病み属性のホークスのお話。
言葉が足りないとか、
忙しくて俺が帰らないだとか、
たったそれぐらいで傷ついてしまう君だから。
暫くぶりに立ち寄った彼女の家。
そこの玄関先で靴を履く俺の背後で、不安そうに揺れる空気を剛翼が感知する。
忙しいのは本当。
あいにくまだまだ隠居は遠いらしい。
振り返ると、少し乱れた着衣のままのあなたの下の名前が俺を見てた。
その首筋に置いてきた赤い痕に目を細める。
ぺろ、と舌を出すと、
彼女がかぁっと頬を染めてキスマークの上に手のひらを押し当てて隠した。
結んだ靴紐から手を離して立ち上がって、
彼女の方に体を向けて優しく抱きしめた。
彼女の不安を慰めることもせずに、
ひらひら手を振って俺は家を後にした。
「あーあ。性格わっる。」
自分の中の自分がそう悪態をついた。
ああ、そう、本当に。
少し飛んだところで口角が上がって、
暗い悦びで眉が下がって、
背筋に走るゾクゾクした痺れで飛行が邪魔される。
あの、悲しそうな、切なそうな顔。
口元を隠すために押し当てた手のひらに力がこもる。
俺のせいで掻き乱される彼女の心。
あまりの愉悦に飛んでいられなくなって、
着地したその場に転がってくすくす笑った。
俺のために傷つく君が愛しい。
俺で傷をつけて、俺が癒して、
そのあとならまた傷つけても構わない?
君の全てを俺で染めたい。
酸いも甘いも苦いも、
全て教えるのは俺が良い。
全部の感覚を、感情を、俺に繋げて、
そうすれば君は俺をいつも思い出せるでしょ。
次に会うときはどうやって悦ばせようか、傷つけようか。
そんなことを考えていたら、
「ああ、染められたのは俺の方か」なんて冷静な俺が言う。
好きだからいじめたいだなんてガキみたいなことを、
いまさらしたくなるだなんて。
置いてきた羽。
彼女にお守りで一本渡してあるそれに、あなたの下の名前の唇が触れるのが伝わってきた。













編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。