今日も夜の街を歩く。
いつもの学校終わり、高専の敷地を出て、辺りをうろついてみる。
そして、こうして今日もアイツを探す。
―― っ…また会えるよね…? ――
最後に別れるときに、彼女が入った言葉…。
今でもそのときの風景と抑揚、匂いまでもが鮮明に蘇ってくる。
しゃらり…とポケットの中で、アイツの渡してきたブレスレットが鳴った。
見上げてみると、夜空には満点の星空が広がっている。
よく言われるよな、空は世界中と繋がってるって。
…俺もあの星を辿っていけば、夜の闇に沈む…遥か向こうの、アイツの街まで行けるのか…?
もしもいつか、またアイツと会えたら…________
……そんときは傑にも硝子にも、誰にも内緒で、あの場所に連れて行こう。
2人だけの世界で、あなたの下の名前の手を引いて。
あなたの名字 あなたの下の名前
――――――――――――――――――――――――
今日のお出かけ、楽しみ!
――――――――――――――――――――――――
あなたの下の名前との初めての2人キリでのお出かけの日。
朝にそんなメールが送られてきたことがあった。
…可愛すぎんだろ…////
毎日学校で会うあなたの下の名前、ついこの前までバカなことやって一緒に笑ってたあなたの下の名前。
…でも、今日は違う。
ミンミン…とセミが鳴く真夏の季節。
俺は乗っていた電車の中から流れてゆく外の景色を眺めた。
…今日のあなたの下の名前はいつものあなたの下の名前とは違う。
俺があなたの下の名前のことを「好きだ」と認識して、初めてのお出かけだ。
あなたの下の名前が俺の「好きな人」になって初めて過ごす1日。
昨日とは違う今日、その間を列車が走っていた。
そう思って、携帯を開き、さっきあなたの下の名前から送られてきたメールに返信を打ち込む。
五条 悟
――――――――――――――――――――――――
俺も
――――――――――――――――――――――――
送信ボタンを押したところで、パタリと携帯を閉じる。
そして再び、電車の外の風景に目を傾けていた。
…あなたの下の名前、どんな格好してくるんだろ……
窓の外の景色はいつもと同じはずなのに、なぜか見慣れない景色のように眼に映る。
俺は胸騒ぎする心臓を抑えきれずに、何度もチラチラと集合の時間に遅れないかと、時計を眺めていた…_______
今思えば、そんな日もあった。
あれは確か10年前…?
あっという間の出来事すぎて、僕自身、実感が湧かない。
向こうから「五条先生…!」と僕を呼ぶ声が聞こえる。
……あなたの下の名前、今頃、何してるんだろう…。
今日こそきっと会える、今日こそ絶対に見つけてやる…______
―― …悟、――
―― …会いたいよ…… ――
僕が高専に生徒として通ってたころの街を、また今日も歩く。
そして突然、聞こえてきた、アイツの声…______
僕は声のした路地裏へ足を早める。
…そこには三角座りをして顔をうずめている、あなたの下の名前がいた。
呪力も術式も、何もかも「あなたの下の名前だ」と六眼が訴える。
僕はポンポン…と彼女の肩を叩いた。
あの日から指折り数えて、この夜を待ってたんだ…_______
見上げた夜空に浮かぶ月だけが、僕らの「星合」を知っている。
悟との「初デート」の日、私は「五条くん」からのメールの返信を見て、電車の中で1人赤面していた。
五条 悟
――――――――――――――――――――――――
俺も
――――――――――――――――――――――――
「楽しみ」だなんて、ただ私の一方的な気持ちだと思ってた。
けれどどうしても彼に伝えたくて、そう、送ってしまったのだ。
…その返信が、コレ……
胸がドキドキして止まらなかった。
…っこれから五条くんと会うだなんて…心臓がバクバクしすぎて張り裂けちゃいそうだよっ…!
行きは別々に待ち合わせで良かったぁ…///
シューっと息を噴いて、列車が止まる。
…ここが待ち合わせの駅…
もう五条くんは来てる…のかな?
