『父上…あなたです。今届きました』
「入りなさい」
厚い扉の前で言うと、扉の飾りの鷹が父の声で喋った。
『失礼します』
部屋のなかは明るく、本が天井まである本棚に整列している。
「ホグワーツ…入学おめでとう。返事は出しておいた」
椅子に座っていた父ー…ウィルヘルムが立ち上がって微笑んだ。
『ありがとうございます。ご期待に添えるよう頑張ります』
あなた少し微笑んで頭を下げる。
「ああ、楽しみにしている。まあ座りなさい」
『失礼します』
ウィルヘルムの向かいに現れた椅子に座り、父の言葉を待つ。
「本当に喜ばしいことだ。私もホグワーツの卒業生だからね」
『はい。…父上は…』
「ん?」
『以前、父上はスリザリン出身だと聞きました。兄上もスリザリンです。僕…私もスリザリンでしょうか?』
ウィルヘルムが笑った。
「さぁ、どうだろうね。組分けはその人の気質やらが関係してくる。お前は…容姿は母親に似ているが、性格は私によく似ている。若い頃の私にそっくりだ」
さっとあなたの頬に赤みが差した。
羞恥でも怒りでもなく、初めて聞くその言葉を嬉しく思ったのだ。
『では…私もスリザリンに入れますね』
「そうだな、スリザリンに入りたいのならきっと入れるさ」
ふふ、と笑った父にあなたも頷く。
「さて、入学にあたって買い物に行かなければならないな。早速、と言いたいところだが…すまないが数日は仕事が立て込んでいてね」
『あ……父上、大丈夫です、ダイアゴン横丁なら一人でも…』
「何を言うんだいこの子は。クローディスの時にも私が連れて行ったんだ。楽しみにしていたんだ、良いだろう?」
『…で、では…お願いします…』
少し申し訳なさそうに、でも左腕を触るあなたにウィルヘルムは満足そうに頷いた。
父は知っていた。
この息子は嬉しいときに左腕を擦る癖があるのだ。











編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。