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第1話

旅路へ
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2025/01/02 08:46 更新
魔王を討伐して数日が経った今日も、街中が、いや、世界中が、宴を楽しんでいた。
あなたの一人称(俺、私など)は、宿屋の一室で風に吹かれながら宴に踊る街を眺めていた。
 
頭によぎるのは、腕の中で死んでいった父のこと。
アリアハンの家であなたの一人称(俺、私など)の帰りを待ち望んでいるであろう、母のこと。
そして、大魔王ゾーマが死に際に言った言葉。
 
『光あるかぎり 闇もまたある………』
『ふたたび何者かが 闇から現れよう………。すでに その兆しは 生まれている………』
 
あなたの一人称(俺、私など)はこれから、どうすればいいのだろう。
旅の果てにやっと出会えた家族を亡くし、唯一の家族が待っている家に帰る術はない。
新たな闇を退けようにも、それが何なのか、どこにあるのかもわからない。
あなたの一人称(俺、私など)に残っているものは、言いようがないほどの喪失感。
 
世界は平和になってしまった。
あなたの一人称(俺、私など)だけを残して。
 
あなた
………ふっ
 
自然と溢れでた笑みは乾いていた。
諦めの笑みだった。
 
たとえばもし。
家に帰ることができたとしても。
母に合わせる顔は、あなたの一人称(俺、私など)にはないではないか。
死んだはずの父と出会えたのに、あと一歩のところで助けられなかったのだから。
たった一人の人間すら守れなかったあなたの一人称(俺、私など)に、ロトと名乗る資格も、家に帰る資格もない。
 
あなた
帰れなくてよかったんだ
 
そう思うと胸が少しだけすくようなきがした。
同時に、あなたの一人称(俺、私など)の心の中で決心がついた。
纏っていた防具を外し、持っていた武器や道具の整理をする。
全ての物を整理し終わった時、ある物が目に入った。
 
父親であるオルトガの兜。
 
最後まであなたの一人称(俺、私など)を守ってくれた、唯一の形見。
あなたの一人称(俺、私など)は兜に手を伸ばし、そっと胸に抱いた。
 
あなた
……………
 
父の旅路とあなたの一人称(俺、私など)の旅路が詰まった兜は、少しだけ温かいような気がした。
 
 
宿屋を後にしたあなたの一人称(俺、私など)は、最後にとある人物の元へと歩いていた。
すると、
 
ラダトーム城の老人
あなた・ロト様!
 
突然、後ろから声をかけられた。
 
ラダトーム城の老人
何をしているのですか?
この宴はあなたが主役。あなた様がいなければ盛り上がりませんよ!
 
声の主は、ラダトーム城の地下の老人だった。
 
あなた
ああ、ちょうどよかった。
あなたに渡したいものがあったんです
 
あなたの一人称(俺、私など)はたいようの石を老人に手渡した。
 
ラダトーム城の老人
これは……たいようの石!
このようなものを、なぜ私に?
 
老人は不思議そうに尋ねた。
 
あなた
あなたの一人称(俺、私など)にはもう必要のない物なので。
次にこれを必要とする者が現れるときまで、預かっていて欲しいのです
 
そう伝えると、老人は何かを悟ったように軽い服を着ているあなたの一人称(俺、私など)を見た。
 
ラダトーム城の老人
また、旅に出るのですか?
 
全てを理解したような老人の目に、少し困ってしまった。
 
あなた
そんなたいそうなものではないですよ。
あてのない旅です
 
あなた
これまでの旅路を巡ってみようと思うのです。
あなたの一人称(俺、私など)の父の旅路を
 
世界は平和になってしまったから。
あなたの一人称(俺、私など)だけを残して。
 
ラダトーム城の老人
そうですか……どうか、ご無事で
 
老人は、やはり全てを理解したように頷いた。
 
あなた
ありがとうございます。
ああ、それからもう一つ。
あなた
このことは、みんなには内緒にしておいてください。お願いします
 
その言葉を最後に、あなたの一人称(俺、私など)は宴の音楽が鳴り響く街に背を向けて再び歩き出した。
 
心地良い風が、役目を終えた背中を押すように吹いていた。

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