私、変なところとかない?スカートの裾も折り曲がってない?髪も崩れてない…?
少しキョロキョロと辺りを見渡して、駅のホームに降り立つ。
ふわっと、夏草の匂いが風で舞う。
私はスウッと胸いっぱいにその匂いを吸い込んで、小走りで向かった…______
駅のホームに五条くんは見つからなかったけれど、駅の室内に入ると、すぐ入口の待合室で五条くんは私を待っていた。
五条くんは少し耳を赤く染めて、そう呼びかけた。
悟とあの日、お別れした日から何日経っても私の脳裏には、悟との鮮明な記憶が蔓延っていた。
―― どこにあなたの下の名前が行こうが、俺が見つけ出してやるよ! ――
はにかむ悟の笑顔が、まぶたの裏に映し出される。
…会いたい。
その思いが交差して、きゅっと涙が溢れた。
…そして、うつむいていた私に、ポンポンと優しく肩を叩く、君が現れたんだ…_______
悟に手を引っ張られながら、夜の街を駆ける。
―― 試してみる? ――
悟は本当に存在した、本当に生きてた。
…会いたかった、ずっと、ずっと、ずっとずっと、会いたかった。
なのにさっき、悟の手に触れた瞬間、山ほどあった話したかった事が全部飛んでいってしまった。
……けれど、言葉は要らない。
ぎゅっと悟が、私の手首を強く握る。
…2人の高鳴る鼓動が、変わらない気持ちを、伝えてくれたから…______
「東京って、朝焼けも綺麗なんだね!」と、僕より10歳ほど年下のあなたの下の名前がはしゃぐ。
僕がそう返すと、あなたの下の名前は嬉しそうにふふっと笑った。
…少しだけ、怖い。
またあの日みたいに、夜が明けてしまったらあなたの下の名前は跡形もなく消えちゃうんじゃないかって…
きれいな灰になって、宇宙に舞っていくんじゃないかって…
また僕らは「はなればなれ」になっちゃいそうで…_______
「悟、」とあなたの下の名前が僕を呼ぶ。
あなたの下の名前は僕を見るなり、少し目を泳がせた。
…どうしたんだろ…?
そして、似合わない寂しげな表情で話す。
「…夜が明けて朝が来たらさ、また私たち、はなればなれになっちゃわないかな…?」
「私ね、悪い夢を見たの。…悟と2度と会えなくなっちゃう夢。」
「……だから、少しだけ怖い。」
「…今のこの瞬間が夢なんじゃないかって…怖い。」
…あなたの下の名前はどんな夢を見ていたんだろう。
僕と「2度と会えなくなっちゃう」夢…______
一体そのとき僕は何をしていたんだろう、どうなっていたんだろう…?
あなたの下の名前は全く、それについて深く語ろうとはしない。
ただただ寂しい目をして、東京の街が赤く染まってゆくのを眺めている。
…その変わらぬ尊さに、僕は思わず、あなたの下の名前の手を取った。
しゃらりとあなたの下の名前の手首で、青いブレスレットが音を鳴らす。
あなたの下の名前は少し驚いた表情で僕の方を見た。
…世界が僕とあなたの下の名前の2人をどんなに引き離そうとしたって……
どんなに遠くて、どんなに暗いところにあなたの下の名前を隠されたって……
僕とあなたの下の名前の「会いたい」っていう気持ちが重なれば、きっと導いてくれる。
あなたの下の名前に呪われたままの俺が、必ず見つける。
……あの時みた、星空の星の河を渡って、きっと、何度でも。
僕は、今にも泣いてしまいそうな表情をするあなたの下の名前の頬をそっと撫でた。
あなたの下の名前は何か言いたげだったけれど、何も言わなかった。
……悪い夢のことかな…?
