ある村では闇の子と光の子がいた
闇と光、それぞれの能力を持った双子
その村の一族では双子が産まれれば必ず闇の能力と光の能力を持つことが決まっていた
闇の子は夜を、光の子は昼を守護していた
それが仕来りであり、決まり事となっていた
そして、それを支えるのが母親の勤めとなっていた
外部との関係は遮断され、攻撃となる魔法も使うことが禁じられ、日常で使うような氷、水、火魔法などを使うことも必要最低限とされた
双子は出会うことを禁じられていた
それは何故かはわからない
だが、それを不思議だとは誰も思わなかった
本人達も、何故とは考えなかった
それよりも、自分の片割れと会いたいという気持ちのほうが強かった
二人が出会うことができるのは年に二度
月食と日食の日
その日が二人にとってとても楽しい日だった
月食の日はアールが、日食の日はキールが主役
月食の日は夜の21時に祭事を行う
アールを着飾り、祭事用の着物を着て、舞を踊る
空に一番近い、山の頂上で1時間ほど
キールと一緒に踊る
日食の日は12時に祭事を行う
キールを着飾り、祭事用の着物を着て、舞を踊る
空に一番近い、山の頂上で1時間ほど
アールと一緒に踊る
その時は二人とも幸せだった
二人で一緒に話せること
一緒に踊れること
一緒にいられること、それだけで二人は嬉しかった
ただ、その時だけ
その時だけが二人の幸せだった
祭事の日は村から出ようとした者、村に入ろうとした者を殺していた
それは父親から命令されたことだった
二人は一度、やりたくないと否定した
だが、その時、父親に殺されかけた
「やめることは許されない」
「これは義務だ」
などと並べられ、逃れることができなかった
ある日の夜、布団の中
ギュッ((手を握る月食と日食の日の朝、起きると必ず自身の片割れはいない
起きると必ず母がいる
双子はいつも努力していた
普段のお務めをし、村の皆との交流を深め、父の機嫌を取る
そして…年に二度、大量の人を殺す
何年もそうしてきた
けれど、もう限界だった
もう、二人の心は擦り切れていた
嘘だ
闇の子も、光の子も、限界だった
毎年やってくる楽しい時間と、残酷な時間
その二つがやってくるたび、二人は苦しかった
大切な自分の片割れと出会うことができる幸せな時間
ただ村に入ろうとしただけ、ただ村から出ようとしただけ、それだけの気持ちを持った者を殺さなければならない時間
その二つを天秤にかけるとするならば
どらちをとるだろうか
何年目かの月食の日の昼間
カリスがキールの頬に触れる
冷たく、けれど温かい気のするその手は、双子にも持ったものだった
最後に見たカリスの…母の笑顔はきっと永遠に忘れないだろう
アールはキールの光の能力を
キールはアールの闇の能力を
半分ずつお互いに借り、そしてそれを掛け合わせる
父も、家も、村も、全部を捨てるために
そして、走った
誰にも追いつかれないように
もう何も、自分達を縛れないように
二人はもう、縛られることもない
誰かから命令されることもない
人を殺すことも……もうない
きっと双子はこれからもずっと一緒にいるだろう
闇の子と光の子
全く違う、正反対の能力なのに
見た目、性格、声、仕草、全てが全くの同じ
これからも二人は一緒にいるだろう
たとえ、何があろうと
たとえ、引き剥がそうとしても
必ず二人でいるだろう
もう何も、失いたくないから
もう何も、誰も、殺したくないから

















編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。