太陽はそこそこの場所へと居座って。黎明時に染み込んでいた冷気をさんさんと暖気で上塗りしていく。
スタダス島に辿り着いた船を、清々しい朝が歓迎した。
暑くもなく、寒くもなく——これまで幾度もなく経験したはずの爽やかさが、今だけは心底ありがたい。
そそくさと皆が船を降り、島へと移っていく。
普段なら中に置いていく留守番も、船が唐突に沈む可能性があるために今回は外に置くという話になっていた。
とっとと用を済ませるつもり満々だった船長は口を尖らせていたが、二度寝の幸福と手配書のリスクとを天秤にかければ、流石に後者の方に傾いたらしい。
最早恒例となった上陸前のプチ会議も早々に締め括られ、資金を元手に早速めめんともりにLatte、みぞれ(とみぞれもん)の4名はスタダス島の中へと足を踏み入れる。
すぐそばに見える集落——あそこなら修理屋の情報も得られると思い、まずはそこを目指す事にした。
島民に聞き込みを行えば、想像以上に好感触だった。
実際に“修理屋”に直してもらったという小物を見せて貰えば、まるで作りたての頃に戻ったのではないかと思えるほどに端麗で、とても一度壊れていたものには見えない。
ここまでの腕の持ち主なら、確かに商人がそこで船の修理を勧めるのも納得だろう。
集落から少し離れた辺境の丘。
どこかこの場所とを隔てているような不思議な場所に、修理屋はひっそりと住んでいるらしい。
聞き込みで時間を取られる羽目にならずに済んだことに安堵し、4人は早速その方角へと向かう事にした。
軽い丘登りを終えて、件の建物の前までやって来た。
いざ目の前にすると、その場所は想像よりも一回りほど大きく——随分と物々しい雰囲気を感じた。
恐らく熟練の腕を持つ職人が集まって回しているのかもしれない。一応、万が一修理屋が留守だった場合を危惧していたが…
…そう思い、早速入り口のドアに手を掛ける。
そうして、甲高い音と共に開いた扉から——どこか浮世離れした光景が、目に入ってきた。
遠慮なくドタバタと音を立て入っていくみぞれもんと、止めるようにそれを追うみぞれに、扉から中を覗いて人の様子を伺うLatte…それに続いてめめんともりが中へ入っていくと、その中の様子はもっとよく見えた。
修理屋というのだから、もっと工具だらけの工房のような様相を想像していたが……例えるならば、その空間は『観測所』のように見えた。
そこかしこに散らばる紙に本、それを元はしまってたのだろう本棚。その上に工具箱が乗ってはいるものの、最早そっちがおまけのような扱いに見えてくる。
…そうしてふと、恐る恐るというようにみぞれがそう呟く。
見たところ人はいない——仮にいるなら今頃無遠慮に中に飛び込んだみぞれもんを叱責する声が聞こえてる可能性が非常に高いのだから。
全員もれなく留守というなら、帰りを待つしかないが……ここでのタイムロスは痛い。ここまで来るのにそこまで時間はかからなかったし留守番してる面々に一度このことを言いに帰るのもありだろうか——
直後、入り口のそばにいた3人に影が落ちる。
——黒い外套に身を包んだ、顔も見えないだれかが、気付けばそこに立っていた。












編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。