「え、俺に?」
涼太は驚きに目を瞬かせた。
バイト仲間の一人、優斗が真剣な顔で頷く。
「うん。ずっと前から、宮舘のことが気になってた」
シフト終わりの夜、カフェの裏口で突然の告白を受けた。
まさか自分が好意を向けられているとは思わず、涼太は戸惑う。
「えっと……」
「今すぐ答えを出してほしいわけじゃない。でも、俺と付き合うこと、考えてみてほしい」
そう言って、優斗は穏やかに微笑んだ。
悪い人じゃない。
けど――。
「ごめん、俺、そういうの考えたことなくて……」
「そっか。でも、もし気持ちが変わることがあったら教えて」
「……うん」
優斗が去り、一人になった涼太はため息をついた。
驚きと申し訳なさと、そして――心のどこかで浮かぶ“ある顔”。
(……翔太なら、こういうとき、どうするんだろ)
考えた瞬間、自分が無意識に渡辺翔太のことを思い浮かべたことに気づく。
(なんで……俺、翔太のこと……?)
胸の奥がざわついた。
***
翌日、バイトが終わる頃にちょうど渡辺がカフェに現れた。
「おつかれ」と軽く声をかけ、当然のように隣を歩く。
「……なあ、涼太」
「ん?」
「お前、誰かに告られた?」
「……っ」
驚いて足を止めると、渡辺はじっとこちらを見つめていた。
「……なんで、そんなこと聞くの?」
涼太は思わず問い返した。
渡辺の目が鋭く光る。
「バイト仲間の男、お前に妙に馴れ馴れしかった。……それに、昨日の顔」
「昨日の顔?」
「なんか、考え込んでたろ。わかんねぇと思ってんの?」
鋭い指摘に、涼太は言葉を詰まらせた。
翔太には、隠し事なんてできない。
「……うん、告白された」
渡辺の眉がピクリと動く。
「……それで?」
「断ったよ」
「……そうか」
渡辺は短く答えたが、その声は低く、不機嫌さを隠しきれていなかった。
「別に、そこまで深く考えたわけじゃなくて……。ただ驚いたっていうか……」
「……」
渡辺の足が止まる。
涼太もつられて立ち止まると、次の瞬間、ぐっと腕を引かれた。
「……なあ、そんなの認められるわけねぇだろ」
「……え?」
渡辺の顔が、すぐ目の前にある。
夜の街灯に照らされたその表情は、普段よりも険しく、そしてどこか必死だった。
「お前が誰かに告られるのとか……想像したくねぇんだよ」
「翔太……?」
渡辺は少し顔を背けるようにしながら、低く続けた。
「……俺以外のやつに、お前を好きになる資格ねぇよ」
その言葉が、じわりと胸の奥に染み込んでいく。
何かを誤魔化すように、渡辺はすぐに手を離した。
「……悪ぃ、忘れろ」
「翔太……」
胸が妙に高鳴る。
それは、優斗に告白されたときにはなかった感覚だった。
(……これって、なんなんだろう)
自分の中のこの感情が何なのか、涼太はまだはっきりとはわからなかった。
***
その夜、渡辺は一人で酒を煽っていた。
「……なんだよ、俺」
涼太が告白されたと聞いた瞬間、心臓を掴まれたような感覚がした。
もし涼太が他の誰かを選んでいたら?
――考えたくもねぇ。
(……やっぱ、俺……)
気づきたくない気持ちに気づいてしまいそうで、
渡辺は無理やり酒を流し込んだ












編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。