2月14日。
朝、スケジュール表を見た瞬間、私は一回まばたきを止めた。
口ではそう言ったのに、心の中は別だった。
今日はバレンタインだ。
別に恋愛っぽくしたいわけじゃない。
ただ、デビューしてからずっと一緒に走ってるこのメンバーに、何か残したかった。
練習、移動。
帰ってきたのは日付が変わる少し前。
私が住んでいるのは、同じマンションの別室。
マネージャーオンニと一緒の部屋で、生活の動線もちゃんと分けられてる。
シャワーを浴びて髪を乾かして。
みんながそれぞれの部屋に戻ったのを見届けてから、
私はキッチンに立った。
冷蔵庫を開けると、材料が揃っていた。
昼にオンニが買っておいてくれたらしい。
作るのは難しいものじゃない。
溶かして、混ぜて、型に流して、冷やす。
でも深夜のキッチンだと、妙に大仕事みたいに感じた。
湯せんでチョコを溶かす。
甘い匂いが、静かな部屋に広がった。
同じマンション。
男子の宿舎は隣の部屋。
廊下を挟んでるだけだから、匂いって意外と漏れる。
チョコを混ぜていたら、インターホンが鳴った。
オンニがモニターを見て、ため息をつく。
オンニがドアを少しだけ開けると、そこにいたのはシンロンだった。
眠そうなのに、目だけがちゃんと起きてる。
その一言で、廊下の奥から足音が増えた。
オンニが腕を組んで言う。
そのまま男子側のリビングに、ぞろぞろ戻っていく。
まるで誘導されるみたいに。
私はトレーに材料をまとめて、廊下を渡った。
男子宿舎の“リビング”まで。
部屋には入らない。
でもリビングなら、みんながいる。
ドアを開けた瞬間、拍手みたいな音が起きた。
私は少し迷って、スプーンを渡した。
リオが隣に来て、静かに混ぜ始める。
距離が近いのに、誰も変に騒がない。
その“騒がなさ”が逆に、落ち着かなかった。
サンヒョンが手を挙げる。
型に流していく。
星、丸、四角。
トッピングを少しだけ乗せる。
私は一つずつ、なんとなく“その人っぽい”感じにした。
それを言わないのが、ちょうどいい。












編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。