昼食時。ふと立ち寄ったレストランで料理が運ばれるまで待っていると、蓮が開口一番言った。
あなたはあれからずっと乗り物には乗らないで、俺とチビ達の帰りを出口で待っているのだが、俺とチビ達が帰ってくるたびに、あなたに声をかける男が後を絶たなかった。
あなたの言葉に、俺含めチビ達3人が深くため息を吐いた。
こういう時、兄ちゃんが居たら「お前は頭が花畑だなー♡」と一笑しつつも、すぐに「いいから、お前は俺の横に居ろ」と言って耐えず自分の隣に居させたに違いないと思った。
そういうことで俺は久しぶりにあなたと二人っきりの時間を過ごせることになった。
チビ達は次々にあれに乗りたい、これに乗りたい、あの場所に行きたい、この場所に行きたいと言い、俺とあなたはその後ろ姿を追いかけるように歩く。
傍から見たら俺とあなたは夫婦で、目の前を歩くチビ達が子供だと思われてるんだろうな。
悪くない。今だけ夫婦のフリをしたって罰はあたらないだろう。
それにしても俺ががっちりあなたの腰に手を回して密着しているのに、男の視線が絶えないのがむかつく。
この公の場でディープキスをして、あなたが俺の女ということを馬鹿な男どもに分からせてやりたかったが、何日か前にはっきりと「ごめん」と言われているので、それもしにくい。
ふと通りがかった男が隣で笑っているあなたを見つめていたので、俺はわざと大きな咳をして、それから男にガンを飛ばした。
ガンを飛ばされた男は気まずそうに俺を見て、即座に隣に居る彼女の顔へと視線をずらした。
女が居るのにあなたに見惚れる気持ちはよく分かる。それほど、あなたは可愛いし、綺麗だ。
兄ちゃんが家の外から出したくないと常々言っている理由がよく分かる。
蓮がそういうと、葵と百合は嬉々として喜んだ。
あなたはやっと家族みんなで楽しられるアトラクションに楽しみで仕方がないといった顔をした。
タートルトークは、亀のクラッシュが客の質問になんでも答えてくれるというバラエティに富んだアトラクションで、お笑い好きのあなたはこれが好きだった。
家族みんなで列に並び、クラッシュが居る場所に家族横一列に並び、少し待つと目の前のスクリーンにクラッシュがこちらに向かって泳いできた。
客「「「「「おぉ~!!」」」」」
クラッシュが一人目の男にはウミガメの挨拶の仕方を伝授し、二人目の親子連れをあてて、3人目の若い学生の子に「大好物なものは何か?」を聞き、最後に「俺に質問があるやつはヒレを挙げてくれ」と言った。
チビ達がピシッと天まで届くように手を挙げるのと同様の他の子どもも、ましてや大人も手を挙げていた。
一人目の質問は「愛ってなんですか?」
突拍子のない質問に、会場がどっと笑いが押し寄せる。俺も馬鹿らしいと思って吹き出した。
クラッシュの回答に観客がまた笑う。でも、それだけじゃないのがクラッシュだ。
会場が「おぉ~~~!!」と感動の拍手で溢れる。
俺もおぉ~と感銘の声が出た。
そうだよな。愛なんてみんな違う形で良い。俺があなたを想っていることも、一つの愛の形だ。
クラッシュは続けた。
客「「「「「おぉ~~~!!!!!」」」」」
次の質問は、「ありがとうという言葉以上に言える言葉はないか?」
あっけらかんとした回答に、また会場が笑いに包まれる。
「「「「「おぉ~~~!!!!」」」」」
確かに言葉なんて、一つの道具に過ぎない。
大切なのはいつだって自分の心だ。
俺は視線を前からずらして、隣に座っているあなたを顔を見る。
あなたは瞳をキラキラさせて、まるで子供のように笑っていた。
最後の質問になると、いよいよ子供たちが声を張って「はい!はい!!」「クラッシュ!こっち!」「私質問あります!!」と叫んだ。
蓮にそう言われて俺とあなたは勢いよく手を挙げた。
すると、クラッシュが「おっ元気がいい大人を発見したぞ!」と言い、「一番奥の左側に座っている、そこの大人!白いワカメを頭につけてるやつ~」とあなたを指名した。
クラッシュはあなたの名前を聞く。
客「「「「(笑)」」」」」」」
会場が穏やかな笑い声で溢れる。
チビ達が次々にあなたにお願いをした。
客「「「「「(笑)」」」」」
クラッシュにそういわれて、暗闇の中でもあなたが顔を赤くするのがよく分かった。
客「「「「おぉ~~~!」」」」
















編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。