もしかしたらその夢の世界では、僕は、死んでいたのかもしれない。
術師なら、いくら最強の僕だって、ありえないことはない。
…まぁ、僕が負けることはないだろうけど。
でも、もしそうだったなら、あなたの下の名前は…_______
俺はぎゅっともう一度、あなたの下の名前の手を握り直した。
そう言うのが精一杯だった。
もしあなたの下の名前の見た悪夢が本当に「五条悟の死」だとしたら、またあなたの下の名前は僕たちを助けるために張り切る…。
そしてそれに僕たちは気づかないまま、あなたの下の名前を苦しめる。
―― これ以上…、私を苦しめないで…ッ!! ――
―― …っ私、本当は「転生者」なの…! ――
―― ……信じて、くれないよね…? ――
あの時の俺のように…________
……でも、本当にもし、あなたの下の名前が僕たちを助けるために動いたら…?
僕はまた、人生をやり直せる…。
…なら何度だって助けてほしい。
何度だってやり直してもいい。
何度生まれ変わっても、あなたの下の名前を見つけ出してやる。
あなたの下の名前が笑顔で過ごしている、そんな未来が待っているのなら、何度だって…_______
もう2度と、あなたの下の名前を傷つけるようなことはしない。
__…きっと、この見上げた夜空に浮かぶ月だけが、僕らの真実を知っている。
呪術をかけた、僕たち2人の「星合」を…________
星に願い事をするとしたら、何を願おう…?
……今、そう聞かれれば、すぐに答えられる。
隣で手を握る、君の幸せを願うよ…_______
遠くで俺の名前を何度も呼ぶ声が聞こえる。
ぼやぁっとした世界がだんだんとハッキリとした輪郭を帯びてゆく……
…今のは、夢…か?
…どうやらココは教室のようだ。
3つ並んだ椅子と机が、少しバラッと傾いている。
俺の名前を呼んでいたのはどうやら硝子だったらしい。
そう言うと、硝子がはぁっと大きなため息をついた。
…だって仕方ないだろ。
今さっき見えた夢の破片の中に、あなたの下の名前がいたんだから…。
今もポケットを動かすと、しゃらっとアイツのブレスレットの音がする。
そう言って硝子は、教室の扉の前で、学ランみたいな制服を着た1年の伊地知が何やらモゾモゾとこちらの様子を伺っている。
…俺に用?……あぁ、前のあの件か…。
俺は椅子を引いて、立ち上がった。
教室に並んだ机…そこに去年まであった、4つ目の机の影はない。
あなたの下の名前は今頃、何してるのかな…?
俺はそんなことを考えながら、呼ばれていた方へと足を進めた。
窓から差し込む光の粒が、誰もいない椅子にこぼれた。
僕があなたの下の名前と出会うのは、まだ、先のお話…_______
おわり
「ホシアイ」より曲パロ書かせていただきました…!
⇧の動画は夢瑠莉が1番好きな「ホシアイ」のカバーです🎶
個人的にこの方たちの歌うホシアイと夢瑠莉の中のホシアイが解釈一致で…✨
良かったら聴いてみてくださいね⭐
「ツンデレ生五条」の本編連載は続編に続く!となっておりますが、こんな感じでたま〜に曲パロとか、番外編とか、更新できたらいいなと思っております((o(´∀`)o))
曲パロに関しては、かなり本編の文章も歌詞と擦り合わせてこだわっていますので笑…歌詞の意がどこに含まれてるのかな〜とか考察してもらえたら超嬉しいッッッ!!!
そして!⇧こちら「夢瑠莉はるのとーくるーむ」最新チャプターにて「ツンデレ生五条ありがとう会」を公開しております✨
「ツンデレ生五条」を通して仲良くなった方、スポットライトや交換宣伝してくださった方……さらには夢瑠莉の認知している読者さんへ一言メッセージや、続編のストーリーがチラ見せされていて、少しだけ読めるとか…??!
認知様に関しては全く話したことのない方も含まれていたり??笑
気になるって方はぜひぜひチェックしてみてくださいねっ!
曲パロ・番外編については月曜日更新(不定期)です!把握よろしくお願いいたします!
When you wish upon a star, make no difference who you are .☆.。.:*・゚
どうか今日もよい1日を!
夢瑠莉はる
















編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!