…二度目の裁判が終わった翌日。
わたしたちは無言でご飯を食べた後、まだ食堂で座ったまま誰も話さずにいた。
…そりゃそうだ。脱出だって、昨日のことがあったからできないし…。かといってこのままじゃみんなバラバラになっちゃう。わたしは…どうしたらいいんだろう…
「ううぅ…気まずいですわ!!!」
「そりゃそうだろ…これからどうしたらいいんだよぉ…」
「ほら、このままじゃ暗いままですわ!なにかしないと!脱出とか、」
「…昨日のこともあるし…脱出は無理かな…あはは…」
「ぐぬぬ…じゃあなにをしろっていうんですのー!」
「あの…」
「ん?」
「ストレスがたまって魔導師化が進まなければ殺人事件も起きませんよね?…なら、ストレスを感じないように過ごしたらいいのでは…」
「!!リデル天才!でも、ストレスを感じないようにって難しいなぁ…」
「気分転換すればいいのか」
「そうゆうことです」
「気分転換か…言われても思い付かないな」
「娯楽室で遊ぶとか?」
「あとは外に出るとか…あ、ピクニックとかできそうですわ」
「あ、いいねピクニック!」
「僕もやりたい」
「僕も賛成だよ、おもしろそうだしね」
「クルークは?」
「まぁ、いいんじゃないかい?外なら気分も晴れるだろうし」
「じゃあ決まり!いつする?」
「なら今日は準備にあてて、明日にしましょうか」
「いいね、そうしよう」
「じゃあ私はハーブティーとなにか食べるものを用意します!」
「僕はレジャーシートの代わりを探そうかな」
「わたくしは…場所決めをしてきますわ!クルーク、どうせなにもすることないんだから、手伝いなさいな」
「僕が!?嫌だね、君なんかとやりたくないよ」
「言ったわね!?」
「ちょっとちょっと、喧嘩はよくないよ!」
静止した所で、ふたりはお互いそっぽを向いた。
「わたしたちはどうしようか、シグ」
「遊ぶものとか、探す?」
「いーね!そうしよう」
「あの…それで…その…
定期的にこうゆうのをやったら…ストレスも軽減できるんじゃないでしょうか?」
「確かに…!ナイスアイデアだよ!」
「よし、やると決まったらやることをやっていこう」
「だね!」
さて、なにか遊べるものを探そう。
どこを調べようかな…
ー図書館ー
まずわたしたちは図書館に来ていた。とはいえ、図書館だから特になにもないだろうけど…案の定、特になにもないようだった。
「ねぇシグ、ここにはなにもないみたいだし、次行こうか?」
「うん」
みると、シグの手にはベルトのような、バックの長い持ち手?みたいなものを持っていた。
「あれ、それって…?」
「なんかあった」
「そうなんだ…ベルトかな?」
「わかんないけど使い道はきっとある」
「そうだね!たとえば…そうだなぁ…なにかをそれで縛ってバックみたいにするとか、あとは…」
「それだ」
「へ」
「これ、メガネにあげる」
「メガネ…ってクルークのこと?」
「うん、いつも本持ってるから」
「なるほど、いいね!じゃあ見つけたらあげてもいいかも」
「うん、そうする」
シグとそんな会話を交わし、わたしたちは図書館をあとにした。
ー娯楽室ー
次に一番遊ぶものがそろってるであろう娯楽室へと来た。さすが、タロットカードが持ち出されていただけあってカードゲームなどのアナログゲームがたくさんあった。トランプやリバーシ、チェス。なにを持っていくか迷うなぁ。字は読めないけど、すごろく?もあった。読めないなら、つくってもいいかも。時間ならまだあるし。
わくわくしながら探索し、やりたい遊びをしぼって、トランプとリバーシを持っていくことにした。
「シグはなにかやりたいの見つけた?」
「特にない」
「そ、そっか…」
「ムシのほうがいい」
「あ、そっか、じゃあ明日ムシ捕まえる道具とかいる?」
「ほしい」
