渋谷区上空。
機械達が現れ、既に30分が経過していた。
謎の化け物の襲来、その衝撃は世界中に広がってしまった。
あるストリーマーの配信によって、渋谷の現状を見るや否や、ある一人の発言によって、今回の惨劇の名前が決まってしまった。
___ 光の混沌。
光を自称する者達により起こされた、秩序の名の下の制裁。
この混沌をコスモスと呼ばず、なんと表現する?
やがて、この機械達は渋谷区を拠点に他の大陸にも上陸、そして侵略していくのだろう。
宗教の押し付け合い、まるで現在の人類達の戦争に混ざった気でいるかのような奴等に、世界中は困惑と悲鳴をあげざるを得ない。
しかし、一人のストリーマーは指差して絶叫した。
それは、悲劇物語にいる登場人物の叫びではない。
悲劇の中の一筋の希望。
彼は叫んだ。
「なあ!!なあッ!!」
画面の前の視聴者に、必死に呼びかけた。
「見えるか!?見えるよな!!アイツが!!」
アイツ、に指をさして、涙を流し絶叫し続けるストリーマー。
「すげえよ!!すげえ!!もう何体もぶちのめしてる!!」
涙ながら叫んで、現状を伝える彼に視聴者も息を呑んでその異様な光景を見守った。
スクランブル交差点、その付近で暴れ回る一人の男。
長い棒の様な、槍と表現すべきかそれとも刀と表現すべきか、ストリーマーには必死に日本と関連付けようと頑張ったがどれも違っていた。
サラリーマンが着るような、黒いスーツを身に纏い、特に特徴が見当たらない、強いて挙げるなら目の下のクマがちょっと濃い成人男性がいた。
その男は、長い棒をひたすら振り回して、機械を何度もスクラップにしていた。
この異常な光景に、視聴者は彼の名前を求めるコメントで画面を、コメント欄を埋め尽くした。
ストリーマーは大声で叫ぶ。
「アイツの名前!?そんな野暮なこと聞くんじゃねえ!!
ヒーロー!!メシア!!それ以外に何があるってんだ!?」
この地獄に一人。
立ち向かい、抗う男の名前を、ヒーローであると。
一筋の希望であるメシアであると。
それ以上の表現を求めるのなら、それはもうゴッドとかの領域だろう。
彼の姿はそれくらい、とても心強い。
ストリーマーが配信を続ける中、英雄的な男が急に振り返り、ストリーマー達に急接近した。
「ヒーロー!!ヒーロー!!ジャパニーズサムライ!!」
それだけ吐き捨て、英雄的な男はその場から去った。
ストリーマー達が落ち着いて辺りを見渡すと、先程まで暴れていた機械達は周辺にバラバラとなって散っていた。
「すげえ!!すげえよ!!」
ストリーマー達は興奮して、その場で発狂したり、踊ったりと狂乱した。
彼等の気持ちがわかる画面の前の視聴者達も、同様にコメントで大盛り上がり。
しかし、その様子をみていたほかの機械達に、バクッと頭を噛み砕かれてしまった……。
__だから言ったのに……。
英雄的な男は、遠くから様子を眺めていた。
助けようと思えば助けれた。
しかし、辞めた。
あれでは、助けた後も視聴数稼ぎに危険な場所に突っ込んで、死んでしまう。
だから、助けるならここで逃げたくても逃げれない人間達。
英雄的な男は、素早く動きながら、機械たちを叩きのめして移動を続ける。
同時に、まだ生きている人間の救助も行った。
瓦礫の山に埋もれている者、燃える火の中に取り残された者、手足がちぎれ逃げるのが困難な者も、とりあえず自力で避難所に向かえるだけの手当と指示を施した。
そして、気掛かりな現象を目の当たりにした。
極めて不愉快な見た目をした機械、既に同機体を潰した英雄的な男はその機械の足下に何か転がっているのを見つけた。
タックル、そして、持っていたモノで機械を強引に潰した。
急いで、足下に転がる二人の少年少女の元へと駆け寄った。
一人、少年の方は息がまだある、しかし何かを狼狽えながら必死に手を伸ばしている。
