少し目線をあげ声がしたほうを見ると、さっきの店員さんが柔らかく、少し呆れたような笑顔でこっちを見つめていた
おそらく、『きょも』というのは大我さんのことなのだろう。ということは、この人がこの店のオーナーなのか
大我「ちょっと邪魔しないでよー」
店員「俺らとしてもあなたみたいなのに客とられたら困んの。前のとこでも何人も来なくなった子いるじゃん」
大我「それは向こうがっ」
店員「はいはい」
大我「...」
さっきまでクールだった大我さんは店員さんの前ではまるで小さい子みたいになって、最後は口を尖らせて拗ねてしまった
私がどうしたらいいかわからずわたわたしていると、店員さんが新しいカクテルを置いてくれた
店員「それサービスにしとく。うちのが迷惑かけたし」
大我「迷惑じゃないよね!?」
「あ、はい、!私は全然!」
店員「いいのいいの。受け取って?」
なんだろう、この人の声。気だるそうだけど重い甘さがあって、今にも飲み込まれてしまいそうな癖になる声...
店員「おれ樹。覚えてね」
「...ぁ、はい、」
大我「はぁーあ。どっちが手出してんだかー」
樹「ほぼ俺の店みたいなもんだしいいの」
大我「うっわ!それ髙地に言うからね」
樹「まってそれはやばいわ」
彼らの会話を聞く限り、その"髙地"って人がオーナーなんだろうか。いつか会えたら、この素敵な店を作ってくれたお礼を伝えたい
樹「あなたちゃんだっけ?なんでこの店に来たの?」
「最初は街を歩いてたらすごい派手なネオンライトが目に入って...」
大我「やっぱあれいいよね!?」
「あっ、いやまぁ、すごい異質、というか、」
私が率直な感想を言うと、隣でわかりやすく大我さんが肩を落とした
なにか言っちゃまずいことを言ってしまったのだろうか
樹「きょも言われてんじゃん笑」
大我「いいと思ったんだけどなぁ」
「あれ大我さんが考えたんですか?」
大我「そ!やっぱ目立ってなんぼでしょ!」
樹「隠れ家BARなのに目立ってどうすんだって言ったんだけど、こいつがなかなか折れなくてさ」
樹さんが呆れた顔で大我さんを見るとそれに対抗するように大我さんはむっとして樹さんを睨み返す
少し悪い雰囲気が流れそうだったので、慌ててフォローを入れた
「でも、そのおかげで私がこの店を見つけられたので、感謝してます」
そう言うと大我さんの顔がパァっと明るくなり、「うんうん」と自慢げに頷いた
大我「あやべ、俺そろそろ帰んねーと」
「あ、私もだ」
樹「えーあなたちゃんもう帰っちゃうの?」
「えっと...」
大我「じゅーりぃー??」
樹「はいはい、わかったよ。とりあえず連絡先だけ教えてよ」
「はい、!」
そうして私は樹さんと交換した流れでなぜか大我さんとも交換して、この日は家に帰った












編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!