とある夜、騒がしくて人がたくさんいる街を歩いていた齢16程の少女がいた。少女は西洋で言うシスター、日本で言う女性修道士の様な白いワンピースに十字架の首飾りをかけた、癖一つない白髪、少し白みがかった青目である。その少女は眠と言う。
眠は人混みが得意でない。嗜み、そして暇潰しとして読む本を買いに来ただけなのだが、こんな人混みなら来なければ良かったと後悔しながら足早に本屋へ向かう。
そして向かっている道中、眠とは前から来る、逆方向に進んでいくであろう青年がいた。その青年は西洋発祥のスーツを纏っており、中には白シャツ、赤色のチョッキの様な衣服を着ていて、誰もが二度見をしてしまう様な短く綺麗な赤髪であり吸い寄せられる様な青目である。
眠は初めて見かけた彼に自然に目が行く。街の壁側で立ち止まって目で彼が通り過ぎるのを最後まで見ようと思い、壁側により建物にもたれ掛かり、彼をじっと見詰める。
その時の表情は頬が赤く、彼に盲目になった様である。今で言う一目惚れであろう。その感情は分かったが、叶わないし会う事、そして見る事も今宵が最初で最後だろうと諦めがついていた。
しかし、どうも先程から目線が刺さる。しかも敵意でないのだから人間が変な目で私を見てるのでは無いかと思うが、今はただ彼を見たかったのだ。
呟いてから数秒間彼をじっと見詰めていて気づいた事がある。彼は間違いなく、こちら…眠がいる方向を見詰めている。眠は「私では無いよね…」と思いながらも彼をじっと見詰め続けている。でも彼女は「私だろうが、私で無かろうがこっちを見てくれて嬉しい」と思い頬を赤らめる。
しかし眠は途中で「叶わぬ物に希望を持ったら後に引き摺るだろう」と思い、もたれ掛かっていた建物から離れ、頬を赤らめ足早に本屋へ向かう。その時に彼のすぐ横を通る為頬を赤い事がバレない様に、彼から目を逸らし背を向けて歩く。
すると、後ろからぐいっと手を引かれた。力強さ的に男性であり、振り解くのは眠にとって不可能だと思った。「どうせまた遊女のお誘いか、断ろう」と思いながら、眠は振り返る。
まさかの手を引いた人物は眠が見ていた彼であった。眠は頬が赤い事がバレたくなかったのか若干目を逸らしている。彼は眠をじっと見詰めている。
そして、彼は衝撃の二文を述べた。
眠は彼の方を見ては頬を赤らめて驚く。初対面だし、会話開始5秒で告白してくる人は世界でこの人だけだろう、と心底思った。でも私の中では、そんな問いの答えは既に決まっている。
彼は余程嬉しいのかぎゅっと強く、だがどこか優しく眠を抱き締める。眠は頬を真っ赤にし混乱しながら抱き締められている。そして彼がまた口を開く。
彼はそう述べ、すごく幸せそうな笑顔を浮かべていた。釣られて私も軽く微笑む。彼…堵罵鑼さんと一緒なら大丈夫だと言う固い自信が生まれる。だからだろうか、眠は「今世界で最も幸せな人物は私ではないか」と本気で思った。












編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!