第36話

第二十九話 前編
46
2024/04/28 12:39
⚠️注意⚠️
めっちゃ長いです。
あと、長かったんで前編みたいな感じです










何が起こったのかがわからなかった。


足元には血が小さな水たまりを作っており、パンジーは完全に力が抜けていた。
クーフェ
もうやめなよ、パンジー。
全部僕が元凶なんだ。マルフォイは悪くない。
僕とパンジーの間には輝きをなくした宝石のような表情をしたクーフェがナイフを手で掴んでいた。


きっと足元にある血はクーフェのものに違いない。

痛々しい光景に周りは騒然とした。
クーフェ
僕がマルフォイに干渉しすぎたのがいけなかったんだろ?



優しく語りかけるクーフェ。パンジーは壊れたおもちゃのように急に泣き出した。

顔を覆い、大量の涙を流し、その涙は指の間から滴り落ち、ドレスに着地していた。


緊急な事態に気付いた先生たちが生徒をかき分けやってくる。


クーフェは存在を消すかのように華麗に人ごみを通り過ぎてゆき、どこかへ行ってしまった。
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薄暗い夜の中、夜空よりも暗い木々を掻き分け、ドレスについていたであろう、飾りを頼りにクーフェを探した。






_クーフェ視点_




僕は逃げ出すようにダンスパーティー会場から逃げ出した。

後ろから聞こえてきた僕を呼ぶ声を無視して、

道中、数々の枝に引き留められたけどそれをも無視して森の奥まで行った。


そこには綺麗な湖があって、空に浮かぶ月の光を反射させていた。





そしてその湖は僕のドレス姿も映し出した。
クーフェ
あーあ…これじゃ台無しだ…


周りに誰もいないのに、顔が勝手に笑顔になる。


全て僕が招いたことなのに、


クーフェ
辛いなぁ…


目から涙がたくさん出てくる。



僕はただ…
クーフェ
僕は…ただ…ただっ……



みんなのような


笑顔になって


時には言い争って、



たまに喧嘩する。



クーフェ
“普通“を望んでただけなのに…


情けなく泣き叫ぶ声が森に

湖に響き渡る。


クーフェ
畜生っ!畜生ぅっ!!……


手の傷の痛みすらも気にもとめず。


僕は手を強く握りしめて


何度も何度も

地面に叩きつけた。
クーフェ
うわぁぁぁぁぁ……
クーフェ
ぼくだってっ…僕だってっ……
クーフェ
僕だってもうげんかいなんだよぉっ!!…


空に向かって大きな声で叫んだ。


我慢なんてものがもうできない。


もういっそのこと目の前の湖に沈んで溺れてしまいたい思いだった。



クーフェ
もう……いいや…


ゆっくりと立ち上がって、湖を背にして僕はゆっくりと後ろへ倒れていく。


この数年間。マルフォイに対する想いを隠して、我慢して、あの人のために分霊箱を僕の手元に保管していた。



あの人の信頼をとると同時に、僕の計画を進めた。


でももうそんなことをしなくていい。


自分を偽らなくてもいい。





ゆっくり目を閉じようとしたら、目の前の木々が騒がしく動いていた。
マルフォイ
クーフェ!!!
クーフェ
っ!…
マルフォイが木々の中から飛び込んできて、僕はマルフォイ諸共湖に飛び込んでしまった。


さっきまで騒がしかった音が消えた。

マルフォイは僕を優しく包み込み、強く抱きしめていた。


冷たい水の中だけれども、確かに感じるマルフォイの温もり。
クーフェ
(あぁ……僕は…)



クーフェ
(ずっと……これを………)



僕は

強くマルフォイをだきしめた。






_マルフォイ視点_
ドラコ・マルフォイ
ゲホっ…ゲホ…っはぁ…はぁ…
クーフェの後を追って、様子を見ていたら唐突にこちらを向きゆっくりと湖の中に入ろうとしていた。


ドラコ・マルフォイ
クーフェ!!
気付いた頃には後先考えずにクーフェと共に、湖の中に入った。


湖の中は冷たかったけれど、久しぶりにふれれた喜びはそんな冷たさも忘れさせれてくれた。


少しの間、抱きしめた後に僕はクーフェと一緒に湖をでた。


ドレスやタキシードに水が含んでいて、とても重かった。


湖から上がるのに苦戦はしたけど、クーフェが無事でよかった。






ドラコ・マルフォイ
ク、クーフェ…だ、大丈夫か?…
クーフェ
…んで……なんで……
クーフェ
なんで…僕を……助けたのさ…

クーフェは顔を合わせてくれなかった。

そりゃそうだ、あんなことがあったのだから合わせたくもないだろう。
ドラコ・マルフォイ
……人を助けるのに、理由が必要なのか?
クーフェ
君は何かしら利益やメリットがないと助けないだろ…
ドラコ・マルフォイ
それは前のことだ。
今は違う。
ドラコ・マルフォイ
クーフェを助けたくて。
ただそれだけだ。
僕がそういうと、ゆっくり顔を上げた。
クーフェ
僕を助けたくて?…
それは僕は君にとって一番だとでも言いたいの?


