その次の日には、ついに法律の改案を決定する会議が、朝早くから始まっていた。
ホテルに始めから置いてあったカレンダーを見ると、7月25日を表記している。
「落ち着きないな」
部屋の中でソワソワしていると、その様子をずっと見ていたホープから指摘されてしまう。
私はホープの座っているベッドに乗りかかると、四つん這いになりながら体を前に乗り出す。
「だ…だって今日が決定の日ですよ!?こんな何百年もの歴史が変わる瞬間…
…ましてや、私に直接関係することです!落ち着けるわけないじゃないですか!」
「おう、一旦その体勢やめようか」
私の言葉を全部無視し、自分の体勢に釘を刺されたのが気に入らず、頬を膨らませる。
だが、ホープの言うことはキチンと聞き、四つん這いではなく正座に体勢を直した。
「ユキはもう少し警戒心を持った方がいいと思うぞ。そのままじゃ、法律が無くなっても不安だ」
「任せてください。人生経験から、人に対する警戒心は人一倍強いので!」
「はぁ……」
警戒心は以前から人一倍高いと自負していたので、胸を叩きながら声を上げたのだが、どうやらホープにはあまり響かなかったようだ。
大きなため息を長くついたホープは、その後警戒心に対する言及はせず、別の話題へと移っていった。
「…で、クロが結果を伝えに来てくれるんだっけか?」
「あ、はい。もうそろそろ決定する時間と聞いてるので、あと1時間もしない内に来るとは思いますが…」
時計を見ると、時刻は3時を示している。
予定ではこの時間に終わると聞いているので、多少長引いても、4時までにはこちらに来るだろう。
そう思っていたのだが。
「……………来ない」
4時を過ぎ、もう間もなく5時半になろうとしている頃。
私はずっと部屋の扉の前で待っていたのだが、一向にクロが来る気配は無い。
何かあったんだろうか、と心配になっていると、スマホを弄っていたホープがこちらに駆け寄ってきた。
「ロビーで待ってみるか?」
ホープの言葉に頷くと、彼は手を繋いで私を導くように部屋の外に出た。
ロビーに向かってる最中、ホープは手を離す素振りを全く見せず、恐らく着くまでこのままでいるつもりなのだろう。
「子供じゃないのに…」
思わずそう呟くも、彼の耳には届いてないようだった。
ロビーに到着すると、私は空いている椅子を探した。
だが、体は未だにホープに引っ張られ続け、ロビーを過ぎ去り反対側にある廊下へと向かっていってしまう。
その違和感に気づいた瞬間、私は声を上げた。
「ホープ?そっちは集まりのある人が行く会場のはずでは?
ロビーはさっきのところですよ」
私がそう言っても、ホープはこちらを見向きもしないし、声も発さない。
段々と恐怖心が募っていき、目の前の人は本当にホープなのかと疑いすらかけてしまう。
やがて、大きな扉の前まで来ると、ホープは突然足を止めた。
「着いたぞ」
やっとの事で放たれた声は、短い一言だけだった。
「いや……ですから、私たちはロビーに行くって…!」
私は必死になって言葉を繋いだが、彼の耳にはもう私の声など届かないようだ。
ドアノブに手をかけると、重厚感のある扉が開かれる。
私が何かしてしまったのか。
どこかで怒らせるようなことをしてしまったのか。
そうグルグルと自分の過去の行動を思い返しながら、私はホープに背中を押されるままに、扉の中へと入っていった。












編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。