大好きだった彼氏にフラれて、傷心のまま街を彷徨う
そんなときにふと目に入ったのは、店の雰囲気にはそぐわないネオンライトが付けられた看板。BAR ーSIXーだった
「すみません、1人なんですけど空いてますか?」
店員「はい。こちらへどうぞ」
「北斗」と書かれた名札をつけた店員さんに案内され、カウンターの席に座る。店内はあの派手な看板からは想像できないほど落ち着いていて、時間も相まってか客は私1人だけだった
北斗「こちら、オリジナルカクテルです」
「え、まだ注文してないですよ、?」
北斗「ここにメニューはなく、その人に合わせたオリジナルカクテルを御提供させていただく店になっております」
「あ、そうなんですね」
店員さんにじっと見つめられ、差し出されたカクテルを口に運ぶ。すると、甘いのに苦い不思議な味わいが口の中に広がった
北斗「果物特有の甘みがありながらも後味は苦味が少し残る、まるで恋みたいでしょ?」
こんなキザなセリフも、店の雰囲気と店員さんの綺麗な顔で、傷ついた心にすっと入ってくる
それと同時に何か変なスイッチが入ってしまったのか、私は誰も聞いていないのに最近あった出来事を勝手に店員に話し始めた
話しながらもどんどんと酒を飲む手は進み、酔いが回る
「〜でぇ、彼氏にフラれたんです!おまえみたいなめんどくさい女とはやっていけねぇよぉってぇ!!」
北斗「それは大変ですね」
話を聞きながらも、手をずっと動かしている店員さんに、なんだか寂しくなってしまった私は、思わずだる絡みをしてしまった
「店員さんはいないんですかぁ?」
北斗「いませんね」
「えーうそ!モテそうなのに!」
北斗「いくらたくさんの女性に好かれても、本当に好いてほしい人は、こっちを向いてすらくれないものです」
「それは、悲しいですね...」
切なそうに俯いていた私に、店員さんがにこっと笑って私のグラスを持つ手に手を重ねる
北斗「ほらお客さん、もうそろそろお家帰らないと遅くなっちゃいますよ」
「あ、たしかに、!ありがとうございました!また来ます!!」
北斗「お待ちしております」
急いでバッグを持って店を出ると、手に名前と連絡先が書かれた付箋が貼られているのに気がついた
そこには綺麗な文字で「振り向かせるための努力も、楽しかったりするんですよ」と書かれている
顔が熱いのは、少しカクテルを飲みすぎたからかもしれない。












編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。