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第1話

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35
2023/03/15 09:13
新作です。
毎回春にちなんだ短編あげていきます。
今回は不思議な感じをイメージして作りました。

注意
主に文才はありませんので、何だこれ?と思うような描写があると思います。
それでも良い方はどうぞ
暖かい春の日差し

ふんわりとした光に当てられて姿が見える。

どこまでも深い真っ暗な空間に、ひっそりと佇む大木のような色の髪に

吸い込まれそうになるほど魅了されてしまう濃い紫の瞳

肌は雪のように白く、最早死んでいるのではないかと錯覚してしまう程だ。

だが、愛しい君は立っている。
あの日と同じように桜の木の下で。
あの日と同じ服を着て。
少し眠たそうにして、愛しい君は立っている。
それもそのはず、今は午前二時。
皆が寝静まり、春の冷気だけが外を徘徊している。
指の先がほんのり赤く色付き、その手を合わせて息を吹きかける姿はとても妖艶でつい見惚れてしまう。

早くむこうに行って抱きしめてあげたい。

そう考えたら俺の足は前へと進んだ。

呼吸が荒くなり、額に汗がつたう。

手に持っていた荷物を投げ出し、全力で走る。

土埃がまい、裾には小さい砂利がくっつく。

でも、そんなことはどうでもいい。
愛しい君がいる場所が俺の帰る場所。
愛しい君が待ってくれているからここに帰ってくる。
色褪せた日常を一瞬で鮮やかに輝かせてくれる。
俺は君がいなければ生きていけない。
こんな退屈な日々を君無しで過ごすのは無理だ。
あの笑顔がなければ俺は生きていけない。

走っていると、ポツ…ポツ…と雫が空から零れてくる。

段々と近付いてくる桜と君は今にも消えてしまいそうなくらい薄かった。

そんな君を力強く、けれど優しく。二度と離さないように抱きしめる。

今はどんな顔をしているのだろうか…

笑っているのだろうか?

泣いているのだろうか?

怒っているのだろうか?

呆れているのだろうか?

何でも良い。

どんな顔をしていても俺は君の全てが好きだ。

君の表情が。

君の感情が。

君の仕草が。

俺の目に焼き付いている。

今まで過ごしていた日々が

とても鮮明に。

俺が抱きしめていると、そっと優しく手を添えてくれた

か細くて温かい愛しい君の手。

俺は自然と涙が溢れた。

情けない声を出して。

それでも君は何も言わずに

ただ抱きしめてくれた。

解説的なもの


戦争へ行っていた主人公視点です。
主人公には病弱な彼女がいましたが、戦争へ行っている途中に息を引き取りました。
そんな彼女は、最後にどうしても主人公と会いたくて戦争へ行く前に主人公と約束した懐かしい思い出の地で何年も待ち続けていました。
(約束の地⇨桜の木の下)
そして、彼女の死を知らされた主人公は信じられぬまま帰国します。大丈夫だ。きっと大丈夫だと信じて帰ってきます。
そして遂に桜の木の下で再開します。
その時実感したのは生きている頃と変わらない体温。表情。仕草。
そこで主人公は悟ってしまいます。
こんなにも生きているようにみえる彼女はもういないのだと。
死んでしまっているのだと。
長年いた主人公は一瞬で分かってしまったのでしょう。
それから二人は朝になるまで抱き合っていましたとさ
『約束したでしょう



   私はずっとここで貴方を待っていると…』

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