第9話

桜の枯れる
449
2024/04/30 10:00
しばらく泣いた蘭は、ちょっと恥ずかしそうに俺から離れた。
らん
……偉琉眞、ありがと
いるま
ん……
ふと蘭を見ると、体がさっきよりも透けていた。
いるま
蘭、お前それ……
らん
うん……ごめん、タイムリミット
いるま
っ……
嫌だ。
嫌だ嫌だ。
らん
……偉琉眞、最後に、これだけ言いたい
いるま
なん、だよ
声が上ずる。
蘭は俺の目を覗き込むと、優しく笑った。
らん
俺、偉琉眞のこと大好き
いるま
らん
生まれた時からずっと一緒で、優しくてカッコいい偉琉眞が大好きだよ
いるま
……それ、は
どっちの意味で……?
その言葉は、蘭の声で遮られた。
らん
……みんな
四人が振り返る。
らん
ごめん、もうお別れだ
四人とも、息を呑んだ。
らん
本当に最期になるかもだからさ……伝えたいこと、言うね
蘭は涙を拭う。
らん
那都
なつ
ん……
らん
胡紗芽
こさめ
っ……蘭君っ
らん
澄知
すち
らんらん……
らん
御殊
みこと
らん、らんっ……
らん
最後に、偉琉眞
いるま
……
らん
俺は、みんなと出会えて、仲良くなれて幸せだった。こんな最高の仲間は他にいないよ
鼻を啜る音が響く。
らん
言いたいことはたくさんあるけど、これが一番伝えたい
らん
“ありがとう、みんな”
桜よりも綺麗な、涙でぐちゃぐちゃな顔が笑う。
ずっと見たかった笑顔。
見慣れていて……それでいて、大好きな笑顔だ。
桜の花びらが舞い上がる。
目を開けたときには___。





もう、蘭はいなかった。




































___一年後。
いるま
……来たぞ、馬鹿野郎
墓石に水をかけ、隣に座る。
いるま
なぁ、あれはどっちの意味だったんだよ
そう言っても、答える声はない。
らん
『大好き』
いるま
………はぁ
いるま
………俺も大好きだよ
ふふっ、と、笑う声が聞こえた。
___気がした。
馬鹿野郎。
本当に馬鹿野郎。
それでも、たった一人の親友で幼馴染だ。
満開の桜の下で、桜の木を見上げる。
また逢えるかなんてわからない。
いるま
……蘭
また、逢いたいよ。
らん
“偉琉眞”
静かに振り返る。
いるま
……何が最期だ馬鹿野郎
























やっぱり___。





























お前が大好きだ。
春咲く今日に君は亡く 完

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