手を伸ばす方向に、もう一人、少女の方は既に息絶えていた。
少女の方はというと、こちらも少年の方に手を伸ばすような仕草のまま、死んでしまっている。
随分と胸糞悪いものを見せられた英雄的な男は、心の中で毒づきながら、そっと二人の瞼を閉じた。
こんな小さな被害者が、まだいるかもしれない、そしてこれから出るかもしれない。
そう考えた英雄的な男は、急ぎ次の現場へと向かおうとした。
その時。
光。
黒い、どす黒い、光の柱。
少年の腹に、一筋の黒く光る柱が、降り注いだ。
やがて、一筋の柱は二つ、三つと増幅していく。
幾千の光の柱が、一斉に少年に集中するという異様な光景に英雄的な男は興味本位で見ていた。
と、それだけ呟き、柱が収まるのを待った。
少年の身体にどんどん差し込んでいく黒い光の柱は、どんどん黒さを増していく。
そして……。
ドクンッ。
少年の身体が急にビグンッとうねった。
__あれ……。
何が起こっている?
俺は、寝ている?いや、死んでる?
ん……?
未来は自分の身に起こっている状況に、困惑した。
自分はつい先ほど、あの化け物達に頭を潰されて、この世を去ったはずだ。
それが、未だに視界はそのまま、意識もある。
しかし、身体を支配していた痛みは、今は全然感じない。
これが死後の世界とやらだろうか?
全ての感覚が遮断されて、現実世界に残留し続ける、幽霊という奴になったのだろうか?
未来が考えている間、耳に響いた謎の声にハッとした。
__なんの力を望む。
__なんの?
未来は思わず聞き返した。
自分がいま死後の世界について考えてる時に、いきなり何の力が欲しいのか聞いてくる謎の声に、少し苛立ちを覚えてしまった未来は、強く言い返した。
__力、力なんて今更望んだところでッ。
__例え、他者を救う力が与えられても、か?
__……。
謎の声が言う、力。
それは、他者を救うまでの力与えられるのだと、そう言いたげだ。
しかし、救った所でどうになる。
救いたかった生命は、今目の前で尽きた。
自分の力を過信した、愚か者の末路によく似合う罰だ。
未来は自分を責める事しか出来ない、そんな自分にまた苛立ちを覚えた。
__そんな力とか、与えられた所で。
__逃げるのか?
__……あ?
謎の声は、未来を煽った。
__責任を感じ、そしてそれから逃れ、放棄し、自己満足に罪を受け入れるのか?
__……。
謎の声の問いに、未来は否定しようとした。
だが、心と頭が、それを否定した。
今ここで、自分も死んで、幽霊か魂になったルクシアと再会して、それでまたお互い笑えるだろうか?
あの化け物たちにせめて一太刀でも浴びせる程の強さが自分にあれば、もしかしたら運命は変わっていたのでは?
力の正体はどうあれ、謎の声の言う通り、ここで力を受け取らなければ、自分が終わってしまう。
未来は直感でそんな気がした。
__なんの力がほしい。
__なんの、ね。
そんなの決まっている。
今度こそ、目の前の人間くらい、救えるぐらいの力が欲しい。
それが、強大なパワーを持ったとしても、治癒する能力を授かったとしても、時間を巻き戻しても、どんなに遠くにいても手が届いて、とにかく異形な能力がこの身に宿ったとしても。
同じ状況にまたなってしまっても、今度は絶対に守る。
__俺の好きな人間を守れる、力。
__よろしい。
__ならば、汝に、我々の力を託そう。
__忘れるな。
__与えるのではない。『託す』のだ。
__この力は他の秩序の為の力に非ず。
__他者が作りし秩序は幻想である、光も同義。
__己の定めた秩序に向き合え、人の子よ。











編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。