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2018/08/27

第14話

三章-3
柏木篤臣
柏木篤臣
…………!
シン、とその場を覆った一瞬の静寂の後、「ギャーーーー」と相原の絶叫が響き、ギャラリーもどよめきだす。
相原ゆず
相原ゆず
かかか柏木君、ごめんごめん、本当にごめんなさい、大丈夫? 救急車!?
一ノ瀬慧
一ノ瀬慧
大丈夫か、柏木!?
青くなって謝り倒す相原とともに、その場にうずくまる柏木の傍へと駆けつけたところ。
柏木篤臣
柏木篤臣
……いい……
柏木から、吐息交じりの呟きが聞こえ、「え、なに?」と相原が耳を寄せる。刹那。
柏木篤臣
柏木篤臣
いいよ! やっぱり君は僕が求めていたご主人様だ!!
頰を真っ赤に染めた柏木がガバッと顔を起こし、相原の両肩をつかんで興奮したように叫んだ。

………………は? なに? 『ご主人様』?
柏木篤臣
柏木篤臣
曲がり角で膝蹴りされた時から密かに気になっていて、笑顔で殺人弁当を持ってこられた時もやばかった……あんな形でいたぶられるなんて思ってもみなかったからね。ファンのことで叱られた時はすごくゾクゾクしたよ! 女の子にあんな風にビシッと怒られたことは初めてだったから──
ポカーンとする俺たちの前で、陶酔したようにうっとりした瞳で、自分の体を両腕で抱きしめながらぶるぶるっと身を震わせる柏木。
柏木篤臣
柏木篤臣
あれ以降、君の姿を見るだけで興奮しすぎちゃうから、あえて距離を置いてたんだ。僕の本性がバレるといけないと思って……でも、もう我慢できない。体面なんてどうでもいいよ!
相原ゆず
相原ゆず
ほ、本性……?
呆然と聞き返した相原に、柏木は無邪気な笑みを浮かべて、宣言した。
柏木篤臣
柏木篤臣
うん。実は僕、ドMなんだ
「「「「────どええええええええええ!?」」」」

 とんでもないカミングアウトに、ギャラリー含めその場にいた全員が絶叫した。
一ノ瀬慧
一ノ瀬慧
……つまり、これまで相原がやってきた迷惑行為も叱責も、全部おまえにとっては……
柏木篤臣
柏木篤臣
ご褒美です☆
実にいい笑顔で断言する柏木。
ラケットを捨てる前にコンテナをガンガン蹴りつけてたのも、むしゃくしゃしてたんじゃなく、父親に捨てろと言われて苦しみつつも悦びを抑えきれず昂っていた、とかか!?
柏木篤臣
柏木篤臣
さあ、ご主人様……いや、女王様。僕は貴女の下僕だ! この薄汚い豚野郎を好きに扱って! ズタボロにして!
四つん這いになり、期待に満ちたキラキラした眼差しで相原を仰ぐ変態王子。
相原ゆず
相原ゆず
ちょ、ちょっと待って、落ち着いて……っ慧君、助けてー!
一ノ瀬慧
一ノ瀬慧
俺を巻き込むな! イケメンをここまで骨抜きにしたんだ、ヒロインになれてよかったじゃないか
相原ゆず
相原ゆず
なんか違ーう!
柏木篤臣
柏木篤臣
あ、僕、一ノ瀬君のSっぽい感じもかなりツボで、密かにずっと足蹴にしてほしいって思ってたんだ。良かったら踏んで! 地面にめり込むくらい踏みにじって!
一ノ瀬慧
一ノ瀬慧
~~断る! 寄るな変態!
柏木篤臣
柏木篤臣
あっイイよ、その汚物を見るような眼差し、辛辣な物言い……もっと、もっと僕を罵って……ハアハア
ちなみに、この一幕をもって『はちみつレモン王子親衛隊』は速やかに解散し、相原が嫌がらせを受ける心配はなくなった。
しかしこれ以降、俺と相原は、王子と思いきや実は下僕だったドMに付きまとわれるようになったのだから、結果としてはプラマイゼロどころの話ではないのだった……。