第30話

# デート
1,100
2018/10/08 07:18
ユンギ
ユンギ
明日デートするか


…へ?
ユンギさんが急にそう言い出したのが昨日の夜



それに応えた返事が間抜けすぎて今でも恥ずかしくなるぐらい鮮明に覚えている



ユンギさんとは付き合ってからはいつも家でゆっくりしてたし



私もそれでいい、って思ってた



だからデートに誘われるなんて思ってもなくて



その日の夜は部屋でひとりで頭を抱えていた













そんなこんなでデート当日に

洋服を何度も何度も脱いでは着てを繰り返しては

鏡の中の自分とにらめっこするだけの時間が過ぎる

気づけば待ち合わせ30分前に

流石にまずいと焦った私は候補の中で3番手内には入る服に着替える

半ば投げやりになりながら着替えを済ませ

あとはユンギさんから貰ったネックレスを身につける

“ よし大丈夫 ”

もう1度鏡の前で確認してから私は家から出た


















ユンギさん…!


下に行くともうすでにユンギさんが待っていて


私は小走りで向かう







待ちました?
ユンギ
ユンギ
ん、大丈夫


スマホに向けていた視線を上にあげてそう応えてくれる



そんなユンギさんを私はまじまじと見つめる



なぜなら彼が私服だから



いや、いつも私服なのだけれど今日は外に出歩くからかいつもとは違う雰囲気が出ていて



そんな彼が新鮮で私はユンギさんの体の隅々まで目を走らせていたんだろう



ユンギ
ユンギ
なに、変?


その言葉にはっとして慌てて視線をユンギさんの顔に向ける



さすがに見すぎた 変な子だと思われた



そんな思いもユンギさんの表情を見てどこかに消えていった



だってあまり感情を表に出さないその顔は心配そうに眉を下げていたから



だから気付いたら私は咄嗟に口を開いていたんだ




そんな、むしろかっこいいです!!

自分でも驚くほど大きい声が出ていた


ユンギさんも驚いたのかその瞬間にまん丸くなっていくその瞳















でも次に口の端がにっとあがった


その顔に変わったことで自分が放った言葉の恥ずかしさに思い知る


なにか言おうと頭を働かせたのも束の間


ユンギ
ユンギ
ふーん、かっこいんだ


と意地悪そうな顔で言われてしまいついに私の顔は下へと下がる



ああ、最悪だ



自分の後先考えずにする行動を後悔するのは何度目だろう



1人でまた頭を抱えているとユンギさんに手を繋がれ驚いて顔が上がる



ユンギ
ユンギ
んじゃあ行くぞ


その言葉と同時に歩き始めるユンギさんに私も慌てて足を動かせる



でも恥ずかしくてユンギさんの顔はまだ見れない



こんな状態で大丈夫なのかと心配になっていると



“ なあ、 ”



とユンギさんに声を掛けられる


ユンギ
ユンギ
あー…なんだ、


口篭るユンギさんが不思議で顔を上げるとガシガシと耳の裏を掻く姿が目に入る


ユンギ
ユンギ
その…かわいい、


ボソ、と呟くように放たれたその言葉



頭が働かなくて



“ え… ”



なんて声が漏れる



もしかして今日の服装褒めてくれた…?



開いた口が塞がらなくて唖然としているとこっちを見たユンギさんに “ アホ面 ” って笑われる
笑われるけどさっきの恥ずかしいって気持ちなんかどこかに飛んでいって



嬉しくて繋いだ手の指を絡める



単純なのかもしれないけどユンギさんだから



そんな事を考えながら2人で駅に向かった











プリ小説オーディオドラマ