「じゃあ次はムシを捕まえる道具探しだーっ!えいえいおー!」
「おー」
ー玄関前ー
次に玄関前に来た。古びており、静かなのでどこか不気味だ。長居はしたくないなぁ。玄関前のロッカーを開けてみると、きれいなほうきやちりとり、木の棒や虫取り網があった。虫取り網を手に取り、ぶん、と一振りしてみる。見た目では脆そうだったけど、以外と頑丈そうだ。綺麗にして使えば問題ないだろう。ほこりをちょっとはらって、すぐにロッカーを閉じようとした、けど。わたしはいいことを思い付き、ロッカーをまた開けてほうきを取り出した。
それなりに収穫があったし、これで十分だろう。満足しながら、夕食時間までの牢屋の中にいる時間、シグと明日についての話を膨らませるのだった。
「牢屋に戻ってない!?!?」
夕食時間。わたしはびっくりして声をあらげた。実はさっきの牢屋の中にいる時間、ラフィーナは牢屋の中にいなかったというのだ。なのに懲罰房に入れてられてない。
「えぇ、監視も緩いものですわね!」
「まさかあんなものでカモフラージュできるとはね」
「カモフラージュって?」
「…僕はラフィーナと同室でね。メッセージアプリで『牢屋に戻れなかったので布団を丸めるなりしてカモフラージュしてちょうだい』…って言ってきたんだよ。すぐバレるとは思ったんだが…やってみたら本当に大丈夫だったとは」
「監視は以外と緩いのでしょうか…」
「じゃあこれからは時間に捕らわれず行動できるかもしれないのか。」
そう。つまりは布団をまるませてカモフラージュしたらそれだけで牢屋にいないとはバレずにすむのだ。以外と監視の目は緩いのかもしれない。
そのあとの自由時間は娯楽室でシグと過ごした。
_朝。
目覚ましが鳴って、ぼんやりした意識の中目を覚ます。目を開けるとともに、今日の予定を思いだした。そうだ、今日はピクニックだ。そう思うと心が弾んだ。気分も明るくなり、身支度もいつもよりはやく終わらせた。シグを起こしてご飯を食べ、準備ができたら外へ集まることになった。
昨日見つけたものをふたりで持ってわくわくしながら外へ向かった。
外はいつも通り快晴だった。雲ひとつない青空に虹がかかっている。遠くにはすでにみんなピクニックをする場所へ来ていた。わたしたちもそこへかけつけ、レジャーシートへ腰を下ろした。
「よくレジャーシート見つけれたね」
「ちょっと倉庫みたいなのを見つけてね。そこにあったんだ」
レムレスは少し得意げに言った。
リデルがティーポットでカップにハーブティーを入れ、切り分けられたリンゴが入った容器を出す。すごいな、こんなに用意できたんだ。ついでに、どこからか持ち出してきたレムレスのクッキー。おいしそう。…ちなみにこの際、どこから持ち出したのかは、置いておこう。久しぶりにお菓子食べるなぁ。
みんながカップを持った所で、わたしが口を開いた。
「…みんな、今日は楽しもう!かんぱーい!」
みんなも続けるようにかんぱーい、と言ってからハーブティーを飲んだ。そのあと、クッキーやリンゴを食べておいしいねと言いあった。実際、クッキーもリンゴもすごくおいしくてハーブティーとの相性もよかった。クルークの本にいるあやと呼ばれる赤い魂?さんもリンゴやクッキーを食べながらわたしたちの会話を聞いてくつろいでいた。
その、あやはぽつりとひとりごとを言った。
「…クルーク、よかったな」
「?よかったって?」
「いや、なにせクルークはここに来る前は基本ひとりで友達もほとんどいなかったからな。…ラフィーナはその少ない友達のひとりなんだ。だから…友達ができてよかったって」
「…そっか」
…わたしもそういえば中学生のころはほぼ友達いなかったっけ。…本当だよ。こんな形だけど、みんなに会えてよかった。
「あの…その、それでアミティさん…」
