ 







 胸の奥が、ちくりと痛む。 





 図星だから、笑うしかない。 









シャルナーク.
 そっか 







 オレは、携帯を下ろす。 


 ダイアの目が、ほんのわずかに動く。 









ダイア.
 …私を、殺さないのですか 
シャルナーク.
 んー 







 少し考えるふりをする。 





 そして、正直に言う。 









シャルナーク.
 羨ましかったから 







 夜に落ちる、本音。 









シャルナーク.
 そこまで誰かを一番にできるの 







 ダイアは、黙る。 





 オレはしゃがみ、視線を合わせる。 


 近い距離。 





 敵同士なのに、どこか似ている。 









シャルナーク.
 でもさ 







 静かに告げる。 









シャルナーク.
 あなたは、渡さないよ 
シャルナーク.
 団長でも、あんたでも 







 ダイアの瞳が、ほんの少しだけ揺れる。 





 怒りじゃない。 


 理解。 









ダイア.
 選ぶのは、貴方ではありません 







 静かな反論。 


 強いなぁ、本当に。 





 オレは、立ち上がる。 


 道を空ける。 









シャルナーク.
 行きなよ 







 軽く言う。 









シャルナーク.
 どうせ団長のとこ行くんでしょ? 



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