第25話

前日譚 ep.9
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2025/05/23 10:00 更新
2019──────
 
 
私は自分に自信がなかった。でもよくあるような猫背でって感じじゃないから、友達みんな聞けば驚くはず。どこに自信がないのか。見た目、ただそれだけだった。それでも控えめに言ってもモテない顔。女の子らしくない。追ってる夢のせいもあるのかもしれない。
追っている夢とはそれすなわちアイドルだった。きっかけは小さいころに妹に連れられて行った合同コン。ステージの上でキラキラ輝くあの姿を見てからは、私の夢はずぅっとアイドルだった。それから私はあこがれていた人の影響もあってラップを独学でやっていたから、アイドルになるならラップ担当かな、なんて妄想したりもした。でも現実はそんなに甘くなかった。何回かオーディションにも参加した。でも絶対に書類落ち。流石にわかってしまう。自分がアイドル向きの顔じゃないことぐらい。そんな事実から目を背けたくて最近はアイドルを見ていなかった。それが最近変わり始めて、追うようになったアイドルができた。それはある人に似てると言われ始めてからで、三つ上のミンギ先輩だった。なぜ先輩などと呼ぶか、それは私が通っていた中学の元生徒で現在新人アイドルとして活動していたからだった。最初は男に似てるなんて、と思っていたけど気づけば彼のスタイルの虜になっていた。確かに私は彼とよく似ていた。数字は違えど長身で、切れ長の三白眼をしていて、それになによりラップが好きなこと。彼がかつて通っていたダンススクールに追いかけて入所するのも遅くなかった。馬鹿にされるんじゃないかって怖くて親や妹にさえも打ち明けずにバイトでためたお金を切り崩して通った。
ダンスレッスンをこなしていく日々は今までで一番充実していたように思う。初心者として入所して基礎を一つ一つ踏んでいった。上級者クラスを見ては早く私もあそこに参加したいという思いをくすぶらせて、レッスンがない日でも家で練習した。家でも練習していれば案の定家族にはばれた。でも親も妹も肯定してくれて、心底幸せだと感じた。
そうして半年が経った頃には上級者クラスの練習に参加できるようになった。先生からもめまぐるしい成長だと告げられて、この努力の甲斐があったと思えた。
 
 
それからも夢に少しでも近づくために練習を欠かさなかった。気づけば入所一年目で驚くほどうまくなって、さすがにトップ争いには参加できないけど、何回かその争いに入り込むことぐらいはできるくらいには成長した。そんな私のもとにチャンスがやってきた。うちのダンススクールで引き抜きオーディションが行われるらしい。このような形でアイドル事務所に入所するというケースは少なくない。しかも今回はKQ Entertainmentも参加するらしい。KQ Entertainmentはミンギ先輩がいるATEEZが所属する事務所だ。もし合格したらあの憧れのミンギ先輩に会えるかもしれない。これは絶対に逃がせない好機だ。
 
 
ついにこの日が来た。このために私は日々練習を積み重ねてきたのだ。絶対にものにすると決意していつものダンススクールへと足を運んだ。
大部屋に上級者クラスの子たちが集まっていた。そこで私たちは受付をして、自分たちの順番を待った。私の順番は後ろのほうで気持ちを整える時間は充分にあった。その間スクールでできた友達とおしゃべりしながら待っていた。どこの事務所狙いか、曲は何にしたか、履歴書にはどんなことを書いたか、そんなことを話した。のんきに見えるかもしれないけれど、こうして話していたほうが緊張がまぎれる気がしたのだ。
そして私と友達の番になった。呼ばれるのは複数人で、私たちは一緒に応募して一緒に受付をしたからか順番が前後ろだったみたいだ。私と友達を含む五人で別室に入る。中には数人の大人がいて、資料をぺらぺらめくながら私たちに挨拶を返してくれた。きっとこの中にKQ Entertainmentの人がいるんだろうと思うとおさまっていた緊張が顔を出してきた。何はともあれ、あとは全力を出し切るだけだと自分の気持ちに区切りをつけて審査員に向き直った。
オーディションは目に見えた失敗はなく、手ごたえもあった。ダンスだけじゃなくラップもできることをアピールしたらかなりいい反応がもらえた。そうでしょう。このために練習していたんですよ。受かっていると信じて、その日は帰路に就いた。
 
 
 
こんにちは、ぽです。
結局これが誰か明かすことなく終わってしまいました。だいたい予想はつきそうなものですが、次回で明かす予定なので答え合わせ気分でお持ちいただければ幸いです。

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