違和感に気づいたのは、いつからだっただろう。
最初は、小さなことだった。
モモさんは笑って言った。
責める声じゃなかった。
いつも通りの、柔らかい声。
でも、
目が笑っていなかった。
嘘じゃない。
でも、本当でもない。
━━━━━━━━━━少し、怖くなった。
モモさんの視線は、前よりも重くなっていた。
モモさんはそれ以上、何も言わなかった。
それが逆に、怖かった。
怒ってほしかった。
責めてほしかった。
その方が、まだ分かりやすい。
でもモモさんは、怒らなかった。
ただ、
私を見る時間が、長くなった。
店に行かない日が増えた。
スマホを見る回数が増えた。
通知は来ない。
来ないのに。
見てしまう。
ある夜の帰り道。
残業で遅くなり体もクタクタで。
早く帰らなくちゃと思ったその時。
背後から声がした。
心臓が止まった。
振り向く。
モモさんがいた。
嘘だと分かった。
偶然じゃない。
視線が、私を捕まえてくる。
一歩、近づく。
逃げなかった。
逃げられなかった。
沈黙。
夜の音だけがある。
即答できなかった。
嫌いじゃない。
違う。
ただ、
━━━━━━━━━━━━━怖い。
その沈黙が、答えになってしまった。
モモさんの表情が、消えた。
笑顔が、消えた。
無表情。
小さな声。
その声は。
今まで聞いたどの声よりも、冷たかった。
手首を掴まれた。
強くない。
でも、逃げられない。
初めて聞く声だった。
感情が剥き出しの声。
肯定も否定もできなかった。
指が、少しだけ強くなる。
息が乱れる。
重い、
重すぎる。
でも。
嫌じゃなかった。
それが一番、怖かった。
顔が近付く。
逃げ場はない。
その目は壊れかけていた。
声が震える。
沈黙。
空気が重い。
初めて、否定した。
モモさんの目が止まった。
言葉が詰まる。
逃げたいのに。
完全には逃げたくない。
…矛盾。
次の話に続きます!












編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。