僕の好意に気づかれてしまったんじゃないかと一瞬思ったがそうではないらしかった。
クーフェ
それなら君の一番身近にいるパンジーを助けてもよかったんじゃないか!
なんでこの僕なんだ!
パンジーは君の婚約者なんだろ?!
顔を上げて僕に叫ぶクーフェの顔には大量の涙が流れていた。
クーフェ
もう僕の心を乱さないでくれ!
もう僕は君と距離を置かないと、心が苦しくて苦しくて仕方がないんだ!…
クーフェ
マルフォイは僕の心をどれほど苦しめれば気が済む?!
僕は諦めたいんだよ!
もう付き合えないんだって分かってるから!!
泣き叫びながら綺麗にまとまっていた髪型を乱し始めた。


クーフェの髪には赤黒くなったものと泥のようなものがベッタリとくっついており、


両手は離さないという意志を見せるかのように髪の毛を強く握りしめていた。
ドラコ・マルフォイ
お、おい…クーフェ…それ以上したら髪型が……
クーフェ
触んな!!!
肩に手を添えようとしたらとてつもない反射で避けられてしまった。


そしてわんわんと泣き叫び続けながら、


もう辛いだの、好きだっただの、パンジーに刺されたのがどれほど痛かったのだの、


未練があるだの、なんで助けたんだだの。


聞いているだけで、こちらからも言いたいことが山ほどあるというのに。



クーフェ
もうやだぁぁぁ……
挙げ句の果てには僕の胸で泣く始末。


こっちだって、泣きたいのに。
ドラコ・マルフォイ
…もう言いたいことは済んだか?
クーフェ
……大好きだったよ…マルフォイ…
そう言ってから、静かになった。

今聞こえるのは鼻水を啜りながら呼吸するクーフェの音と、


小さく聞こえる風の靡く音。


ドラコ・マルフォイ
…今夜は、月が……とても綺麗だな…



僕の胸で泣くクーフェの頭を撫でながらそう呟いた。


きっと本当は、こんな言葉はパンジーにかけるはずのもの。



クーフェ
……あのさ、マルフォイ。
少し落ち着いた声で、僕の名前を呼んだ。
ドラコ・マルフォイ
どうした、クーフェ。
クーフェ
もし、僕の計画が終わったら、君に全てのことを話して、君の報酬も決めさせてあげるよ。
ドラコ・マルフォイ
どうした急に。
変なことを言って。
クーフェ
もう少しで、僕の計画願いも、終わりそうなんだよね



少し嬉しいようで、どことなく寂しい。


さっきのセリフをスルーされたからか?


ドラコ・マルフォイ
そうか、いいことじゃないか。
クーフェ
それまで、マルフォイは僕が守る。
だから、この鍵…持っていて欲しいんだ。
そう言ってどす黒い紐と、その紐にかかった鍵を渡してきた。


首にかけると、その鍵は、熱くなり、首周りにタトゥーのようになっていた。
ドラコ・マルフォイ
これは…呪いか?
クーフェ
お守りと言って欲しいな…
クーフェ
そのお守りは、計画が終わったら消えるから。
それまで、あの返事はお預けなのと、それまでパンジーを見ておくこと。
ドラコ・マルフォイ
っ!それってつまり…!
クーフェ
期待はしないで欲しい…どうなるか、分からないからさ…
ドラコ・マルフォイ
……わかった、守るよ。
でも、最後に、一つだけ。



ドラコ・マルフォイ
僕と、踊ってくれませんか?



クーフェ
え、ええっ?!


クーフェは僕の言葉を聞いてとても驚いていた。

そりゃ無理もない。

今のお互いの服装は水に濡れたりところどころ破れていたりしていたからだ。
クーフェ
僕たち、こんなに汚れたりぬれたりしてるんだよ?…
ドラコ・マルフォイ
いいじゃないか、こんなこと、もう2度もないぞ?
クーフェ
そりゃないでしょうねぇ…こんな格好でダンスだなんて…
ドラコ・マルフォイ
しかも舞台は月が照らす湖だ。
クーフェ
僕達、ホウキもなし移動やって…


戸惑うクーフェを横目に懐に入れておいた杖を取り出し、湖に向かって呪文を唱えた。
ドラコ・マルフォイ
グレイシアス
杖の先らか冷たい空気が出てきて、これを湖の水面に当てるとみるみるうちに氷が張っていった。

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