第8話

本当の自分
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2026/02/15 00:55 更新









生徒会長という立場は、思っているより楽だ。
求められている答えを出せばいい。
笑うタイミングも、引くタイミングも分かる。




「ハンビン、これ確認お願いします」



「会長、今日のスピーチ案です」



Hanbin「うん、あとで見る」





自然な声、自然な笑顔。

完璧……のはずだった。










































昼休み。
廊下の向こうで、書記が友達と話しているのが見える。
――普通の顔。
夜に見る顔とは、少し違う。




Hanbin「……」




目が合う前に、視線を逸らした。
昨日、言われた言葉が頭に残っている。




『会長じゃなかった……ハンビン』




あのとき、少しだけ呼吸が乱れた。




Hanbin「……やばいな」




小さく呟く。
副会長が横から覗き込む。




「何が?」



Hanbin「いや、なんでもないㅎ」




即答。

































放課後。
生徒会室に書記が入ってくる。




「お疲れさまです」



Hanbin「お疲れ」




声が、少し低くなるのを自覚する。
――近づきすぎない。
そう決めたのに。




Hanbin「今日、ここ直した?」



「うん」



Hanbin「ありがとう」




資料を受け取るとき、ほんの少しだけ距離が近い。
触れていないのに、触れたみたいな感覚が残る。




Hanbin「……」



「なに?」



Hanbin「いや」




言いかけて、飲み込む――昼は抑える。
自分で決めたこと。

































夜。
路地。
街灯の下で、壁にもたれる。




Hanbin「……来るかな」




スマホを見る。

時間は、だいたいいつも通り。


姿が見えた瞬間、無意識に肩の力が抜ける。




Hanbin「遅かったね」



「バイト長引いたの、」



Hanbin「お疲れ」




自然に言える。
学校では言えない声。



























少し並んで歩く。




Hanbin「今日さ」



「うん」



Hanbin「昼、目合ったよね」



「……合った」



Hanbin「逸らされた」



「……」



Hanbin「俺も逸らしたけどさ、ㅎ」




小さく笑う。




「なんで?」



Hanbin「……分かってるくせに」




立ち止まる。




Hanbin「昼に夜のこと思い出すとさ距離、バグる」



「……」



Hanbin「会長でいなきゃいけないのに」




視線が合う。




Hanbin「俺になる」





静かな告白みたいだった。




「……それ、嫌?」



Hanbin「嫌だったら、ここ来てない」











少し風が強くなる。




Hanbin「なあ」



「なに」



Hanbin「俺、昼は抑えるって言ったけど」



「うん」



Hanbin「夜は、抑えない」



「……」



Hanbin「それでも、いい?」




その問いは、前より少しだけ踏み込んでいた。




「……いいよ」




答えを聞いた瞬間、ほんの少しだけ目が揺れる。




Hanbin「……ありがと」




距離は、まだ触れない程度。
でも確実に、前より近い。




Hanbin「秘密、やめる気ないから」



「……知ってる」



Hanbin「そっかㅎ」




小さく笑う。
生徒会長の顔は、今はどこにもない。
いるのは、境界線の内側に立っているハンビンだけだった。









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