第3話

3話 この声を等しく届ける
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2025/09/30 15:25 更新
上空約9000メートル。
この時期の東京都の空は、曇がやや高い。

入道雲の中に現れた、一つの黒い影。

その日のフライトプランに、今の時間帯は自分が操縦する航空機以外はこの辺りを飛ばないはずだ。

当時の操縦士はこう述べた。

「最初は、某国の非公式のジェット機かと思ったんですよ、最近日本うちのトップは海外に取り込まれてしまったばかりなので……」

操縦士はそう言うと、近くに置いてあった写真を取り出し、目の前へと持ってきた。
会話の中に出てきた、某国の非公式のジェット機……の正面からの写真だろうか?
隅の方に、赤い文字で『ノースロップ・グラマン B-2』と『B2』の文字が記されていた。

「スピリットです。赤いので書かれてるのは詳細な名前です。形がそれに似ていたので、自分はてっきりこれだと思ってまして……」

仮にこの飛行機がスピリットであるなら、とんでもなく非常識である。
秘密裏で何か動いてたのか、それでもほかの飛行機が飛んでる時間帯と同時とはなんとも危険か。

「自分はとりあえず、航空管理局に通報して、右旋回しました」

操縦士は息を呑んで、続けた。

「で、ちょっと瞬きした瞬間、消えてました」

消えた。
聞けば、スピリットらしき飛行物体は唐突に姿を消していたというのだ。
あり得ない。
大きな航空機がいきなり姿を消すほどの瞬間移動をしたというのだろうか?

「入道雲の中だったんで、レーダーとかがいかれて下に落ちたのかなって思って下の方も見たんですけど……」

首を横に振り、その可能性も無くなった。

「で、気味が悪いなって……一応報告書の方にこの事を記載して、今回のことは忘れようかなと思ってました……あんな事が起こらなければ」




上空約1000メートル

健常な人の視力で、視認出来るほどの距離。

スクランブル交差点で歩いていた歩行者達の一部は、『それ』を確認して立ち止まってしまった。

丸い鉛。
『それ』を表現するのにちょうどよく、鉄の色の丸い物体が空に現れた。

「なんだあれでけー」
「でっかい風船か? 」
「なんだあれUFO!? すっげー」

『それ』の出現に、皆驚きを隠せない。
この異常事態に逃げたり、騒いだりしないのは今の時代の技術力が関係しているのか、皆何かの広告なのかと興味深い視線を向けていた。

しかし、『それ』はそんな生易しい物ではない。


パカリ。


『それ』から亀裂が生まれ、中から人型の何かがゆっくりと姿を現した。

頭には、人間の腕が人間の腕を掴んで出来た輪っかがある。
身体は鉄で出来たような色をしていて、関節部分が異様に黒い。

『それ』から現れた人型の何かは、ゆっくりと体勢を変えた。

ゆっくりと、地の方へ足を向けて、堂々とした態度を見せた。

そして、人々の脳に語りかけてきた。



__我々の声は、神の声と等しく尊厳である。




穏やかで、威厳のある、そんな声が人々の脳内に響いた。
言語の壁を越え、言語を持つ人々に平等に流れたのだ。




__この星は我々の所有に属し、人類もまた我々の管轄下にある。ゆえに、我々の命に従うことを求め、逆らうことは決して許さぬ。




『それ』から現れた人型の何かは、地球を包み込むように手を広げ、続けて人々の脳内に介入してきた。




__我々がもたらす秩序に異を唱える者、または我々に危害を加える者、すなわち反逆者は、厳正なる抹殺の対象となる。ゆえに、慎重に振る舞うべし。




__されど、汝らは穢れに染まりし者ゆえ、神の御前にて清められ、厳正に抹殺されるであろう。




そう言うと、包みこんだ手を急に突き放すかのように、人類の前へと置いた。



__これは我々の秩序に基づく神の選別の儀式である。人類よ、謹んで受け入れなさい。




午後15時。

東京都上空に現れた『それ』は、圧縮し続けた。
ギュッ、ギュギュギュと異様な音を発しながら、小さく鳴り続けた。

そして……破裂した。

爆音と共に弾けた『それ』の中からは、無数の巨大な機械達が東京都に降り注いだ。

巨大な機械達は、着地地点に人が居ようが関係なしに踏み潰し、着地の反動と同時に周りのビルを破壊した。

地鳴りが響き、人々はようやく事態の重さに気がついた。

避難をしようとその場から走るが、一足先に着地した巨大な機械達がそれを阻止した。

バババババババ……と薬莢を弾け飛ばしながら、逃げ惑う人々に発砲して蜂の巣にした。

人種も、年齢も、性別も、関係なく皆等しく屠っていく。

度重なる悲鳴と、辺り一面に広がる血。

『それ』から現れたら人型は、その光景を眺め、そして彼方遠くへと視線を動かした。

まるで、次の目的は海の向こうだと言わんばかりに。

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