Ryo side
朝の教室は、やたらうるさかった。
ドアを開けた瞬間、目に入ったのはあなた。
女友達と笑ってる。
昨日のことなんてなかったみたいに。
……ちゃう。
ほんまは、りょうの言葉で笑うあなたが見たいんや。
机に向かいながら、カバンの中のノートを確かめる。
昨日、あなたが忘れてったやつ。
返さなあかん。
でも、タイミングがない。
休み時間、昼前、昼休み。
どれも、声が喉で止まる。
昼休み。
今しかない。
振り向いた顔は、少しだけよそよそしい。
短い。
それだけで、胸がちくっとした。
言いかけた瞬間、あなたが先に口を開いた。
心臓を、ぎゅっと掴まれたみたいになった。
思わず声が出る。
目を逸らしながら、続けた。
___しまった。
顔を上げたら、あなたがぽかんとしてる。
すぐに、照れたように笑った。
その一言で、全部に気づいた。
言うてもうたやん、本人に
あなたが、わざと意地悪に聞いてくる。
もう、逃げられへん。
息を吸って、吐いて。
一瞬の沈黙。
くすっと笑われる。
……頭が、真っ白になった。
放課後。
気づいたら、手を繋いで歩いてた。
笑い声が、夕方に溶けた。
今度はちゃんと。
言葉で、守る。

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編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!