「ただいまー」
朝ウォーキングから帰ると
いつものように、なこちゃんが
少しくずれてしまった目玉焼きを全員分焼いてくれている。
朝の香りがした。
「まだ二人とも寝ているんだね」
「うん!くじら子ちゃん、起こしに行こうか!」
「おうけい!」
この会話は毎朝のこと。
色違いだがおそろいのかいじゅうさんスリッパを履き
二人は階段を上っていく。
一番奥の部屋の前に行くと同じく色違いの
かいじゅうさんスリッパが置かれていた。
私はコンコンとドアをたたいた。
ほとんどの場合、返ってくることはないが
ノックはするようにしていた。
「入りますよ~!!」と、
なこちゃんは大きな声で部屋の主へ呼びかける。
部屋に入ると、カーテンを閉じた真っ暗い空間のなかで
パソコンだけが明かりを灯していた。
やはりかぜぱなママはパソコンの前で顔を突っ伏して眠っていた。
私はなこちゃんと顔を見合わせ
「また朝まで頑張っていたみたいだね。」とつぶやく。
なこちゃんはこくりとうなずき、
フライパンとフライ返しを持った腕をすっと下す。
私はベッドの上に脱ぎ捨てられたカーディガンを
そっとかぜぱなママの肩にかけなこちゃんを追って部屋を後にした。












編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。