薄暗い部屋に突き刺さった細い光。
椅子に置かれたカバン。
昨日充電器に刺しておいたスマホ。
時間を見ると、6月13日6時15分だった。
あれが夢だったことに安堵して、ゆっくり体を起こす。
相変わらずギシギシ鳴るベッドから降りて伸びをする。
顔を洗いに洗面台に向かった。
…やっぱり疲れてるのかなぁ。
浮遊感、取れないなぁ。
でも仕事を休むわけにはいかないから。
スーツを着てサッと化粧を済ませる。
髪を適当に束ねて、朝ごはんのパンを焼く。
その間に洗濯機を回して掃除機もかけておいた。
パンを皿に乗せて机に置く。
パンを食べながら右ポケットに手を突っ込む。
スマホを取り出して今日のスケジュールを確認した。
ちらっと時間を見ると、ちょっとギリギリ。
慌ててパンをインスタントスープで流し込んで、バタバタとお皿をキッチンに持っていく。
歯を磨いてカバンを掴み、玄関まで走った。
鍵をかけて急いで階段を駆け降りる。
そのまま小走りで大通りまで出てきた。
信号は赤だった。
青になるのを待っている間にスマホで時間を確認する。
…間に合うけど一応急いで行こう。
そう思いながらスマホをまた右ポケットにしまう。
目の端に、見覚えのある小さな人影が映った。
青い長袖のセーターに黄色いボールの男の子。
男の子は走り出そうとしていた。
まだ信号は赤なのに。
私は反射的に男の子の腕を掴んだ。
男の子はびっくりして私の顔を見た。
くりくりした目で私を見つめる男の子はキョトンとしていた。
その瞬間、男の子のすぐ後ろを黒い車が通り過ぎた。
男の子はまたびっくりして私に抱きついてきた。
私はものすごく安堵して男の子の頭を撫でた。
男の子は少し怯えていたけれど、小さな声で、
「お姉ちゃん、ありがとう」
って言ってくれた。
と言えば、男の子は元気よく
「うん!」
なんて言う。
可愛いなぁ、なんて思いながら頭を撫でていた。
ドンッ
いつの間にか青になっていた信号。
横断歩道を渡っていた、灰色の長袖のセーターを着たお爺さんが、
シルバーの小さいワゴン車にぶつかって、アスファルトに打ちつけられた。
お爺さんの唸り声と、慌てて駆け寄る運転手の男性の声がずっと遠くに聞こえた。











編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!