さとみくんとの対人戦を終えた私は、まだあのふわふわした感覚に囚われていた。
正直自分でもどうやって動いたか覚えていない。
みんながこちらにやってくる。
みんなが口々に驚きの言葉を漏らす。
なーくんは少し考える素振りを見せ、私の目を見て口を開いた。
私を見る目は真剣で、どこか恐怖を感じた。
なーくんから感じる良くない雰囲気。
みんなもそれを感じとったようで、珍しく怖いものを見た後のような目をしている。
体術も出来、銃もナイフも使えるオールラウンダー。
そんな圧倒的差があるなーくんと私では勝てっこないけど、本当の暗殺だと思って。
これからの任務だって、私より強くて手強いターゲットも居るかもしれない。
ジェルくんの始めの合図で、私は相手の出方を待つ。
しかしそれはなーくんも同じのようで、数秒2人とも動かない。
ずっと相手の出方を待っていても仕方がない。
水鉄砲とナイフ両方を手に持ち、ナイフで攻撃するように見せかけて水鉄砲を撃つ。
勿論それはなーくんに読まれている。
──体力は最初よりもついてきた方だけど、それでも段々苦しくなってきた。
なーくんの持っていた水鉄砲が目の前に来て──
何が起きたのか私でさえも分からなかった。
一瞬の出来事。
死にたくない、そう思っただけ。
なーくんの首元にはプラスチック製のナイフが当たっている。
水鉄砲は私にはかかっていない。
莉犬くんが振り返る。
暗殺者の目をして。
私たちも一斉にそちらを振り返った。
そこに立っていたのは、宅配便のお兄さんを装った誰か。
みんなも一斉に本物の銃とナイフを構え、戦闘態勢に入る。
そう言って彼はポケットから白い封筒を取り出し、私に渡した。
近くに居たさとみくんが、私を庇うように私と彼の間に立ってくれる。
どさくさに紛れて手まで握られている。
こんな状況でもドキドキしちゃうんだもんなぁ。
でも安心するのも確かなんだ。
──本当に最近の私はおかしい。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。