前の話
一覧へ
⚠️諸注意
「あの夏が飽和する。」 曲パロ
・明るいケイトはいません
・死ネタ
・キャラ崩壊してるかも
・トレイがちょっと自己中…?
・多分誰も報われてない
・若干のメタ要素あり
・いくつか捏造設定あり
・7章を読み終わった後に読むことをお勧めします
大きなカプ要素はありません。
♦️→(←←←←←←←←)♣️
的な関係だと思っておいてください。
賢者の島・ナイトレイブンカレッジ
トレイの部屋にて
ただ、震えながらそう言った。
梅雨時だというのに、傘もささず外出したのだろう。
ずぶ濡れのまま、タオルをかぶって
ドロドロのメイクもそのままに泣きながらベッドに座っていた。
夏は始まったばかり。それなのに、
ケイトは、酷く震えていた。
トレイの問いかけに、彼はしっかり答えてくれた。
そう言い終わって、トレイは言った。
カバンには、財布、ナイフ、携帯ゲームに新品の歯ブラシ。
それと、寮服で飾られた2人の写真。
たくさんのものが詰め込まれた。
トレイはそう言って、写真、日記、いつかのオフ会でファンに貰った時計。たくさんのものを壊した。
ゴミ袋はどんどん大きく膨らんだ。
ケイトのマジカメアカウントも消そうとしたが、
流石にそれはやめさせた。
代わりに、他の人と写っている写真や自分ががっつり写っている投稿は削除した。
ケイトは、いつもからは考えられない暗い顔で、そうつぶやいた。そして、顔を上げて苦笑いを浮かべた。
2人だけの、逃避行だ。
そして彼らは逃げ出した。
外出届も出さず、誰にも何も言わずに、狭い学園から飛び出して行った。
ケーキ屋を今も営んでいるトレイの母も、
仲良くしてくれたカリムやリリアにジェイドも、
RSAでのびのび暮らしているチェーニャも。
何もかも、捨てた。
トレイは、優しくケイトの手を握った。
その時はもう、寮を出る前の震えもなくなっていた。
誰にも見られず、誰にも縛られない。
そんな空間で、2人の影は線路の上で背を伸ばした。
落としてしまったトレイの予備用メガネも、
額から溢れてスートのマークを濁す汗も、
彼らにはもう関係ない。
そうやって、ケイトは汚れた顔で笑った。
3年生になってすぐ出会ったエーデュースコンビみたいな、明るくて面白くて、みんなに好かれるような性格の人間だったら自分も好かれたのか?
「パリピで明るい寮長の左腕」じゃなくて、「ケイト・ダイヤモンド」として。
「頼れる優しい寮長の右腕」じゃなくて、「トレイ・クローバー」として。
寮生たちは自分達のことを慕ってくれていたのか?
そんな事を、何度考えたことか。
しかし、もうどうやったって叶わない。
寮を出る前だってそんなの夢のまた夢である。
それからも、2人で歩き続けた。
蝉が騒いで眠れなかった夜も、
水が尽きて相手の顔が歪んで見えたあの日も、
万引きをしてしまったせいで怒られ、追いかけまわされたあの日も。
2人で乗り越えてきた。
何週間目かの夜、森の奥で2人で暖をとっているとき、ケイトはごそごそと鞄を漁り出した。
突然の言葉に、トレイは困惑するしかなかった。
だがしかし、ケイトが首にナイフを当てた瞬間、全てを悟った。
赤い鮮血が、飛び散った。
もう、遅かった。
ペンキを塗ったばかり薔薇のような艶のある赤が、地面を潤し、そして汚していく。
そこには、赤い服を身に纏うケイトが横たわっていた。
シャツの色は、柄じゃなかった。全てが血液だった。
トレイは、視界がくらくらした。まるで、白昼夢を見ているよう。
ケイトは、原型を留めていないスートと共に眠った。
トレイは気付くと、灰色の壁に囲まれていた。
警察署だった。
彼の隣に、ケイトはいなかった。
ケイトだけが、その空間から除外されていた。
存在が、なくなっていた。
見開かれたトレイの瞳からは、ぼたぼたと涙がこぼれ落ちた。
トレイは、ケイトのことが好きだった。
1年生の頃から仲良くしてくれて、一緒にマジカメにも映った。
しかし、
勘違いだったのだ。
ケイトは、皆に同じことをしていた。
皆に話しかけ、仲良くして、マジカメを撮った。
だから、マジカメアカウントはたくさんの写真で溢れていた。
トレイの独り言は、無機質な壁に吸い込まれていった。
そして、時は過ぎた。
ケイトが死んでからも、学園生活は続いた。
トレイは、職務放棄をしたから、と平寮生にされた。
今のハーツラビュル寮には「パリピで明るい寮長の左腕」も、「頼れる優しい寮長の右腕」もいない。
そこには、ただ、仕事を放棄した3年生のクローバー兵だけがいた。
トレイの元にはまだケーキを作り続けている家族も、
RSAで小人と遊ぶ幼馴染のチェーニャも、
トレイこっぴどく叱ったとはいえやはり心配しているリドル寮長もいる。
ケイトだけが、日常から姿を消した。
ケイトがゴーストとして出てくることもなかった。
ダイヤモンドの兵が、1人減った。周りの人からすれば、それだけだった。
〜♣️side〜
俺があれからケイトのことを考えない日はなかった。
目の前で散った飛沫と全て割り切った顔のケイト。
あの景色は、今も脳裏にこびりついて離れない。
4年生になり色々な企業に行くことになった。
忙しい研修の時間も、よくあの日を思い出す。
ずっと、ケイトのいつもの笑顔と最期の笑顔が頭の中をぐるぐるしている。
俺の頭の中はとっくに飽和してしまっている。
ケイトがゴーストとして現れない。
この世に未練はない、ということなのか?
未練があるのは、俺だけなのか?
お前は、ケイトは、本当は別の言葉が欲しかったんだろう?
ケイトは悪くない。
それに、誰も悪くない。だから、
もういいよ、投げ出してしまおう。
全部、俺が薔薇で上書きしてやるから。
投げ出してしまおう。ここまでよく頑張ったな。
そんな言葉をかけて欲しかったんだろう?
俺は1つくしゃみをして、ジャケットを羽織って外へ出た。
後書き
こんにちは。初めまして。凪月と申します。
見てくださった方、ありがとうございます。
初作品が死ネタ&曲パロの3000文字越え作品になるとは思いませんでした。
3日ぐらいかかりましたね。
こんな感じで気が向いたときに思いついたものを永遠に書き連ねていくタイプで、チェーニャとかフロイド並に気分屋な私ですが、更新されたときに「こいつが投稿なんて珍しー、見てみよ」みたいなノリで見てくれるととても嬉しいです。
特別文才があるわけでもなく、若干のキャラ崩壊をさせてしまう私ですが、末長くよろしくお願いいたします…。
カンザキイオリさんは個人的に好きな方なのでまた曲パロが上がるかもしれないですね。
曲パロは「曲」という軸があるので書きやすいんですよねぇ。
まあ、曲パロでも普通にシチュエーションでもリクエストがありましたらコメントにでも書いてください。
ちょっと自我を出し過ぎました。作者の自我がダメなタイプな人、ごめんなさい。
今回だけは許してください。
流石に私の話を聞くのも飽きたと思うので、この辺りで終わらせましょう。
では、さようなら。また、何処かのチャプターで会いましょう。
毎回後書きを書くわけではないと思うので。














編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。