どのメンバーからも 「 顔色悪すぎ 」
「 ちゃんと休んでね 」って言われる 。
俺はどんだけ酷い顔をしてるんだろう
メンバーが作業部屋から出たあと
カトクに着信があった
これだけで嬉しいと思うようになったのが
悲しくて , でも会いたくて「 わかった 」
とだけ返して 作業を進めた
振り入れも終わった昼過ぎ ,
雑談していたメンバーを横目に
早々と会社を出た
病院の廊下は相変わらず白くて
消毒液の匂いが強い
点滴台を押しながら歩く彼女の背中は
前よりも小さく見えた 。
そう言って振り返ったあなたの下の名前は
いつも通り笑ってる 。
軽すぎるくらいの笑顔 ,
それが余計に胸の奥をざらつかせた
屋上に続く扉を開けた瞬間 風が吹く
この前染めた髪が日に当たってきらきらしてる
あなたの下の名前が目を細めてゆっくり息を吸う
その仕草だけでここに連れてきてよかったのか
分からなくなってしまった
平気
その言葉を俺はもう信じきれなくなってる
触れないように慎重に
それだけのことなのに心臓がうるさい
夕方の空は
オレンジと青の境目みたいな色をしていた
高校の屋上で見た空と多分そんなに
変わらないはずなのに今は全然違って見える
あまりにも普通で一見どうでもいいような約束
だからこそ 俺は喉が詰まった
本当は守れるか分からない
でもそれを口にするのは怖かった
冗談みたいに聞いたつもりだった
あなたの下の名前は一瞬だけ黙ってから静かに笑う
胸の奥がぎゅっと縮む
何も言えなくなってただ隣に立つ
風がまた吹いて彼女の髪が少し揺れた 。
金髪のインナーが夕焼けに透ける
その「 もうちょっと 」が
どれくらいなのか分からない
それでも俺は時計を見なかった 。
並んで何も話さずに空を見る ,
ただそれだけの時間がやけに愛おしかった
この日を俺はたぶん一生忘れない
後から何度も思い出して
胸を締めつける日が来ることを
この時点でもう分かっていた




















編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。