「うん?」
「遊べるものを探すって言ってましたよね?なにかありましたか?」
「あったよー!じゃーん!トランプとリバーシ!」
「あと虫取り網ー」
「シグさんらしいですね」
「じゃあそれで遊ぼうか!」
「負けたら罰ゲームとかどうだい?」
「あらおもしろそうじゃない、やりましょ!」
こうして最下位の人が罰ゲームをすることになり、トランプとリバーシをはじめた。トランプはババ抜きとかをして、リバーシはトーナメント式でやった。
しばらくやって満喫してから、
「んじゃ、最下位のラフィーナは罰ゲームだね」
「うぅ、こんなの嘘よぉ…」
「肝心の罰ゲームの内容はどうする?」
「あ、それならいい考えがあるよ!」
と言ってわたしは玄関前で見つけたほうきをかかげた。
「ラフィーナの魔法って、浮遊だったよね?」
「ま、まさか」
「そう、魔法使いみたいにこれにまたがって飛んでみてほしいんだ!」
「うぅん…まぁ…それなら?」
「あとあと、わたしをできたら後ろに乗せてほしいなぁ…」
「は、はぁぁ!?無理ですわよ!浮くだけで体力もってかれるのに!」
「ふぅ~ん?できないのかい?さっきできるって言ったくせに?ま、君は所詮その程度だったってわけだね」
ニヤニヤ笑いながらバカにするクルークに対し、ラフィーナはカチンときたような、鈍感なわたしでもわかる明らかな殺意を感じた。
「それぐらいできますわよぉ?貴方の変身魔法は私より使い道がないのによくそんな口たたけますわねぇ?貴方が後ろに乗りなさい!証明してやりますわ!」
「ぼ、僕が!?」
「あらビビってるんですの?」
「そんなわけないだろう!乗ればいいんだろ乗れば!」
ほうきを受け取ったラフィーナはそれにまたがって、クルークがその後ろに乗った。
ふぅ、とひとつ息を吐いてから_
クルークを乗せたほうきは宙に浮かんでいた。
「っほ、ほらできたでしょう!?」
「…中々やるじゃないか」
ふわふわと浮きながら進むのを見て、
「す、すごいすごいすごーい!本物の魔法使いみたい!」
「すごいねぇ。あとで僕も乗せてもらおうかな。」
「結構進むのはやい」
「ですね…さすがです…!」
四人で感心していると、少ししてから力つきたのだろう、ふたりはどしゃりと下へ落下してしまっていた。
かけよると、ラフィーナはぜぇぜぇと息をきらしていた。
「次僕も乗せてよ~」
「これ以上は…む、無理ですわぁ~…!」
こうしてその日のピクニックは終了して、みんなで屋敷に戻った。夜には、次はなにをしたいかとかを話した。ずいぶん久しぶりに清々しい気分になれた感じがした。
楽しかったなぁ…一回目の事件の前日も…こんな気分だったっけ。ふっと自然に笑みがもれた。就寝時間にもうすぐなるので目覚ましをかけて、はやめに布団にもぐった。するとずいぶん疲れていたのか、体も温かくて、気づけば深い眠りについていた。そのときには気づかなかった。自分が無理して動いてることに…。
………、
うーん…朝か…
目覚まし音が聞こえて少し目が覚め、目覚ましを止めて体を起こす。疲れてるのだろう、いつもより体がだるい。
支度をしてからシグを起こす。
「シグー朝だよー」
「眠いー」
「はやく起きないと先ご飯行っちゃうよ?」
「…わかった…」
シグが渋々ベッドから下りてきて、こっちを見るなり、ずかずかこっちに迫ってくる。
「へ、なに?」
おでこに手を当てられて、
「アミティ…熱い…。熱あるんじゃない?」
「…へ?」
…たしかに体はだるいしちょっとくらくらするとは思ってるけど…
「…無理してたでしょ」
「え、いや、そんなことはないけど_」
_嘘だ。4人もいなくなって普通でいられるわけない。正直、知らないうちに無理はしてた、と思う、けど…なんでこんな急に熱なんて、
「嘘だ、…医務室行こう」
