世界が沈黙した。
その静けさの中で、ルナだけが立っていた。
彼女の身体は光と闇の境界にあり、
そのどちらにも属せないまま、
ただ黒い月の下に立ち尽くしていた。
「……わたしが……光になるんだよね?」
ルナの声は震えていた。
だが、その手のひらに宿る力は、
かつての神にも等しいほどの輝きを放つ。
ひかりのストーンの欠片が、
彼女の胸の奥でゆっくりと溶けていく。
「神の少女の力……これが……」
ノクティスが、崩れゆく世界の中から姿を現す。
その瞳は黒曜石のように冷たく、
しかし、どこか慈悲を含んでいた。
「光は人を導く。だが、同時に焼き尽くす。
月よ――おまえはその残骸を照らす者だ。」
ルナは静かに頷いた。
月光が彼女を包み、
その髪が白く、瞳が銀に染まっていく。
だが、その光の下――
大地の影がざわめいた。
祈りを失った世界は、
新しい“神”を拒絶するように、
影を生み出し続けていた。
「これが……人の絶望……?」
影の中から、かつての魔法少女たちが姿を現す。
彼女たちは、祈りの残滓を抱いたまま、
ゆっくりと黒い形に歪んでいく。
「ルナさま……どうか……わたしたちを……」
その声に、ルナは息を呑む。
ノクティスが囁いた。
「見ろ、彼女たちはまだ祈っている。
だがそれは、救いを求める祈りではない。
“神を縋(すが)り殺す”祈りだ。」
ルナの胸が痛んだ。
祈りを受けるたびに、
彼女の体に黒い線が走る。
それはまるで呪いのように、月の光を蝕んでいった。
「やめて……そんなの、わたし、望んでない……!」
彼女は叫ぶが、世界は応えない。
祈りを集めれば集めるほど、
彼女の中で“神”が“影”へと変わっていく。
やがて、ルナの背に六枚の黒い翼が生える。
その姿は、美しくも恐ろしい。
ノクティスが低く笑う。
「神は、祈りによって生まれ、祈りによって堕ちる。
おまえはその証明だ、ルナ。」
彼女はもう、否定できなかった。
涙を流しながら、
世界を照らす光を放つ。
だがその光は――黒かった。
黒い月が完全に満ちる。
そして、次の夜、
ルナは「月の代行者」ではなく、
「闇の主」として覚醒する。












編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。