すっかり逞しくなった恋人の、立ち上がったすみれ色の髪を撫で付けた。
同じ普通科だった彼は今やヒーロー科への編入を果たして、普通科の星だなんて呼ばれてる。
ずっと私だけの一番星だったのに。
つい最近、他のクラスの子から告白されてるのだって見てしまったから気が気でない。
人使がかっこいいことなんて、私だけが気付いていればそれでよかったのに。
あの体育祭から、世界に人使が見つかってしまった、そんな被害妄想すら覚えてしまう。
付き合い始めよりもかなりがっしりと筋肉のついた肌を服の上から撫でてみれば、くすぐったそうに身を捩る彼と視線が交わった。
困ったように眉尻を下げて笑うから、
胸の奥がキュンっとした。
お返し、とばかりに人使が私の脇腹をくすぐりにきて、
余計無様な悲鳴と笑い声を上げながら体を丸めた。
そのじゃれ合いはだんだん密着した触れ合いへと変わって、座ったソファの上で抱きしめ合う形になる。
人使の鼻先が私の首筋に触れて息がかかる。
卒業するまではこれ以上のことをしないって宣言されて、
早くも一年で折れそうになっている人使がかわいい。
そのうちため息とともに、ほんのり赤く染まった彼の顔が離れていく。
人使が体重をかけて、ギッとソファのスプリングが軋んだ。
一気に接近した顔に心臓が跳ねる。
唇が重なって、何度も角度を変えて吸われて舐められて。
触れるだけじゃない官能的なキスに頬が火照った。
体全体がドキドキして、ふわふわして、温かくて。
唇から全部が溶け出していきそうな感覚。
少ししてから顔が離れる。
スタスタスタ、パタン。
素早く彼が部屋を出て行って、
残された私が鏡に映る。
確かに顔は真っ赤だった。
…けど、それに負けないくらいに人使の顔だって赤くて。
テーブルの上に置き忘れられた彼の財布とケータイを見て、彼の慌てまくった内心を想像する。
財布を忘れたことに気付いて手ぶらで戻ってくる人使の気恥ずかしそうな顔を見るまで、あと数分。













編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。