ももside
あたしが手を振ると、買ったばかりの花を持った男の子は
にっこり笑って手を振り返してくれた。
たったった、と男の子がドアをくぐって
右の方へ元気よく走っていくのを見送り、
あたしはふふふっ、と笑った。
さっきの男の子、お母さんの誕生日が今日だから、
サプライズで花をプレゼントしたくて1人で来たんだって!
肝心のどのお花を買うか悩んでそうだから
あたしが代わりに選ばせてもらったんだけど…
喜んでくれて本当によかった〜。
ちなみにあたしが選んだのは赤いカーネーション。
赤いカーネーションの花言葉は「母への愛」
お母さんに渡すのにぴったりでしょ?
壁に掛けられた時計を見ると、お母さんの言う通り、
もうお昼ご飯を食べる時間…12時になっていた。
腹が減っては戦は出来ぬとよく言うし、
流石に休憩しますか。
店番したい店番したいと叫ぶあたしの心を
そう考えることで静めて、エプロンを脱ぐ。
それをカウンターに置こうとして、あたしは気付いた。
カウンターの上に、見慣れないポーチが置いている。
某ネズミの男の子のキャラクターが描かれた、
手のひらくらいの大きさの赤いポーチ。
赤いポーチなんてあたしは持っていない。
誰のだろう…と首をかしげたが、持ち主はすぐに分かった。
さっき赤いカーネーションを買ってくれた男の子だ。
多分お財布代わりに持ってたんじゃないかな…
…って、のんきに使い道を思い出してる場合じゃない!
せっかくちゃんとお花が買えたのに、お財布を
失くしちゃうなんて…きっとあの子、悲しんじゃう!
確かあの子は…右に曲がっていったよね?
そして出ていってから時間はまだそこまで経ってない。
ということは、まだ追いつける!
あたしはそう叫ぶなりドアをくぐって、走り出す。
驚いているお母さんの声がどんどん小さくなっていく。
お母さんには後で謝らなきゃだけど…それよりも。
あの男の子に、悲しんでほしくない。
手を振り返してくれた時のあの笑顔を、
曇らせてほしくない。
あの子の、笑顔が見たいから!
あたしはお店への道を歩きながら、安堵の息をつく。
近所の顔見知りの人達に
男の子がどこに行ったか聞きながら走って走って…
角を3つ曲がったくらいで、ようやく男の子に追いつけた。
運動神経には自信があったし、
割とすぐに見つけられた方だと思う。
でもお母さん絶対怒ってるだろうなぁ…
とりあえず早く帰ろう。
そう決めて走り出そうとした時だった。
いきなり、あたしの周りだけ、太陽の光が遮られた。
雲でも出てきたのかなと思って上を見上げると…
謎の生き物が二匹(?)、降ってきていた。

















編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。