かつて、この世界には四人の聖女がいた。
グステコ聖王国聖女。
ヴォラキア帝国聖女。
カララギ都市国家聖女。
そして、ルグニカ王国聖女。
聖女が王族や民を導き、王族と民は聖女を守り、崇めてきた。聖女さえいれば世界は安寧だと、聖女さえいれば国は繁栄すると、聖女さえいれば──
人々は、聖女に幻想を抱いていたのだ。
そしてそれは、世界に災厄が降りかかってきた時でさえ消えることはなく、その結果、世界は三人の聖女を失うことになってしまった。
人々は待った。
聖女が再びこの地に降り立ち、国を世界を導いてくれると。だが、何度願っても、その望みが叶うことはなく、最後の希望─ルグニカ王国第二聖女がほどなくして、崩御なされた。
それから、何百年と聖女がいない時代が続いた。
人々は願う。
もう一度、聖女様を我が国に─
何百年、何十年と時が経ち、そして遂に、ある国の聖女が生誕した。
ルグニカ王国第三聖女
あなた・ハイリヒ・ルグニカ
世界でたった一人の聖女様であり、ルグニカ王国唯一の王族の生き残り。
そして、私達の世界一可愛いお姫様。
─────
──
日の光が長い回廊を照らし、小鳥のさえずりがどこからともなく聞こえてくる。
今日もいい天気ですね。
新米侍女が一人、ご主人様である少女の朝食の支度をしていた。
彼女はとても美味しそうに食事をなさるから、見ていてとっても楽しいのよね。
眼をキラキラさせて、美味しい、美味しいと言う彼女の姿を思い出し、思わずにやけてしまう。
さてと、可愛いお姫様のためにさっさと終わらせないと。
出来立ての料理を机に並べようとした瞬間、勢いよく扉が開いた。扉の所にいたのは、鬼の形相をした侍女長のリズさんで、彼女は部屋の中を見渡した後、私の方を向いて一言。
「あなた様を見ませんでしたか?」
「見ていませんけど……」
あ、これかなり怒ってる。
リズさんはあなた様の専属侍女であり、王城の中にいる侍女達の長だ。侍女達の中では彼女に憧れを抱いている人も多くいる。勿論、私もその一人。
優しく、真面目な人であるリズさんが、こうも分かりやすく怒りをだしているときは、必ずあなた様が何か問題を起こした時だ。
「あの、どうされましたか?」
「……」
「?…リズさん?」
「あなた様が…いなかったんです。」
「えっ」
「今朝、お部屋の方に伺ったのですが、もぬけの殻で…」
あなた様がお部屋にいない…
お部屋にいない…
いない…
「えええええええ?!!」
その後すぐに剣聖ラインハルトが王城に呼び出された。
その頃、ルグニカ王国のアーラム村近くの森では、深くフードを被った一人の少女と純白の外皮と青く鋭い双眸をもつ地竜がいた。
「よしよし、いい子だね。」
少女が優しく地竜の頭を撫でると、地竜はそんな少女に頭を擦り付け、嬉しそうに鳴く。
そんな地竜の様子に少女は顔を綻ばせ、可愛い、可愛いと地竜を可愛がる。
そんななんとも微笑ましい二人の光景をある一人の男がどこか落ち着きのない様子で見ていた。
男の名をナツキ・スバルと言う。
「なぁ、あなた」
「なぁに?」
「お前がここに居るのって、みんな知ってんだよな…?」
おそるおそるスバルはあなたに聞く。
お願いだから、知ってると言ってくれ。
淡い期待を抱くスバルだが、世の中は残酷だ。
少女は一言、知らないよ。とスバルに告げた。
「あ、そうですか…」
その瞬間、スバルは考えることを放棄した。
そして、未だ地竜と楽しそうに戯れあっている少女を見て、一言
「今日は平和だなぁ。」
この後、すぐにラインハルトがスバル達の元に来た。
──────
──
あなた・ハイリヒ・ルグニカ
ルグニカ王国第三聖女であり、王族。
世界最後の聖女。
緩くウェーブのかかった薄いラベンダーピンク髪の絶世の美少女で、紫がかったルビーのような赤い瞳を持っている。
純白色の地竜
あなたの地竜
あなたがとある理由で旅をしていた時に出会った
走るのがとにかく速い。












編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!