「う、うん」
わたしはこうして言われるがまま医務室へ連れていかれた。
医務室で熱を測ったら、結構な高熱だった。シグには感謝しかない。日頃からのストレスからきた熱らしい。昨日のピクニックで力が抜けたとかかな。
医務室で寝転んでしばらく大人しくしていることになった。天井をぼーっと見ていると意識はだんだんと遠のいて、そのまま寝てしまった。
目を覚ましたころにはすでにその日の夜。
夜にみんなが入れ替わりとでもいわんばかりにお見舞いに来てくれた。レムレスがりんごを切って持ってきてくれたり、リデルが以前使っていた薬を処方してくれたり。
今日の夜は医務室で過ごすことになった。付き添いもひとりまでならOKだったのでシグがいてくれることになった。シグがどうしてもわたしの所にいたいと言ったためらしい。シグはずっと眠れるまで傍で手を繋いでいてくれた。それにわたしは安心して、深い、深い眠りについた。
__、あ…
わたし…どれぐらい寝てたんだろう。外はまだ明るく、相変わらずの快晴だった。朝、かな。
目の前を見ると、みんながわたしをのぞき込むようにして見ていた。
「!アミティ…目が覚めたんだね」
シグにぎゅっと抱きしめられ、混乱する。
「へ、」
「アミティ、あれから丸一日目を覚まさなかったんだよ」
「っそ、そうなの!?」
「本当だよ…心配したんだから」
レムレスも続けて言う。
次にリデルが、
「幸い熱は下がってるみたいですが…あんまり無理しないでくださいね」
「そうそう。また熱出されても困るしさ」
クルークが言う。
…………あ、れ…?
いない…
あの子は?
ピコン、と通知が来た。
『ゲストハウスで火事が発生しました。現在消火活動をしてますので、皆さんは近づかないでくださいね。』
「_っ!」
わたしは反射的にかけだしていた。
だって、足りなかった。
わたしの考えすぎだよね?わたしの思い込みだよね?勘違いだよね…?
必死の思いでゲストハウスにたどりつくと、ゲストハウスのうちのひとつが燃えていた。
ドアノブに手を伸ばす。でも…
「っ…!」
ドアノブは熱くなってて、とても触れたものじゃなかった。
「アミティ、どいて」
みんなも追いかけてきてたのだろう。みんなもかけつけて、シグがドアを破壊してくれた。
慌てて中へ足を踏み入れると、目に飛び込んできたのは_
ゲストハウスの中で首吊り状態にされた、ラフィーナだった。
「あ"ぁぁぁぁぁぁあぁあぁぁぁ!!!!!!!」
なんで?なんでなんでなんでなんでなんで?どうして彼女が殺されなきゃダメだったの?
わたしはただ叫んだ。自分の意思とは関係なく声が出てきていた。
「あぁぁぁ、あぁぁあぁ、いや、なんで、なんで!!」
宙吊りになっているので、彼女の生命活動が終わっていることはわかってしまった。
叫びがようやく収まって、無意識に思ったことが口に出た。
「おろして、あげなきゃ…」
もっと中へ入ろうとするわたしをレムレスが静止する。
「ダメだ!危険すぎる!!」
「っやだ!やだよ!わたしはラフィーナのそばにいたいの!」
「火が出ているんだ!下手したら君まで危険が及ぶ!」
「やだ、やだぁ!!レムレスやめて!!いやだぁぁぁぁぁぁ!!!」
必死に抗ったけどかなわなくて、外へ出された。
通知がきて、ラウンジにて裁判が19時から始まることが告げられる。あぁ、お兄さんもこんな気持ちだったのか。自分の服をきゅっと握りしめながら思う。そうだ、犯人がいるんだ…。ラフィーナの鬱憤を晴らすためにも、絶対見つけなきゃ。
『それができるといいですね。』
…また、幻聴………
…捜査をはじめよう












編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!