第5話

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2024/04/14 00:03

「お先に失礼します!」


「お疲れ様でした〜!」



マネオンニ達の挨拶が聞こえる




3時間ほど続いた打ち上げはようやくお開きになり、私も帰宅の用意を始めた











外に出ると、涼しい空気が顔に当たった


春とはいえ、まだまだ夜は冷える


通りに人は見当たらなくて、その静けさに、先ほどまでの熱気が吸い取られていくようで心地良かった

Jihyo
Jihyo
あーー楽しかった!

スマホでタクシーを探していたオンニが、んー!と伸びをした
Tzuyu
Tzuyu
なんか、全員でこうやって集まるのも久々でしたしね

オンニにつられて頬を緩めるツウィ

我らの可愛いマンネは、相変わらずお酒に強かった

くるりと周りを見回して、眉を下げて苦笑する
Tzuyu
Tzuyu
だいぶ酔ってる人もいますけど

その視線の先には、ナヨンオンニ

ジョンヨンオンニにもたれかかって目を閉じている
Jihyo
Jihyo
オンニ笑
Mina
Mina
…楽しかったね

ぽつりとミナオンニが呟いた

Mina
Mina
まだしばらくは、こうやって集まれるかな




10年目を迎えた私達


ここ数年では個人の仕事も増えてきて、少しずつメンバーが揃う日は減っていた


寂しくないといえば嘘になる


宿舎生活だったときは、常に皆んなと一緒にいた

VLIVEで馬鹿騒ぎしたり、夜中に泣きながら語り合って、翌朝お互いの顔の酷さに笑ったり



なんでもないことで笑って、泣いて、それが幸せだった









9年もあれば、変わってしまうのはきっと当然のこと







だけど





ふとした瞬間にあの頃が懐かしくなる













____みんな、同じ気持ちなのかな












今日、珍しくお酒を一杯だけ飲んだミナオンニ


いつもは見えないオンニの本心を覗けた気がして、嬉しかった



















Jihyo
Jihyo
じゃあ私とツウィはこっちだから。
一緒に乗ってくね
Momo
Momo
はーい。お疲れー
Tzuyu
Tzuyu
お疲れ様でした


そう言って、2人は呼んでいたタクシーに乗り込んだ





先ほどのしんみりとした空気を破ったのは、まさかのナヨンオンニ。私はてっきり寝てると思っていたので、「ミナや、あんた本当に可愛い」とオンニが顔をあげたときは、もう心臓が止まるかと思った



そのナヨンオンニとミナオンニを座席に押し込んで、ジョンヨンオンニがこちらを振り返る
Jonghyun
Jonghyun
じゃあまた明日ね
Chaeyoung
Chaeyoung
お疲れ様でした〜
Dahyun
Dahyun
お疲れ様です




3人の姿を見送る





そして、その場に残されたのは私とモモオンニとチェヨンだった




…その場に。



Momo
Momo
ダヒョナ、さーたん任せていい?




今日は酔っ払いのサナオンニ




____そんな気はしてました、けど



Dahyun
Dahyun
良いですよ
Momo
Momo
ありがとな
帰りに寄らないかんところあってん
Chaeyoung
Chaeyoung
モモオンニ、途中まで一緒行きましょ
Momo
Momo
せやな、そうしよ



2人は歩いて帰るみたいだ

「ダヒョナ頼んだで〜」と言うモモオンニに、任せなさい、という意味を込めてマッチョポーズをしてみせた




遠ざかる2人にしばらく手を振って、ひとつ深呼吸をしてお店の入り口に戻った



















Dahyun
Dahyun
オンニ、帰りましょう

珍しく酔って、座り込むサナオンニ

その肩を、ぽんぽん、軽くとたたく

Dahyun
Dahyun
みんな帰っちゃいましたよ


たたくだけじゃ起きなくて、揺するような動きに変えてみる





すると、長いまつ毛がふるりと揺れて




オンニの目がゆっくりと開いた
Sana
Sana
、っん…?
Dahyun
Dahyun
おはようございます、オンニ
Sana
Sana
ぁ、だひょなやぁ…

ゆっくりと顔をあげたオンニは、酔いのせいか目が少し潤んでいた

そのまま、私を見たオンニがふにゃっと笑うから、あまりに綺麗な笑顔から目が逸らせなくなる





____ほんとに、罪な人




Dahyun
Dahyun
そうですよ、ダヒョンです
タクシー呼んでるので一緒に帰りましょう


無防備すぎるその姿に


呆れなのか諦めなのか、よくわからない気持ちを感じつつ、それがオンニにバレてしまわぬよう、小さく息を吐く


私より少し暖かいオンニの手をとり、立たせようと引っ張った





Dahyun
Dahyun
っ、!?
















Sana
Sana
…いやや。ダヒョナ、運んで、?












____これだから酔っ払いは









逆に私の手が引っ張られる




予測していなかった抵抗に体が反応できず、よろめいてしまった











うるうるとした目で見上げてくるオンニ




頬を膨らませた赤ちゃんのような表情を見て、流石国民的アイドル、なんて妙に冷静になる






でも、その瞳の奥は艶めいていて






かすかに挑発の色を感じとれた気がして、この人は全て分かってやっているのかも、なんて思う








私の想いも、願いも、全て。



























Dahyun
Dahyun
…オンニ、酔いすぎですよ
肩貸しますから

















ぜんぶ、気のせい














愚かな期待をのみこもうと、首を振る

















その時、ふと、さっきのミナオンニの言葉が浮かんだ











「まだしばらくは……」


















私は、こうしてオンニの側に居れるだけで良かった




仲間として、私を好きでいてくれればそれで充分だった














だけど















それすらも許されなくなるかもしれない














もし、私達の活動が落ち着くとすれば




それは私がオンニの側に居る理由がなくなるということで














そして













その日は、そんなに遠くないのかもしれない

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